お母様がお姉様を超える勢いでなんかオカシイ
一介の平民に過ぎなかった僕が父、前国王アーロン・ヴィ・セルアナート王の遺言を元に玉座に就く事が決まってから数日。
修道院で育ち多少の読み書き程度しか出来ない僕は勉学に追われる日々を送っていた。
「ルーク〜?まだお勉強かしら?もう良いじゃない。難しい事はお姉ちゃんがどうにかしてあげるから、私と遊びましょう?」
金に輝く美しい髪を揺らしながら僕を撫で回す姉、アメリア・ヴィ・セルアナートは幼げに言葉を漏らす。
「ダメですよ、母様に叱られますから…」
「良いじゃない、ちょっとくらい」
そんなやり取りを何度も繰り返しつつ数時間の座学を終えた時、侍女がやってきた。
「お取り込み中失礼します。ルルセラ様がルーク様をお呼びです。至急執務室にと。」
「分かりました。すぐに行きます」
僕の返事を聞いた侍女は一礼して去っていく。
「態度が軽いわね」
少しばかりの憤りを顕にしつつアメリア姉様はそう呟く。
「仕方ないですよ。ぽっと出の僕がこうして居られるだけでも感謝すべきです。」
宥めるように言葉を放ち執務室へと向かう準備をする。
「ダメよ、あなたは王になるのだから。」
「それも、前国王様の遺言ですけど、実際どうなるかはわかりませんよ。ルルセラ様の所に行ってきますね」
部屋を出ようとすると再び姉様に捕まる。
「私も行くわ。」
この前のエリザベート姫の件があってから姉様は付きっきりで離れようとしない。
「姉様も政務がありますよね、大丈夫なんですか?」
僕の一言に姉様は愛らしく頬を膨らませる。
しかして一国の姫君であるのだから政務を蔑ろには出来ずいじけながらも僕の部屋を後にした。
さて、僕もルルセラ様の執務室に向かうとしよう。
前国王の妃にして現国王代理である彼女を待たせるのはあまり宜しくない。
僕の部屋からしばらく執務室へと歩く、未だ城での生活は慣れない。
皆一応は礼を尽くしてくれているがやはり何処か疎外感を感じる、騎士や侍女、文官の皆は貴族出身であったりそれなりに家柄の良い人ばかりなのだから修道院育ちの僕が次期国王として城に済むのが疎ましいのは当然だと思う。
居心地の悪さを感じつつも歩を進め執務室の前に辿り着く。
「ルークです。ただいま参りました」
「入りなさい」
厳かで品のある女性の声が扉越しに返ってきたのを聞き扉を開ける。
「遅くなりすいません」
扉を閉めしっかりと閉めてから執務机へと進みある程度の場所で止まる。
「良いわ。アメリアに捕まっていたのでしょう?」
ルルセラ様は目を通していた書類を机に置き立ち上がると僕の元へと歩いてくる。
「あの子の気持ちもわかるわ。こんなに可愛い子構わない訳にはいかないもの」
僕はルルセラ様に抱き寄せられ頭を撫でくりまわされる。
「る、ルルセラ様?!」
驚き逃げようとするが逃げれない、力強い。
「本当は最初からこうしたかったのだけれど2人きりになれる機会がなかったから」
「しばらく抵抗せず大人しくしてなさい」
頬ずりされたり撫でられたりをしながらしばらくルルセラ様のおもちゃにされた。
30分ほど好き放題された後解放された僕はなにがなんだか分からなかった。
「私もね、アメリアと同じよ。あなたが大切で可愛くて仕方無いの。」
ルルセラ様とは何回かお会いして冷たいイメージがあったけれどまさかお姉様と同じだったとは…
というかなぜルルセラ様も姉様も僕を可愛がってくれるのだろうか……
「今までは人前だったから厳しくしてしまったけれど許してちょうだい。それと私の事はママと呼びなさい。私とアメリアがあなたを愛してる理由はそのうち話すわ」
僕の心が読めるよかのようにルルセラ様は言葉を発した。
え、ママ?
「ほら、ママって呼んでご覧なさい」
「え、いや……」
ルルセラ様の息遣いが荒くなってて怖いです。
「ママよ、ママ。」
「ま、マ…やっぱり無理です恥ずかしです母様で許してください!」
恥ずかしさに顔を背けながらせめて母様呼びで許してもらおうと提案してみるが返事がない。
ルルセラ様の方を見やると1人悶えていた。
「あはん。良いわ。ぎこちないママ呼びも聞けたし母様呼びも可愛いから良いわ」
また息遣いが荒くなってる、やばいかもしれない。
姉様以上になにかの危険を感じる。
「今日は私と一緒に寝るわよ!親子なんですもの何もおかしくないわ!さぁ!今から私の寝所に!」
「ま、まだ勉強があるのでごめんなさい!!」
急いで執務室を後にする。
危なかった、危うく何かを失う所だった。
7年振りに書いてみました。
最近でも見てくださる方がいらっしゃるようでびっくりしました。
なるべく続けていくので応援よろしくお願いします。