恐怖のドライブ
冬馬君の秋と冬
『恐怖のドライブ』
ブゥ〜ンッ
車は多網家を出発した。
さっそく多網が「父ちゃんこれ」怖いCDをサーに手渡す。
内心うわぁー聴きたくないよこんなの。かなり、いやスーパー躊躇するサー。
だが、怖いなどと言って自身の自画像をにごす訳にはいかぬ。
何故なら、自分は勇気あるカッコイイ父 サーなのだから。
「良いよ、全然怖くないからさ」
冬馬君と大喜は思った。あっ、サー怖いんだなと。
時刻は19時30をまわった頃。
CDは流れ、子供達は夜のドライブとこのシチュエーションにワクワク、ウキウキ。
「やっぱり、外で聴くと余計怖いね、掛け布団が欲しい」と大喜。
「しかも夜だし、景色も変わる」きみ子も怖がりながらもニンマリ。
このドライブと怖い話を聴く状況を楽しんでいる。
こーゆう時、両端に座っていると、ちょっと恐い。
真ん中は両隣に人がいるから、ぬくもりあふれ少し安心なのだ。
が、助手席に誰も座っていないサーは運転中にも関わらず、いまや目をつむって布団をかぶり、耳栓をしたかった。
「その時、隣の部屋から不気味な声が」
恐怖CDはそんなサーにはおかまいなしに語り続ける。
「ねぇ、カーナビって本当に便利だよね」突如話しを変えるサー
「今 良いとこ 静かに」見事に三言でその場を静圧した多網。
サーは思った。こんなの聴いて運転中に幽霊見ちゃったらどうするの、大変だよ へんたい、あっ大変だよ。既にテンパっていた。
CDは語り続ける
「その声はまるで、怨霊の様な」
ヒョエーッ 今、夜だよ これから山道走るんだよ、へんたい あっ 大変だよ。
心の内叫びまくっているへんたいなサー。あったいへんなサー。
ブゥーンッ
車は夜道を走っているが、今は大きな道路を走っているので、車も人も沢山の店もありサーは安心していた。
あー、夜がこんなに明るいのは本当に素晴らしい。
日本最高〜〜24時間オープン店愛してるぅー 心の中一人テンションを上げている。
夜賑わってるって良いなぁ〜。
あっまだ、あんな子供も老人も外歩いてる。
どんどん安心するサーであったが「ここで右折です」突然のカーナビの声に失禁しかけてしまう。
幽霊かと思った。
だとすると、ずいぶん親切な幽霊である。
道は少し裏通りに入り、人通りが減ってきた。
サーは思う。うわぁやばいな、これまさかだんだん山道になるんじゃ?
すると後ろから「道が暗くなって来たね、この状況にこーゆう雰囲気あがるぅ」と冬馬君
子供達は今や大興奮である。
夜のドライブに怖い話、更には今日皆で多網家に泊まる最高ご機嫌プランであった。
ブゥーンッ
車は住宅街を抜け、どんどん山道に入り始めた。
今やサーは、うっすらとだけ目を開きながら運転している。無論 幽霊が視界に入ったら大変だからだ。
メチャクチャである。
CDは語る
「幽霊の出る山道があるのです。それがこの話」
「うわぁーこのタイミングで山道の話。こりゃ怖い」と大喜
子供達は来ていた上着を脱ぎ、布団がわりに自分にかけている。
「こんな時、運転する側じゃなくて良かった」きみ子が言う。
「本当こんなの聴きながら運転は恐いよ」と返事をする冬馬君と大喜
歯をくいしばるのはサーであった。
ぐぎぎぎぎっ。
今や、家はポツリとあるくらい。
辺りは真っ暗になってきていた。
サーは心の中、愚痴っている。
なんで、会社の人はこんな山の中住んでるんだよ、しかもなんで書類を取りに行かなきゃいけないんだ。
怖いCDが流れてるのは確かに嫌だけど、もし子供達が一緒についてこないで、こんな山道を一人で来てたと考えるとゾッとしたサー。
怖いCDかけなきゃいけなくなったのでイーブンと言うところか、いや それでも一人で来るよりましだった。
しかし、真っ暗な山道だなぁ。
子供達も、ワクワクしながらちょっと怖がっている
「うわぁーあの木の奥の方とか怖くて見れない」と冬馬君。
大喜が「確かに、人とか見えちゃったら怖いよ」
そんな会話にますますゾッとするサー
多網は、とれそうでとれない鼻くそを引っ掻きまわしていた。 うぬぬーっ。
キョロッ きみ子は山道を見ては目をふせる。
「今ここ歩くことになったら怖すぎるね」
「確かに」一同納得である。
その時、ナビが「ここを左です」
突然のその音にサーの男根からチッチが3滴吹き出す。
ドビュッシー
あわわわわ、危なかった。
子供達の前でズボンをビショビショにするわけだけにはいかない。
ブゥ〜ンッ 車は走る。
そこから15分くらい走っただろうか、あかりが出て来て住宅街に。
ホッと胸をなでおろすサー。
あーっ灯って最高。人間って最高ーッ 歓喜の雄叫びを心の中あげる。
するとナビが「目的地に着きました」
「あっ、ここみたいだ」サーが目の前の家を覗き見る。
ああ、あの人こんな場所から仕事場まで通っているんだな。偉いなぁ、勇気あるなぁ 感心するサー。
「ちょっと、みんな車で待っててね。ちょっと行ってくる、お化けが出るといけないから鍵閉めとくんだよ
」何とも凄い理由な心配である。
ガチャ すぐさま鍵を閉める多網
みんなは、まだ流れているCDを聴いている。
「ひゃあーなんだか大人が誰も居なくなったら怖くなったね」と大喜
皆は身体を寄せ合わせる。それでもCDをとめない彼らは好き者だ。
「その時、白い着物を着た女が」
「ひゃあー」ビビるきみちゃん。
「この話なかなか怖かった、やるのう」額から汗を流す。
5分たたない内にサーが戻ってくる。
ガチャ「開けて」
すると多網が「お化けが化けた父ちゃんかも知れない本物の証拠は?」
「なに言ってんのはやく開けてよ」外に一人居るのが怖くてたまらないサー。
すると冬馬君が「サーの後ろに人が」
「ぐぎゃあああああああああああああ」腰を抜かすサー。
後ろに立つのは仕事場の人だった。
「あっ、すいません見送りに」
この光景を見て、冬馬君と大喜はすぐに思った。ああ本物だと。
ガチャ ようやく車は出発する「さあ、はやく帰ろう」家のリビングが恋しくてたまらない。あの明かりの下、はやく見慣れたあの部屋でくつろぎたい。
ブゥゥ〜ンッ
車の外、見回す景色は暗い山の中。
テンパるサー、何故かナビの設定方法を忘れてしまった。「ピッ ピッ あれっおかしい」
この時、きみ子が「おじちゃん、お化け出ると機械が故障する時があるって」
「うへっ?」あまりの恐怖にサーの返事がおかしくなる。ピッ ピッ「えっ、やっぱりおかしいよ」
子供達も「まさか、幽霊だよ、えっ、やばい」
実はテンパるサーが全然違うボタンを押していたのだが。サーは思う、怒ったのかもしれない、幽霊様(何故か様がつく)が怒ったんだ。
「とにかく、ここから一刻も早く出よう」
「何だか怖くなってきたね」サーの慌てぶりに冬馬君達も怖くなる。既にCDはサーによってとめられていた。 速いっ!!
「サー、でも道覚えてるの?」と冬馬君
サーは全く覚えていなかった。
だが、「大丈夫、大体覚えてる」
「良かったあ」ホッと胸をなでおろす子供達。
ブゥゥ〜〜ンッ 車は走る、全く逆の道をどんどん山奥へ。
「しかし、この辺り本当に真っ暗だね」大喜が言う
サーは祈っていた。視界に幽霊様が入らないようにと。
その時だった「あっ」多網が突然叫ぶ
「はひゅっ」心臓が止まりかけるサー
「どうしたの?」きみ子が多網の様子を見て驚く。何故なら多網が山奥の方を指差し震えていたからだ。
「今誰か居た」
「えーっ」驚き足にかぶせていた自分の上着を肩からかける冬馬君と大喜、きみ子。
「見間違いじゃないの?」きみ子が言う。
だが、多網の驚き方は尋常ではなかった。
サーはハンドルを手放し、両耳を塞ごうとしたが事故るのでやめた。(当たり前だろがーっ)
きっと幽霊が近くに居るんだ。サーは必死に運転している。はやくあの見慣れた人が沢山いる街に戻り安心したい。
ブゥゥ〜〜ンッ 車は進む さらなる山奥へ
「しかし、本当にお化けだったのかなぁ」不思議がる冬馬君
実は違った。お化けだと思った正体はすぐ近くに住む
お爺さん武蔵さんだったのだ。
こんな夜に何故こんな山道に一人?彼は家族から喫煙を嫌がられていた、だから近くのこの山に吸いに来るのだ。
「何だか、はやくコンビニとか見たいね」大喜がかぶっている上着から顔を覗かす。
「うん。あたし今、山の方とかあんまり見たくないもん」きみ子が言う。
真っ暗 森の中
ぬおおおおおっ 必死に運転するサー 男根から噴水が発射されなきゃ良いが。
「でも、何だかおかしくない?結構走ってるのに全然街に着かないよ、さっきこんな走ったっけ?」と冬馬君
えっ、慌てる一同。
サーはこの時しかと気づいた。自分が道を全く分かってなかったことに。あまりのパニックにそんなことすら分からなくなっていたのだ。
そしてサーはこう思う、またこの距離戻るのかあああああああああああっ と。
そして、ついにサーは見てしまった。
「うがががあっ」サーの異様な叫び声に子供達も驚く
「どうしたのサー?」
サーは車を路肩に停め、言った。
「見たった、お化け」
「もう、運転しない方が良いよ、僕たち狙われてるかも」サーが言う。
この場所に他の大人が居なかったのは子供達にとっては不運だったやも知れない。
車は山道で停車。
一体どうなるのか?
冬馬君達最大のピンチ。
冷静な読者の皆さんはお気づきだろう。
そう、はたから見たらピンチでも何でもない。
幽霊も出てきていないのに勝手に狙われてると信じこんだサーが怖がって、もう運転出来ないと山道に車を停車してるだけのシチュエーションである事を。
じゃあ こんなところで 次回に続く。