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冬馬君の秋と冬  作者: だかずお
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行けっ スーよ



冬馬君の秋と冬



『行けっ スーよ』



スーの鼓動は高鳴り、今にも顔は、照れのあまり噴火しそうだった。そう一目惚れである。


うそっ、どうしよう僕恋に落ちちゃった。

スーは目をパチクリさせてしもうたそうな。


「初めまして、私 小夜(さよ)と申します」


とけたみ ことスーは緊張している

「あっ、あっあっ、あのわたくし スー あっじゃなかった、とけたみ と申します」


その緊張した様子に、とけたみの母、父はすぐに気付く、あっ息子が惚れたなと。


そのスーの様子に実の両親だけではなく、冬馬君達すら気付いた。

あっ、スーが惚れたと。

分かりやすい男スー。


「まあ、席に着きましょう」相手の両親の言葉に一同席に着く。


冬馬君達も知らない人のふりをしてすぐさま隣の話が聞こえる席につく。

「よしっ、ここならスー達の会話がちゃんと聞けてアドバイスができる」小声でサーが冬馬君達に言った。


多網ときみ子がさっそく聞き耳をたてている。


隣では、女方の家族よりスー達のほうが何処と無く緊張しているように見えた。


緊張の中会話がいよいよスタートする。


「とけたみさんは、どんな奥様が欲しいんですかウホッ?」相手の母(五里羅)さんが言ふ。


なんぢゃ?ウホッって。まだゴリラになりきってるのか?


とけたみは素直に小夜さんみたいな人と言おうとしたが、さすがにいきなりはまずいかな?と、変な人に見られるんではないかと心配になりやめる。

「あっ、えっと、あのぅ えーっと」


そのテンパる様子に背後から多網のアドバイス

「あなた、みたいな人」


それを聞きすかさず「あなたみたいな人」とけたみが言った。言ってもーた。


これには、とけたみ両親もゾッとしたそうな。

しかし、五里羅は違った。

「あはは、素直でええね」好印象である。

小夜さんはと言うと照れていた。


すかさず、とけたみが「じゃあ小夜さんは?」


「えーっと、そうですね。頼りがいがある人」


この言葉に本人ならぬ、両親は諦めかける。


が、父は諦めなかった。

「親の私がいいますが、息子は頼りがいのある人間だと思います」


ぬおっ なんと無謀な嘘を


この心の叫びは、スーの母


ジロリ 五里羅さんがスーを見つめる。

「私こう見えても人を見る目くらいはありますからね、だいたい一目見て喋れば性格くらいは分かりますよ」


ジロリジロリ


「分かったわ、この人の性格」


「昔ヤンキーで、手につけられないくらいの悪ガキだったけど、意外に周りから頼りにされていた男よ」


隣の席の冬馬君達は皆ずっこけた。

うわぁー五里羅さん全く人を見る目ない、でも、まぁなんだか、助かったような。


すると料理が運ばれてくる


その時であった。

店員の人が水をこぼしてしまい、小夜さんに少しかかる「すっ、すいませんでした」


「あっ、全然大丈夫ですよ」とニッコリ


その反応に、こういう優しそうな女性ならスーは幸せになるなぁと思った冬馬君。頑張ってスー!!


こぼれた水をどうして良いのかテンパるスー、あまりのテンパりぐあいにストローで水を吸おうとしたほどだ。


アホウか。


それを見ていた、きみ子がナイスフォローでおしぼりをヒョイと投げる 良いぞ きみ子 秘技キミポイやぁー

。(以前パーキングエリアで起こったあの事件を思い出す「冬馬君の冬休み」より)


大喜は横を見て突然吹いてしまう。

何故ならきみ子が投げた、おしぼりが五里羅さんの頭の上に見事に着地していたからだ。とうっ(おしぼりのシャウト)


ブハッ


ギロリきみ子を睨みつける、五里羅。


すかさず、まずいと思ったのかサーが立ち上がり、「すみません、私の娘は昔からおしぼりを投げる癖がありまして」と機転にも何にもならない機転をきかした。


ありがとう我が友サーよ、スーが心の中叫ぶ。


緊張の見合いは続く。


小夜の父が「あのう、とけたみさんの夢は何ですか?


ビクッ 突然の質問にテンパるスー。


「あっ、えっと その」

頭に浮かんだ夢それは、ボーリングでサーをコテンパンにして、サーに敬われることだった。

さすがにこれは言えん、困った。

スーの返事はない。


すると、多網が今度は機転を利かす。隣に聞こえる様に「誰よりも立派な屁をこいて」すぐさま、大喜ときみ子に止められる。


そんな、返事のできないスーに小夜の父が「私はね、夢の一つもない男に娘を任せたくはないですね」少し怒り気味だった。


「あっ、えっ」スーは今にも泣きそうになり、落ちこんだ。

これにはスーの両親も何も言えなかった。


スーはこの時思う。

やっぱ僕は何をやってもダメなんだ、このお見合いも、もうどうせダメだ。下を向いてしまう。


この光景に胸が張り裂けそうになる、冬馬君達。

なんとかしなくちゃ。

「よし、こうなったら僕達でなんとかしなくちゃ」と冬馬君達が立ち上がる。


その時だった


ガタッ


「見損なったぞ、我が友スーよ」それはいつの間にやら、ボーリングウェアに身を包み、ボーリングの球を持ったサーの姿。


なんぢゃこいつ!!

ギョッとする小夜ズファミリー(何故にちょっと英語)


「スーよ、落ち込み、すぐ諦める それもまたいい。だが私の知ってるスーはどんな時でも、またすぐに立ち上がる人間だったではないか」


冬馬君達は思う。

しっかし、サーはボーリングの球持つと人格変わるなぁ。まさかこやつの言ってた秘策とはこれか。


「だから、お前はいつまでも私にボーリングが勝てない負け犬なんだ」


プチン


ボーリングが勝てないだと?


ザッ


なんと、突如 スーツを脱ぎ捨てたスー。

下から出てきたのは何と、自身の愛用するボーリングウェア。


なんぢゃーこいつー何故にこんなの着てるんだ?

五里羅は思った。

ハッ、まさかコヤツ スーパーマン?いや、コスチュームが違う、あれはっボーリングマン?

なんでも、ええわ。


「聞き捨てならないねぇ、サーよ私がお前ごときに勝てないだと。俺なら10回やって10回勝てるわぁー」


あんた誰だよ。

冬馬君達が思う。


すると、サーが「ならその気持ちを小夜さんにぶつけて見せろ」


その言葉にハッとするスー


ああ、友よ 俺の為に。

ありがとうサー。

ここまでしてくれて、何も出来なかったら僕はみんなに合わせる顔がない。

ギュッ 拳を握りしめるスー。

振られたっていい、そしたら相手の幸せを願い去ろう。自分の気持ちを勇気出して伝えるんだ。

自分との闘いじゃあー


バッ


スーは覚悟を決めた。


小夜の方を見つめ


一瞬、沈黙が辺りを包む


冬馬君も息を飲んだ


ゴリラ じゃなかった ゴクリ どうなる?(なんぢゃー)


プスッ(多網のすかしっ屁)


突然とけたみが店内に響き渡る大声で叫ぶ


店内の人たちが振り向く


「小夜さん」


小夜がスーをジッと見つめる


皆に緊張が走る


行けっ 友よ!!



ジッ


「さっ、小夜さん」


「ぼっ、ぼくに」


「ストライクを出させて下さい」


はっ?

冬馬君、大喜、きみ子、スーの両親は呆気にとられ、失神しかけたと言われている。


なんぢゃ、それ?


チーン


いやぁな空気が流れていた


名ゼリフだ友よと、サーは泣いていたが。


ダメだこりゃ


冬馬君達があきらめかけた時、奇跡が起こる。


「ボーリングは下手ですがデートなら喜んで」


えーっ、いいんかい。


小夜の父は泣いた「立派で素敵な夢があるじゃないか、ボーリングで友をけちょんけちょんにして勝つと言う」


そんなんで、いーんかい、なんちゅー夢だ。


五里羅も、また泣いていた。

「私の見た通り肝っ玉の座った男や、まさか告白にストライクを使ってくるとはのぅ、斬新や。ストライクじゃなくターキーやったら返事は分からんかったがな」


斬新なんかい、それに そんな違いで返事変わるのかい。


スーは親指を立て、こっちに向かって合図をくれた。


ありがとう みんな


すると、サーはすぐさま恥ずかしくなったのか、正体がバレないようにするためか

「みんな、行こう」と外に向かった。


「そうだね、このまま居たら絶対知り合いだってばれちゃうもんね」ときみ子


多網も頷く。


いやぁ、もう絶対にバレてるだろう


スーの両親が軽く頭を下げてくれていた事に冬馬君は気がついた。


スーは声に出しみんなを呼んでいた、「まっ、待ってよ」


返事したら、バレちゃう 子供達も返事せずにその場を立ち去る。


みんな 本当にありがとう。スーの心の声。


すると小夜さんが「良い友達を持ちましたね」


スーの瞳から一粒の涙


「はいっ」



喜んで、外に出てきた冬馬君達


「良かったね」とみんなで微笑みあった。


隠していたけど、サーの瞳にも涙がたまっていたのを

冬馬君は気がついていた。


「さて、帰ろうか、今日はお礼で美味しい物を食べて帰ろう」


「やったー」


ほんのり暖かい秋の夕暮れ


友のお見合いは上手くいった


まん丸 夕焼けの下 一台の車は嬉しそうに走って行った。





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