その4・リベンジポルノポイント
フランクの屋敷……ザヴィレッジ伯邸は村の北端にある。
俺はそこに向かった。もちろん復讐のためである。
俺はカタナの鞘に荷物をくくりつけて、それを背負った。
まるで飛脚のようなスタイルで、正門に行った。
すると、そこには門番がふたり居た。
「おい、そこの穂村の! フランク様の屋敷になにしに来た?」
「庭の手入れです。新しい庭師です」
「ほう、今日が初めてか。じゃあ入れ」
「ありがとうございます」
俺はぺこりと頭を下げて、門をくぐった。
後ろから門番が陽気に叫んだ。
「お嬢さまが池で遊んでる、ジロジロ視るんじゃないぞ!」
「ガン視した従者がフランク様に目をくりぬかれてる。気をつけろよ!」
「あっ、でもフランク様は留守だ」
「おう、こいつはチャンスだ、しかし命がけだぞお!」
そう言って門番は、ゲラゲラ笑った。
俺は大げさに頭を下げ、にたあっとゲスな笑みを浮かべた。
そして先日通された場所、駐車場そばの建物へと進んだ。――
部屋には誰も居なかった。
俺は麻薬売買の証拠――フランクとゴンブトのつながりを証明するもの――を探した。
しかし、そんなものはどこにもなかった。
まあ当然だと思う。あのフランクがそんなものを残すはずがない。
俺はそんなことを思いながら、机をひっくり返した。
すると、まっ白な羊皮紙の束がこぼれ出た。
机の引き出しが割れ、二重底の下から羊皮紙があらわれたのだ。
「これは?」
俺は首をかしげながら、指から火を出した。
そして特に深い意味も考察も何もなく、ただなんとなく、羊皮紙の表面を熱した。
すると、うっすらと数字が現れた。
麻薬売買の台帳だった。
「あはは、あははははは」
俺は狂ったように笑った。
優越感と全能感がこみ上げてきた。
世の中の者すべてがバカに思えてきた。
俺は恍惚の笑みで、黄金色の酒をつかんだ。
カメラのような魔法装置――被写体を布に精密描写する装置――もカバンに突っ込んだ。
それらを持って屋敷の奥に向かった。
お嬢さまが遊んでいるという池に向かったのである。――
池はすぐに分かった。
というのも、垣根で囲われたその入口に、童女たちがいたからだ。
童女たちは可愛らしく両手を広げて、立ちふさがっていた。
俺はイタズラな笑みで魔法を飛ばした。
そうやって童女たちの下腹部を刺激したのだ。
「ひゃわわ」「ふぁわわ」「みゃわわ」
童女たちは、たちまちモジモジしはじめた。
しばらく両手を広げたままで、その場でくねくねしていたが、やがて覚悟を決めたって感じで、垣根にしゃがみ込んだ。
その場で尿意から開放されようとしたのである。
「こらっ」
俺は姿をあらわした。半笑いで童女たちを叱った。
ちゃんと屋敷でしろと注意した。
すると童女たちは涙目で走り去った。
で。
俺は悠々と垣根の奥に入った。
そこには、やはりフランポワンが居た。
フランポワンは明るい陽差しのもと、ひとり裸で水遊びをしていた。
「ああン、誰やのお!」
フランポワンは、いつも以上に、ふにゃふにゃでぶるんぶるんしていた。
くにゃくにゃして気持ちよさそうな笑みをしていた。
明らかに危険ビヤックをキメていた。
ものすごく幸せそうな笑顔で、こっちを視ていた。
とはいえ、焦点が少しあっていないようだった。
「ちょっとお?」
フランポワンは、ふあふあと漂うようにして向かってきた。
俺は黄金色の酒をひとくちラッパ呑みして、それを見下ろすだけでいた。
やがてフランポワンは池の縁まで来た。
ひざから上が水面から露わになった。
と、そこでようやく俺だと気がついた。
「ああン、テンショっ……旦那クンやないのお?」
そう言ってフランポワンは、池からあがった。
「どうしたンねえ?」
「………………」
「なんやの。ウチ、こんなに寂しくて寂しくてずっとテンっ、旦那クンのこと想ってたンよお? ずっと独りで待ってたンよお? それなのにぃ、冷たいンね?」
「………………」
「ウチ、いつもニコニコしてるけど、ほんとは傷ついてたンよ?」
「はあ」
俺はため息をつくように失笑した。
そして、この女との対話をあきらめた。
この女とは一生理解しあえない――と、俺は確信したのである。
そう。
俺は今。
この、おっぱいだけにボーナスポイントをガン振りした女を。
このセックスのことしか頭にない、セックスをするだけのために生まれてきたような、また、そういった人生を心身ともに強く望んでる、このフランポワンという色白でバカみたいに乳のデカイ、それでいてウエストは細く愛嬌のある美少女を。
俺は理解すること、そして歩み寄ることを。
あきらめたのである。
すると。
なんだか心が軽くなった。怒りと侮蔑でいっぱいだった頭に、ゆとりができた。
彼女に対する態度に余裕ができた。
そして、今まで以上にゲスな復讐手段を次々と思いついた。
次々とゲスなアイデアがわいてきたのである。
「やあ、フランポワン」
俺はゲスな笑みを懸命におさえてこう言った。
「キミに逢いたくて、いきなり来てしまった」
平然とウソをついた。すると、
「ああン」
フランポワンは感激して身悶えた。
そして俺の首に腕をからませ、ぶら下がるようにして俺を引っぱった。
そうやって、おっぱいにうずめようとした。
「ちょっと落ち着こう」
「イヤやわあ」
「ねえ、フランポワン。面白いものがあるんだけれど、キミはこれを知ってるかい?」
「ああン、それはあ」
「映ったものを精密描写する装置だよ。コレの使い方をキミは知っているかい?」
「んふふ、知ってる」
「じゃあ、これで俺たちの写真……じゃなくて絵を残そう」
「絵を残す?」
「俺たちの仲がよいところを記録するんだ。この装置で絵にするんだよ」
「ああン、嬉しい! 面白そうやの! でもテンっ、旦那クン?」
「ん?」
「ウチとそんなことして、ほんとにええンの?」
突然、フランポワンはしおらしいことを言った。
俺は失笑しながらも、彼女をきつく抱いた。
そして頬をくっつけ、ゲス顔でこう言った。
「俺はフランポワンとしたいんだよ」
「テっ、テンショウゥゥんんん」
フランポワンの口から名状しがたい叫びがもれた。
彼女は歓喜にふるえた。凄まじいほどの艶めかしさであった。
それから俺はフランポワンを、いちいち魔法装置で精密描写した。
魔法を飛ばし、まるでカメラのセルフタイマーのようにして次々と撮影した。
黄金色の酒をまわし呑みしながら、いわゆるハメ撮りってヤツをした。
「ああン、テンショウ大好きぃ」
「テンショウさま、テンショウさまあ」
俺は根性の悪い笑みをしただけで、それを無視した。
するとフランポワンは、ひどく怯えてこう言った。
「ねえ、テンショウ様って呼んでもええン?」
「…………」
「テンショウ様って呼んでもいいですか?」
「はあん?」
「ベッドの上だけ、ベッドの上だけでもええンよ、ねえ?」
「いいよ」
「ああン、いっぱい可愛がってえ」
「分かった。じゃあ、俺からもお願い。あのカメラ……じゃなくて魔法装置に向かって、思いっきりの笑顔をしよう。それで中指と人差し指を伸ばしてピースって感じで、ふたりで仲良く撮影しよう」
「こんな感じぃ?」
「そうそう、そんな感じで抱き合って記念撮影しよう」
俺は、キメ顔ダブルピースなフランポワンの肩を抱きよせ、プリクラって感じの写真を撮った。
そして、これらの写真をフランクにプレゼントするのだった。
――・――・――・――・――・――・――
■チートな魔法使いである俺の復讐の記録■
フランポワンが女房のごとく振る舞った。
→ペットにしてやった。というより志願してきた。
フランクにまんまとハメられた。
→愛する娘のハメ撮り写真をプレゼントしてやった。
……しかも麻薬売買の証拠、フランクとゴンブトのつながりを証明するものまで手に入れた。これでゴンブトを釣り上げることができる。まさに、ゲス顔ダブルピースって感じである。
■まだ仕返しをしていない屈辱的な出来事■
アンジェリーチカが妊娠のことを意識しはじめた。
王国に結婚のことで罠をかけられた。あなどられた。
ゴンブトに親を殺され、『キヨマロの七刀のうち二番刀・菊清麿』を奪われた。
パルティアに情けをかけられた。




