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easyaround
包帯の男が持って居たもの、それは銀縁の眼鏡だった。
チェーンを付けたそれを私は視点を変えて振り子のように、弄んで中央玄関から真っ直ぐに歩いて行く。
「残忍な遊びをしているね」
左右から声を掛けられて、私は狼狽する。ページに挟んである手紙を双子に差し出す。
双子の片手には包帯。髪型はツインテール。服装はピエロのような英語の綴りのショッキングカラーのカーディガン。
「…ふむふむ…」
「これは頂けないね」
私はサンゴから頂いた手紙を受け取ると、少しだけ泣いた。
「それでOKですよ」
「通れますよ」
合意の上、エレベーターで上に上がることが出来るようになった。
私は眼鏡をかけると、手紙を破り捨て、思い出とサヨナラをする。『支配するインセント』は金のカバーを外すと、白い表紙の本体の傷を隠して、上の階へ登る事にする。
双子は揃いの靴を三回鳴らし、笑顔で見送る。
「行ってらっしゃーい」
「あなた達もね」
少しだけ眼鏡をかけた目を凝らし、『支配するインセント』の傷を撫でて、
「殺さなくても良い相手に出会えて、良かったわね。サンゴ」