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「あなた、生徒の為では無く、自分の利益の為にその力を使っているでしょう。それって中間管理職のする事よ。超過勤務でお疲れでしょう?」
私はイノセントを取り出すと、その男の組織の証に煙を撒く、男が一瞬たじろく。
「中間試験に受からなかった者が俺に立てつこうなどと100年早いわ」
私は仕方なく「ジュニパー」と唱える。
甘い香りが部屋一杯に広がってゆく。
男は「生徒を増やした俺に弱点は無い」
「さっきの青年はどうしたの…」
「上に居るぞ。なんなら、お前の力で慰めてやれば?」
「そんなことしたら上層部に叱られるでしょう?大切な生徒なのだから」
男は笑い出す。
そして、クリスタルを指ではじき、私の背後の壁に当てた。
私は動じない。
男は「こんなもの何の役に立つものか!?俺の持っている玉の方が力は上だぞ」
そう言うと、その壁に当たったものを取る仕草に入ろうとする。
私は思わず振り向く。
男は右手でそれを拾うふりをすると、私の頭を壁に押さえつける。
「どうした?手も足もでないか?」
「昼食はどんなものを召し上がったのだ?」
「お前の甘い匂いにやられてよく分からないぞ。この能力を解除しろ」
少しだけ目にしみる。
その男のタイガーアイが放つ超音波から逃れる術はただ一つ。
「組織のマークを付けていないわね。あなた実は生徒から信頼されてないでしょう?」
男は怒りだす。
「俺の生徒が俺を信頼していないだと?貴様、まだ食らいたいのか?」
私は内心ニヤリと笑う。
イノセントを用意しておいて本当に良かった。
この男のクリスタルが破裂し始める。
私のジュニパーがクリスタルを破壊し始めたようだ。
上の階の男にもこの音が聴こえるはず、イノセントの能力は相手を撹乱すると同時に、この男のはなつ超音波を無効化にするのだ。
男は思わず目を閉じて、後ずさる。
「あなた、今日の朝ご飯何を食べたか覚えて無いでしょう」
男は「ちくしょう」と呟き、部屋を出て行く。
私は追いかけようとするが、玄関先に飾ってあるサンゴの写真が目に飛び込んでくる。
追いかけるのはよそう。
二階からの声に耳をすます。
あの青年は起きたところだ。
「よくもやってくれたな!!お前、自分のマークを持っていない癖に!!」
「そ、そんな馬鹿な!!」
私の作戦が上手くいったようだ。
もう、アイツは組織から居なくなるだろう。私はサンゴの写真を『支配するイノセント』の横に置くと、ひとりごちる。