ruledead
私は部屋に帰ると、まず一冊の本を手に取り、『支配するイノセント』の項目を引く。
そこには、最強の上司たちの名前が羅列してある。
上から順に目を通す。
ジュニパーの名前は最下位である。
私の名前はふせてある。
まずは、一番上から、落とすとするか…。
思い起こせば二年前、私がまだ組織に入りたて立った頃、何も知らなかった。
私を認めてくれたのはサンゴと呼ばれる。一人の女性だった。
サンゴはこう言った。
「あなた、行き急いで居るわねぇ」私は何も言い返せなかった。
この組に入ってからと云うもの、雑用ばかりやらされて、飽き飽きしてた頃だったから、
「やはり強い子ね」
「……」
サンゴは私に対して、とても公平な立場をとってくれた。
それが私には少々うっと惜しかった。
でも、私の為にこの道具表を手渡してくれた。
今でも大切にとってある。
裏表紙を見ると、組織のマークが傷を付けられ、私を見つめている。
不幸なことがあった時の事は思い出したくはないが、私はその道具表を持って出掛けようとする。
その時、ふいに後ろから気配を感じる。
黒い影が一瞬横切ったかと思うと、あの男が武器を持って苦笑いをしている。
「その本、まだ持っていたのか」
「そうよ。私の大切なサンゴがくれた物だもの」
「サンゴならもう死んでいるだろう?過去に捕らわれすぎじゃねーの?」
この男は実質的には組のリーダーであるが、私にとっては同業者であり、先生でもある。
「先程の青年はどうしたの?タイガー」
「ドラゴン、お前、俺の忠告を無理して、この部屋を借りたな」
「それがどうしたの?上から与えられたモノだから私の自由でしょ」