表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/47

第29話

数日後。


「さて、諸君」


教壇に立った零王はおもむろに口を開き、生徒たちに話しかける。


「なんでしょう先生!」

「そろそろ文化祭らしいんだが…このクラスの出し物はなんだ?」

「執事・メイド喫茶で!」


初耳だっ!と数人の生徒が突っ込むも無視され、零王も悪乗りしたせいでトントン拍子に話しは決まり。


「じゃあ執事・メイド喫茶、頑張るよっ!!」

「イエスマム!」


文化祭委員の号令により。



文化祭準備、始動。


なんとなく準備をこなしつつ奏が、手持無沙汰なのか束になっている書類へ目を通している零へポツリと聞く。


「…執事、ねぇ。ねぇ零。僕がいつも君にやっていることは執事かな?」


唐突な質問の内容に、近くで作業していた生徒たちは耳をそばだてる。


「そうなんじゃない?」


書類から目をあげずに零はそれへ答える。


「どうして疑問形なの」

「僕は君にあまり命令しないからね」

「零は忙しいもんね。っていうかよく考えたら夏休みの後半は零のそばに僕いなかったじゃんか」

「ああ、それもそうだね」

「ということは、だよ。零王…先生は零の執事かな?」


教室の前で椅子に座って本を読んでいる零王を見ながら奏は声を潜める。


「零王は叔父だから当てはまらないんじゃないかな、奏君」

「それもそっか。んー…あ、でも零がいない間、僕月代さんの執事していたよ」

「…君、なにやってるの」


ここでようやく零は書類から顔をあげて、隣で何やら洋服を作っているような奏の方を向いた。


「だって月代さん、面白い人だと思わない?」

「月代と遊んでたの?」

「違うよ零。月代さんで遊んでたんだよ」


零の言葉に奏は訂正を入れる。その内容に零は若干顔をひきつらせた。


「…君、それはどうかと思うけど」

「そうかなぁ?」


これ以上、この話題で会話を続けると月代が可哀そうなんじゃないかと思い立った零は話を逸らす。


「それよりも、それは何を作っているの」

「これはね、零のメイド服だよ。僕が腕によりをかけて作るんだから、ちゃんと着てよ」

「え」


なんで僕がメイド服を着る事になっているの…?と零が戸惑う中、水樹他一部の女子・男子がグッジョブ!と奏へサムズアップしていた。

零にメイド服を着せたかったけれど、自分で言い出す勇気はなかったので泣く泣く執事服でも眼福か…と自分に言い聞かせていた一部の生徒たちは、そんな蛮勇をサラッとやってのけた奏のことを尊敬した。


「忘れたの零?僕のこと殺したこと」


ニッコリと、そして実にサラリと言った奏に、零は気まずそうにうなだれる。


「いや、忘れたわけじゃないけれど…それとこれとは話が別だと思うんだ」

「いいじゃん、れー君!美子、れー君のメイド服見たいなっ!」


2人の会話を聞きつけた美子が、与えられた準備を放り出して割り込んできた。


「もっとヤダっ!す、スバル君だってそう思うでしょ!?」


誰か味方はっ、と零は教室を見て、手ごろな近さにいたスバルを巻き込む。


「なんで俺に振るんだ!?」


われ関せず、を決め込んでいたスバルはギョッとする。


「水樹君に聞いたって肯定しか返ってこないに決まってるじゃないか!」

「それは…ああ、そうだろうな」


奏の手元を見てキラキラと目を輝かせている水樹を見つけたスバルは否定できなかった。


「まぁほら。騒いでないで準備手伝おうよ零」

「君が原因だからね?奏君、君がいけないんだよ?」

「えーそうなの?」

「…だから嫌だったんだよ。でさ、零王」


1人本を読んでいた零王へ零は唐突に話を振る。


「先生」


言い直せ。

本から顔をあげずに言われた言葉に、チッと舌打ちしてから零は言い直す。


「…零王先生、夏休み開けたら一緒にいられないだとか言ってたのはなんだったの」

「あーそれ?なんか、その場のノリがそう言えって。結局、俺はお前が嫌がることをやりたい」


クハハハと楽しそうな笑い声をたてられ、零は地団太を踏む。


「もうヤダ!なんなのコイツら!」


零王は人の悪い笑み浮かべているし、奏君はなんかメイド服楽しそうに作ってるし、水樹君は論外だし、美子とか…。泣いていいのかな、いやむしろ泣きたいな。なんて零の脳内。

零がそろそろ実力行使に映りそうな気配を察した水樹が慌てて宥める。


「お、落ち着け零!」

「うるさいよ水樹君!!僕のどこが落ち着いていないって言うの!?」

「そこがだよ!?」

「うるさいうるさいうるさいうるさい!」


なにか超えてしまったものがあったのか、ギャースカ騒ぎ出した零に零王が静かに言い放つ。


「お前の方がうるさい」

「ワーワー!聞こえないよっ!!聞こえてこないもんねーだ!」


ダダをこねる子供みたいな零に、一同唖然。ただ、零王だけが冷静に説き伏せていく。


「子供かお前は」

「違うしっ」

「じゃあ止めろ。バカみたいだぞ」

「バカじゃ、ないもん」

「知ってる。だから止めろと言っているんだが?」

「…」


プスッとつまらなそうに頬を膨らまして零は黙りこくる。


「すげ…」


俺じゃ無理な芸当だぜ、と水樹は零王を尊敬のまなざしで見る。


「空月、やけどの後はその後どうなんだ」

「今このタイミングで聞くー?ま、いいけど。問題ないよ」


ポリポリと頭をかきながら奏は答えた。


「そうだろうな。さて…ほら、手が止まってるぞ。文化祭は2週間後なんだろう?」

「Yes!」

「じゃあ急げ」


このままだと終わらねぇんじゃないか?と零王は発破をかけた。







さらに数日後。


「今日はそれぞれに試着してもらおうと思ってます!」

「え」


零がサァと顔を青くする。


「れー君、どうかしたの?」

「…た、体調悪いから早退させて」


いただきます、と言い切る前に零王が妙に親切そうな声音で零を手招く。


「おいで、零。俺が治してやろう」

「いい!家に帰って寝る!」

「仮病はいけないなぁ」

「仮病じゃない」


ブンブンと首を横に振って零は主張する。


「零、零。見てみてこのメイド服をっ!冥土に行けそうだと思わない!?」

「思わないよっ」


キラッキラと瞳を輝かせた奏が、手に完成したメイド服を持って零に詰め寄っていく。


「…た、助けて」


困った零は、いつものメンツにたすけを求める。


「無理だ」

「れー君似合うから大丈夫!」

「大丈夫、零かわいいよ」


3種3通りのサムズアップで返され、零は嘆く。


「っ役に立たなかった!!」

「観念してメイド服着ようねー零」

「嫌だよ」


奏は往生際の悪い零を捕まえてどこかへ引きずって行った。


「…ご愁傷様」


南無南無とスバルが手を合わせて零が引きずられていった方に合掌した。


「アッハハハハ。零も諦めりゃいいのにな」

「零王せんせーはれー君で遊びすぎだと思うんだ。教育者としてそれはどうかなぁ」

「んー?ま、いいじゃんか」

「よくないと思うけど」

「らじょー君、らじょー君。時には諦めってのも必要なんだぜ」


つっこんだ水樹の肩へそっと手を置いて、零王は憐みの視線を向ける。


「いきなりなんだよ、意味わかんねぇよ!?」

「この間やった小テスト、赤点だったから」


追試、な。覚悟しとけよ、と零王はニヤリと笑う。


「そん、な…」


ガクシと水樹は膝をついた。



廊下から零の騒がしい声が聞こえてくる。


「ちょ、ちょっと冗談じゃないよ!奏君、放せってば!!やめ、本当にやめよう!ね?ほら、奏君!!」

「えー。超かわいいから気にしなくていいよ」

「僕は男だよ!?かわいさを求めてどうするつもり!」

「えー」


喧騒と、ズリズリとおそらく零を引きずっているのだろう音も聞こえてくる。


「っ、かわいいですって!?」

「超…かわいい…」

「ワクワク」

「キタコレ」


なんて教室内が一気に騒がしくなる。


「奏君、やめよう。ねぇ本当にやめよう。全然楽しくないよ?ねぇ、聞いてますか?」

「えー聞こえないなー。大丈夫、すっごい可愛いから」


若干泣いているような零の声が聞こえてきて、さらに教室は騒がしくなる。


「月野さん、泣いてる…?」

「やばい、これは零×奏フラグがっ」

「下剋上かしら」


ぶっふぉとか鼻血が噴き出る音を最初に、なんだかヤバそうな会話へ発展していってしまう。


「…やばい、何がヤバいって教室にあふれる腐臭がヤバい」


どこか身の危険を感じた水樹が一人震える。




ガラリと教室後ろのドアが思い切り強く開かれた。


「ほぉら!やっほー皆の空月ですよー!!いやははははは」


笑いながら奏が参上する。片手に半泣き状態の零の手首を握りしめ。


「本当に、勘弁してください…。どうして僕が…」


うううと小さくしゃくりあげる零は、レースがフリッフリのメイド服をきている。いや、着させられたが正しいか。

そんな零の姿に水樹は思わず立ち上がって凝視する。


「えっ、れ、れれ零!どんなマジック使ったんだ!?なんで髪長くなってんの!?え?」


何よりも、腰辺りまで垂れる黒髪に水樹の視線は釘づけに。


「僕の能力の一部でーす」


ブイと嬉しそうに奏はピースサインを見せる。


「よくやった!!」

「勇者だ、君は勇者だよ!」


クラスから湧き上がる惜しみのない称賛に少しだけ奏は照れたように笑う。


「そうー?ね、零王先生、どうよ。今回の勝負は僕の勝ちじゃない?」

「は、ぁ?誰が認めるかバァカ。でも、ちょっと待てよ。嗜虐心がむらむらと…」

「しなくていいよ零王のバカァ!」


丈の短いスカートを下に引っ張るように握りしめて零は叫ぶ。依然としてドアの前からは動かない。


「『おかえりなさいませご主人様』とかい」

「言わねぇよバカ!!バカじゃないの!?バカでしょ、バカなんだよね!?」


ポンと手を打って言った零王の言葉を最後まで言わせずにさえぎって零は叫ぶ。それはもう、思い切り。


「む、なんだ。名案だと思ったんだが…」


つかつかと零は零王のもとへ歩みを進める。


「あんたにとってだけだろ!?それもう僕のこといじめたいだけだよね!?ほんとのとこどうなのそれは!」

「いや、興味半分嗜虐半分」

「もうヤダ最低このバカ教師!!」


近くにあった出席簿で零王の頭を殴ろうとするが防がれ。逆に手首を捕まれて抱き寄せられた。キャーと悲鳴が上がる。


「放せー!!男にこんなことして何が楽しいんだ!!」

「嫌がるから楽しいんじゃねぇ?」

「最悪だっ!!」



とまぁこんな感じで文化祭の準備は進んでいく。


どうでしょう、文化祭です。

確か・・・こんな内容なのを予定していたと。プロットなくしたのか辛い。


感想、待ってます。誤字脱字の報告も、お願いします。多分、言われないと気づけないので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ