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第20話

今回は量が少ないです。

それから3日過ぎ、8月18日。

零の怪我も不思議な緑色の軟膏のおかげで完治した。元からそこまでひどい傷があったわけでもないのだが。

この日、零は書斎の窓際を陣取って本を読んでいた。読み終わった本を寄せて、机の上に積み重なる本の山に手を伸ばした零に部屋の入り口から声がかかった。


「零!!」


興味深そうに本の表紙を眺めていた零は、顔をあげてドアの方を見て水樹の姿をとらえる。


「やぁ水樹君。どうかしたの?」

「暇だったから、遊びに行かないか誘いに来たんだ!」


話が長引くだろうと察した零は、本を山の上に戻すと、水樹を手招く。水樹はトコトコと零のもとによると、勝手に近くの椅子を引いてそこに腰掛けた。


「遊びってどこに?」

「海とか、プールとか…後はそうだな。遊園地とかか?」

「水樹君は本当に泳ぐのが好きなんだね。ところで宿題は終わっているの?」

「グッ」


零に真顔で切り返された水樹は言葉に詰まった。


「僕はもう終わっているから手伝ってあげてもいいんだけど…」

「おお!マジか!」


パァと顔を輝かせた水樹に零は思う所があったのか、言葉を付け足す。


「でも、条件を付けようか。じゃないと水樹君自分でやらないでしょ」

「うっ。で、その条件は」

「そうだね…うん。水樹君の宿題はどれくらい残っているの?」

「えっと、だな。数学のドリルが半分、英語が全部、家庭科の料理を作る奴に作文、あとは…そう!能力関係のが全部、だな!」


キラッと真っ白な歯をきらめかせて水樹は清々しいくらいに言い切った。

内容が内容なら好青年に見えなくもないのに…思いっきし残念な内容過ぎて。残念な子にしか見えない水樹の現状。


「言ってることが残念だ…。ま、まぁいいや。じゃあ5日あれば終わるね?」

「えっ」

「えっ?」


水樹は、零が見繕った宿題の終了時間に驚く。零は、水樹が驚いたことに驚く。

もしかしたら遊びに行くのに意見が合わないんじゃないか、と水樹はちょっとだけ心配になる。

何故、驚いているんだろう?と零は心底不思議そうに首をかしげて水樹の方を見た。


「で、それがなんだっていうんだよ?」


零の視線に落ち着かない気持ちになった水樹は、話題を元に戻した。

それはね、と焦らすように零は間をとってから水樹に条件を提示する。


「8月25日までに、僕に楽しいと思わせてみて」

「零が楽しめるように遊べばいいってこと?」

「そうだよ、水樹君。水樹君にしては察しがいいね」

「お前、俺のことあんまバカにすんなよ」

「今日は、18日だから…ああ、ちょうどいいじゃない。後1週間だよ」


ポンと手を打って零はイイ笑顔を浮かべる。


「っていうかさ、実力テストの勉強とか…」


もう少し期限を早めてほしいなぁなんて水樹は抵抗するが一蹴されてしまう。


「何言ってるの、水樹君。実力テストは実力を図るためにあるんだよ?勉強なんかしてどうするの」

「…そうだな」


なんか違う気がしなくもないのだが、生憎と水樹の頭脳では零に対する反論が浮かばないのだった。

うまく丸め込まれた水樹は、よしっと頬を軽くたたいて気合を入れる。

遊ぼうぜ!と零を誘いに来たのだが、そこに落ち着くまでに結構な大回りをした気がしなくもない。というか、話が一回それてから本筋に気付かない間に戻るというすご技?


「ちょろいもんだよ。…全く、皆が皆水樹君みたいに騙されやすい人ならやり易いのに」

「なんか言ったか?」


小さく呟かれた言葉は水樹には届かなかった。届かないように言ったのだから当たり前なのだが。


「ううん、何も。それで…明日はどうするの」


首を横に振って否定すると、零は話題をすり替える。


「んー?零って水着持ってるか?洋服とか、買いに行ってみる?」

「水樹君と?」


困ったように零は水樹を見る。


「そう俺と。っていうか他に誰がいるんだよ!」

「零王とか」

「俺と!俺と俺と!!」


零王なんかと2人きりにさせねぇ!と水樹は零にすがる。


「…そんなに自己主張しなくても」

「じゃ、そういうことだから!明日の10時に来るからな?」

「わかったよ」


零は水樹の確認に頷いた。満足そうにニッと笑うと水樹は部屋をでていく。

というわけだから。零と水樹の夏休み遊ぼうぜ一週間!(命名、水樹)が始動した。


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