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第19話

場所移動することの零王の屋敷。

ポカンとしたまま部屋のど真ん中に突っ立っていた邪魔な水樹の首根っこをつまんで、零王は外にポイする。


「零姫、服を脱げ」

「え?」


何言ってるんだろうこの人という零の視線を無視して、零王は彼女の服を脱がしにかかるのだった。

ドッタンバッタンと暴れまわる音がドア越しに響き、流石の水樹も我に返る。冷たい廊下に放置された水樹はフラフラと立ち上がった。


「ちょ!?やめ、やめろ!!」

「なんだ、怖いのか?ちょっとチクッとするだけだ」


途端、ドアの向こうから聞こえた怪しげな会話。水樹は、バシンとドアを開け放つ。


「何やってんだ!?」


なんのこっちゃない、零は椅子に座って零王に傷の手当を受けていただけ。勘違いをした水樹は、消毒の痛みからか涙目の零に見惚れる。そんな水樹に枕が飛んできた。今回の水樹は反射的に手が動き、枕を顔面で受け取ることはなかった。


「見るなバカっ」

「減るだろバカ」


零が叫んだのに乗じて零王も水樹を罵倒した。


「ヒデェ!?」


やっぱ俺の扱い悪くない!?と水樹は含めて手に持ったままだった枕を床にたたきつけるが、スルーされる。


「ほら、足出せ」


抵抗が無駄だと悟ったのか、それとも諦めたのか、零は素直に従って足を零王へ投げ出した。


「…ったく、擦り傷と打撲だらけじゃないか」


零王は、呆れたように零の傷を診ていく。社名とか商品名とか全く書かれていない以前に、古そうな壷に入った緑色の軟膏を零王は零の傷に塗る。


「スライム!?」


ドロリと零王の指に盛られた緑色の軟膏を見て、水樹がついつい叫んだ。


「バカ!そんな訳ないだろう!?」


何考えてるの!と零は水樹を睨みつける。


「いたそ」

「痛いんだよ!!」


水樹のつぶやきを聞きとめた零は、やはり涙目で睨む。…怖くない。むしろ微笑ましい。そんな水樹の脳内。


「だろうな」

「じゃあもうちょっとやりようがあるんじゃないの!?」


同意した零王に零は咬み付いた。


「はぁ?消毒にやりようもクソもないだろ」

「…そうだけど」


なんだか釈然としない。間違ってはないけど、こう…イライラするというかなんというか。言いたいことを零は飲み込んだ。四の五の言ってると、扱いが雑になっていく気がしたから。唯でさえ痛いのだから、これ以上痛くなるのはごめんだよ。


「いたいのいたいのとんでけ」


一人ぽつんと仲良い2人を見ていたボッチな水樹は、母さんがこうやって手当してくれたな、と呟いた。


「水樹君!?頭狂った!?ちょ、ちょっとだ、大丈夫!?」

「そんなに驚くことじゃないだろ!」

「おかしいよ!そんな、いたいのいたいのとんでけなんて言ったって、痛くなくなるわけないじゃないか!だから、世の中の親は間違ってるんだ!気休めにしかならないのに!」

「自分が言われたことないからって、怒るな。それから動くな」


思わず立ち上がって抗議した零を零王はつかんで椅子に座らせる。


「ところで!服を脱がせる必要はなかったよね!?」

「汚い服いつまでも着ているな。怪我の治療には清潔さが何よりも必要なんだ」

「…そうだけど」


そうだけど、そうなんだけど!別に一人で着替えくらいできる!と零は零王に主張できず、口の中でモゴモゴというだけにとどめた。


「そういや、零…シャツしか着てねぇの?」


零の服装に目を止めた水樹は、感想というか疑問を口に出した。

白色だと透けてしまうからか、サイズが大きい黒色のシャツを零は着ている。腕の手当は終わっているらしい。袖から覗く腕に包帯がまいてあるのが見えて痛々しい。今は足の手当をしているからか、ズボンを穿いておらずシャツの裾から除く日焼けをしていない真っ白な素足が水樹にはまぶしく映る。

若干脚フェチがはいる水樹は、零の足に心なしか視線が自然といってしまうのだった。


「ふぅん、そういうこと気になっちゃうんだ。変態」


侮蔑の表情で零に見上げられた水樹は汗を浮かべる。どうやって名誉の挽回をしよう。


「へっ!?変態なんかじゃ!!それ言ったら、零王…さん?はどうなるんだよ!!」

「さん付けするならきちんとしろ。中途半端に疑問形にするんじゃない。で、俺がなんだって?」

「変態なんじゃねぇの!?そうやって零にかしづいて!」


零と零王の目が丸くなる。

沈黙。

気まずくなった水樹は、キョドる。


「な、なんだよ?」


上を見上げた零王と視線が合った気がした零は、水樹に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。




「水樹君がよく、かしづくなんて知っていたね」


一瞬水樹は何を言われたか理解できなかった。否。理解したくなかった。

ちょっと俺の認識どうなってるの!?と水樹は問いただす。


「酷いな!!なんだよ!俺の扱い酷くない!?零の中で俺ってどれだけバカになってるの!?」

「とことんバカになってるよ。…だって水樹君、救いようのないバカじゃない」


流石に言いにくかったのか零は水樹からちょっとだけ(30°くらい)視線を逸らす。それが零の意図とは逆に、水樹を一層哀れにした。


「零がそんな子だとは思わなかった!!」

「どんな子だと思っていたんだい?僕はそっちが気になるよ」


胸の前で腕を組んで、零は水樹に挑戦状をたたきつける。

丁度胸が強調される形となり。水樹の視線はそちらに釘づけ。だってお年頃なんだもの。仕方がないじゃないか。


「…」


ジー。


「ど、どこ見てるの!!」


水樹が注視する位置に気付いた零は、慌てて腕組みをやめて顔を赤くする。それはそれでかわいいんだよなぁ、なんて水樹が思ってることを零は知らない。知らぬが仏って言うし。


「胸?」

「…素直だね。なんで疑問形なのかは水樹君の名誉のために聞かないでおいてあげようか?」

「はい、そこ。俺の前でイチャイチャしない。独身の俺に対するあてつけか?若いっていいねぇ」


黙って零の傷に薬を塗りこんでいた零王は、手当が終ったのか壷に蓋をしつつ立ちあがる。グッと伸びをすると、骨が鳴る音がした。そのまま首をコキコキ横に動かして固まった体をほぐす。


「羨ましがってるけど…21歳だろ?」

「10代の体力と、20代の体力は別もんってことに気付いた。…兄貴笑ってた場合じゃなかったな。反省。だから、零姫。俺と結婚しよう」

「バッ!バカ!!僕と零王が結婚したところで何の利益も生まれないじゃないか!」

「そんなことないぞ。お前に恋愛を教えてやれる」


真赤になって否定してきた零を零王は面白く思う。コイツ本当にそっち方向の耐性ないよな、と。


「そんなくだらないこと必要ないよ!僕は、政略結婚で十分だ!どうせ、サタンと結婚するんだからいらないよ。恋なんて…邪魔になるだけだ。僕は、何が何でも叶えなきゃいけないことがあるんだよ」

「そうやってあきらめずに、な?」

「え、じゃあ俺零と…」


零王に負けじと名乗りを上げた水樹だが、氷のように冷たい零の視線に気づき最後まで言わずに口をつぐんだ。


「バカなこと言ってないで…これからどうするの?勢いに任せて出てきちゃったけど」

「大丈夫だ、問題ない…はず」

「言いきれなかったの、零王?」

「ま、まぁそんなことは置いておいて!とりあえず今日は解散!さっさと帰れ羅城君」


そう言って零王は水樹を追い出しにかかるのだった。


さぁいい感じにラブコメ要素入ってきたと思いません!?

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