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花妖怪を狩る桜

 心也が六月として陰陽師の仕事を始めて1年が過ぎた。最初こそは無名の陰陽師で依頼が来ることも少なかったのだが、この1年の間に様々な依頼をこなし、それなりには有名な陰陽師として知られていた。それで1日に1回は組合に顔を出しに行き、依頼の有無を確認していた。そしていつも通り組合の建物に入ると、かなり若い人間があわてながらこちらに向かってきた。


青年「十夜殿!組合長がお呼びです!すぐに行ってください!」

心也「あぁ分かった。すぐ行ってくる」


 青年から呼ばれ、すぐにこの組合の長(心也が初めてこの組合で会った男)の部屋へ向かう。部屋の前に来ると、すぐに戸を開き、中へ入る。


心也「組長、なんですか?いきなり呼び出して」

組長「おお、六月か。いや、すこしお前に厄介な頼みごとをしてもらいたくてな」

心也「頼みごとにも依りますけどね、受けましょう」

組長「お前なら受けてくれると思った。太陽の丘ってしっているか?」


 太陽の丘?聞いたこともない。大方稲の金色の海やら小麦の草原などと同じだろう。


心也「いえ、知りません」

組長「そこに住んでいる妖怪がな、少し都へ被害を出しとるみたいでな。退治しに行った陰陽師がもう8人も被害にあっとる。それでそいつの退治に行って欲しいのだ」

心也「分かりました。それじゃ行ってきますが、他には?」

組長「あぁそうだった。お前、その口調どうにかならんか?」

心也「口調、ですか」


 別に口調なんて気にしたことはないが、何のことだろう。何か気に障ったのだろうか。いや、1年もこの口調なのだから、今更何か言ってくるはずもないだろう。


心也「分かった。これくらいで良いか?」

組長「おお、男らしくなった。それでいい」

心也「それじゃ、組長。行ってくる」


 そう言って組長から太陽の丘への道を聞き、建物を出てすぐに向かった。



心也「綺麗だ…」


 太陽の丘についての第一声が、それだった。一面に広がる向日葵の花畑。しかも花の手入れは一本一本かなり丁寧に施されている。元々自分が()と言う花の妖怪であり、能力も自然に関する能力だからか、この花たちがかなりの手間暇が掛けられているのがすぐに分かった。そうして眺めていると、一人の女性が近くに来ていた。


??? 「どう?私の花は」

心也「凄く綺麗だ。花の一輪一輪への愛情が凄く伝わってくる。まぁ、能力のせいもあるかもしれないけどな」

??? 「へぇ、どんな能力なの?」

心也「数多くある能力の内、関係するとしたら【自然を操る程度の能力】と【桜を司る程度の能力】の二つだな」

??? 「ずいぶんとご大層な能力ね。数多くと言うことはまだあるみたいだけど」

心也「まぁ、今はそこは関係ないから伏せておく。で、なんでこんな花に愛を注げる奴が、都に被害を出した?風見幽香」


 心也の言葉に幽香は目を細め、差していた日傘を閉じ、心也へ向けてきた。


風見「私は都に被害なんて出しては無いわ。私は花を摘もうとした愚か者にお仕置きをしただけ。それと私を退治しに来た陰陽師を追い払っただけよ。都で少し有名な陰陽師の十夜六月さん」


 風見が心也の『六月』と言う名前を知っていることに驚いたが、この1年ほぼ毎日陰陽師として活動してきた身だ。別に知っていてもおかしいことはないと考え、顔には出さないことにした。でも、傘は風見がよく武器としても扱うという他の陰陽師の情報を思い出し、【暁】が無くなり、おもに使う武器が無くなり他の槍が手に入るまでの代わりとして現在使用している【桜柳】を取り出して構える。

 1年間陰陽師活動をしてきた中で、心也は達人とまでは行かないが、かなり刀を扱えるようにはないっていた。才能が無くても時間をかければ上達はするものと言うことを、心也は改めて知った。


心也「どうせ戦うなら他の場所に変えないか?花は俺にも風見にも大切な物だろう」

風見「幽香でいいわ。場所を帰るのには同感ね。こんなことで私の花たちを殺されたくはないもの」

心也「それじゃ、移動しよう。ここの近くにそれなりに広いところはないか?」


 幽香によると、近くの森の中にかなり開けたところがあるようだった。それなら自然に大きな被害が出ないと思い、そこでの対決を受理した。


幽香「それじゃ、早く終わらせて花の世話をしたいから始めるわよ!」

心也「こっちも早めに依頼を終わらせたいからな、行くぞ!」


 幽香は妖怪としての力で加速、心也は霊力を足に纏わせた力で地面を蹴り、加速する。高速で正面から移動する幽香に対し、心也はすれ違いざまに切りつけようとするが、幽香の傘に阻まれて初撃は失敗に終わってしまう。加速を終わらせ、地を滑りながら減速し振りかえって相手の状況の確認をしようとすると、幽香は傘ではなく拳を振りかぶりながら次の攻撃を仕掛けてきた。心也はそれをかろうじてかわす。


幽香「すばしっこいわね、おとなしく食らいなさい!」

心也「食らったら死にますからね、食らえませんよ!」


 幽香の拳を連続してかわしながら言葉を交わす。心也は霊力により身体強化しているが、今の心也には一般の陰陽師より少し霊力が多いくらいなのだ。元々陰陽師は札に霊力を籠め、少量の霊力で戦っている為に身体強化などの継続して霊力を使うことに向いてはいない。それのせいで霊力が枯渇し始め、心也の動きも鈍ってくる。


幽香「ほらほらどうしたの!動きが鈍ってきてるわよ!」

心也「(仕方ない、ピアスの効果をなくして妖力を解放させるか…)」


 心也は一度距離を取って効果が低下してきた身体強化を切る。そこでピアスの効果を切って仕舞っていた妖力を取り出す。それに応じて心也の身体能力も大妖怪以上の物になり、髪も桜妖怪である薄桃色と銀狐の銀髪のグラデーションに変化する。

 そこで幽香は心也の異変に気付き、動きを止めて驚愕の顔をあらわにしていた。


幽香「何なの、それ…?」

心也「それ去年紫にも言われたな、意外と傷つくぞ…俺の本名は神代心也、桜妖怪と妖狐の混血だ。まぁ、まだ本気の2割程度しか出してないけど」


 この状態で2割、翼に4割、尻尾にも4割と言う割合で妖力が配分されている。なぜこの配分かは分からないが、その妖怪としての象徴が無ければ妖力の少なくなってきてもおかしくはないので、その問題は諦めている。


幽香「紫って、あの八雲紫?」

心也「その紫以外に誰がいるか聞いてみたいものだな」

幽香「ま、その話は良いわ。それよりもあなたの妖力の事よ、どうせ嘘ね。そんな妖怪、聞いたこともない」

心也「好きに想像してろ。それじゃ、試合再開と行くか!」


 心也は言葉と同時に右手に持った【桜柳】に妖力を流し込み、刀のリーチを3mほどに伸ばす。それで傘で切りつけるように攻撃を仕掛けてくる幽香の傘をリーチが伸びた【桜柳】で殴りつけ、折る。そこで幽香の目が見開かれ、空中へ飛び出す。


心也「どうした幽香、逃げるのか?」

幽香「逃げるんじゃないわよ。そう、これのためにね!『マスタースパーク』」


 幽香が空中へ飛び出したのは、逃げるのではなく、絶対に逃げられない位置からの極太レーザー。心也はそれを一瞥し、【桜柳】を直して1冊の魔導書を取り出した。


心也「幽香、すまないがこの戦い、俺の勝ちだ。魔砲『Ultimate spark』」


 幽香のマスタースパークを超える特大砲撃。通常の魔砲より魔力を多めに消費し、さらに能力での後押しも通常より大きくすることで規模をかなり広くした魔砲により、幽香のマスタースパークを飲み込むどころか、幽香も飲み込んでいった。



幽香「殺すなら、早く殺しなさいよ…」


 吹き飛ばされた幽香の居場所を見つけ、翼と尻尾を仕舞ってピアスを発動させると心也は霊力の槍を作り、幽香の首に当てる。


心也「殺すつもりはない。俺もわざわざ人間のために同種を殺したりはしたくないからな」

幽香「ならなんで人間の味方をしているの?私たちと同じで良いじゃない」

心也「ただ単に祖父が元々人間の血をひいていたからな、それで殺したりはしないだけだ。それに俺はまたここを見に来たいと思う、でも花を世話する奴が居なかったら無理だろ?」


 心也の言葉を聞いて、幽香は安心したように口を少し上に上げた。そして心也はさらに言葉を付け足す。


心也「だが、この丘の周りに結界を張らしてもらう。人間が絶対にこの丘に入らないように」

幽香「それは私からお願いするわ。愚かな人間に傷つけられたら花が可哀そうだもの」

心也「あ、すまないけどこの折れた傘持っていくよ?一応勝った証を持っていかないといけないから」


 一応幽香と話し合って心也は傘を持ち、丘の周りの森に魔法結界を張り、能力で霧を作る。結界の効果は人間が入ると方向を惑わし、絶対に丘に入れなくすること。隠密性にも長けていて、大妖怪くらいにならにとまず気付かない。まぁ気づいても俺以外解除不可能なように張ったけど。


心也「それじゃ、幽香。暇になったら来るけど、死合いだけは勘弁してくれよ?」

幽香「承知する訳ないでしょ。まぁ、検討だけはしておいてあげる」

心也「それはありがたいな」


 そう言って心也は飛び上がり、都への帰路に着く。夕方頃に帰り始めたが、途中の団子屋に寄ったりしていたので帰ったころには夜になっていた。





組長「おぉ、無事帰ったか。無事で帰ってきたということは、倒せたのか!?」

心也「一応倒せましたよ。これは風見幽香の傘です。あと、あそこにはもう誰も行けないようにしておきました。口で言うのもめんどくさいので自分で言ってきてください」


 そう早口に言って建物から出る。正直あそこは嫌いだ。人間が妖怪を殺す技術はあってもいいと思うが、それが大勢となれば話は別だ。いずれすべての妖怪が殺されてもおかしくないと思えてくるだろう。そう思わせるところがあるから、あそこは嫌いだ。


作「意外と多くかけたな…」


心「書けたのははいいけど、ペースをもっと安定させないとな」


作「時間の問題だ、いつかは解決する」


心「解決したらいいけどな…それじゃ、ここで終わらせよう」


作「もちろんこのあとがきのことです」

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