表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神代の贈り物  作者: 火人
0章地獄に至るまで
9/16

八話 夢を形に儀式が始まる

神暦762年 十一月一日 出雲国大和 本殿


とうとうこの日が来た。選定の儀を行う日が、ここまで色々と大変だった。中身がガキの相手をしたり、優雅のところに行ったり、有力な武士の家系を回ったりと色々だったが、なんとかここまで持って来れた。多少の不安は残っているが、考えるのを辞めている自分に嫌悪感を抱くが、わからないことで不安になるよりかはマシだと思っている。そして現在は、本殿の中にいる。シンプルに十束剣を出すからだ。柄から鞘まで墨で塗られたように真っ黒な打刀だ。持ってみると意外に軽く、これはまだ適合者と接触してないから軽いとわかる。優雅から聞くには、聖遺物の聖剣や聖槍などの武器系は、適合者に触れて初めて真の姿に戻り、その者を所有者になる。所有者が決まった途端に他人には、持つと不快感や持ちたくないと思わせる何かがあるらしい……知らんが。


「十束剣か……指名を務めよう。しかし、よく見ると本当に不思議と神聖さって奴が溢れてる。」


今どうでも良いことに気づいたが、十束剣の鍔の紋様が目を奪われた。単純に気づかなかったから驚いているのかもしれない。鬼灯の紋様、鍔もまた黒く塗られているが、まるで錆び付いたように見えるのが不思議だ。俺はそのまま随神門に行き、用意した祭壇に十束剣を置く。周りには、しめ縄で鞘を固定し、盗難を防ぎながらも選定の儀に適した状態にする。そして結界を張り、見えなくする。明日が選定の儀……俺は、十束剣の前で祝詞を唱える。これは、まるまる一晩を行う。理由は、確か適合者が現れるための祈りらしいが、そんなことは実際どうでも良いのだろう。文化として続いている。咲夜と龍閻は、家でもう寝ているが、俺一人で祝詞を捧げるのは少し辛いものがある。


「十東剣よ、神代を経て、今宵をば知り、現世をば知り給ひて、神々の世の終へたるを以て、人の道に、罷りおはしなされ……」


祝詞を何時間も唱え続ける。そして日が明けたのか、張った結界を解いて入る奴がいる。


「空天さん、祝詞お疲れ様です。もう朝なので、斎服に着替えてください。」


巫女服姿の咲夜だった……とても可愛く、そしてその服装で夜を癒してほしいと思ったが、多少の眠気があるせいで楽しみの妄想さえ途絶えてしまう。虚しいものだ。


「あぁ、わかってる。龍閻は、どうした?」


「龍閻なら今お着替え中だと思います。あ、私と龍閻は、朝食を終えたので」


「そうか、わかった。儀式は、ある程度人が集まってから行う。多分そろそろ集まってくるだろう。対応をたのんだ。」


「はい、もう一度誰も見えないように、そして入れないように十束剣の周りを結界で覆いますね。」


咲夜は優秀だ。何も言わなくても動いてくれる。察しがいいのかな?でも夜だと母性と乙女な雰囲気を醸して素晴らしいものがある……ヤベェ眠いからか、変な方向に思考がどっか行くな。俺は、結界の外を出て着替えに行く。

家に入るとドタドタと礼服を着た龍閻が近づいてくる……可愛い。


「父上、お帰りなさい。今日楽しみ、お祭りだから。」


確かに祭りは、祭りだが……儀式なんだよなぁ、咲夜は、祭りとして教えたのか。


「そうだな、咲夜は随神門にいるから手伝って行って来い」


「はーい、わかった父上」


そうやってドタドタと随神門に向かった。龍閻の癒しは、咲夜とはまた別の癒しなので元気をもらえる。


俺は、斎服を着て随神門に向かった。神社内には、先ほどまでいなかったのに人だかりで溢れていた。大勢の種族に武士なども居る。さて、選定の儀を始めるとするか。俺は、張られた結界の前に来る。横には、咲夜と龍閻がいるのである程度落ち着いて行える。家族のありがたみだな。


「ここに集まりし候補者の者達よ。これより、帝の命により選定の儀を始める事を宣言する。」


俺の言葉に観衆は、雄叫びを上げる。当然だろう。この目である意味英雄が誕生するかもしれないし、聖遺物をこの目で拝めるなんてそうそうあるもんじゃない。下手したら一生巡り会えないほどの代物だ。それは、興奮するだろう。俺は、そっと龍閻に目を向ける。龍閻も興奮しているのが分かる。咲夜が大人しくさせるためなのか、腕を掴んでいるが、それも可愛いし、咲夜と龍閻が揃っているとやはり美形だなって思わせてくれるので、俺もテンションが上がる。眠気を吹っ飛ばしてほしいほどに。


「これより結界を解くが、最初に聖遺物の種類と選定の儀でどう判断するかを説明する。」


俺が再び声を出すと、静まり返る。何故だろう気持ちいい。表すならなんだろう。帝とかが「静まれ」と言い、みんなが一気にシーンとなる感じ?そうなると優雅が割と俺が今味わっている感覚を楽しんでいるのかもしれない。まぁそれでも帝とかやりますって聞かれたら全力で拒否るけど。


「これより選定の儀を行われる聖遺物は、六つの中の一つ聖剣種・十束剣である。内容もシンプルだ、鞘から刀を抜けたらその者が所有者だ。」


そう誰か一人でも十束剣を鞘から抜くことができたらそいつが所有者って事だ。まぁ抜くことができたらの話だが。


「これより結界を解く。それでは、みるがいい。聖遺物を、十束剣をこの目に焼き付けよ。これが十束剣だ。」


俺は、結界を掴み紙を破るように引き裂いた。結界は、散り散りになりその隠していたものを表す。


それは、祭壇に突き刺さっているように見えるが、しめ縄で固定され柄から鞘の端まで墨で塗られたように黒い刀が現れる。ただの刀なのに何故か目を奪われる神聖さがあった。その中に一人だけ全く違う物に見えていた子供がいるようだ……。


(龍閻視点)

父上が張られていた結界を鷲掴みにし引き裂いた。シンプルにカッコよく見えた。なんで表せばいいか、わからないけど素直にカッコよかった。そこから現れたのは刀……俺は、その刀に目を奪われた。その模様に魅了されたからだ、そしてどっかで見たような光景を全て押し込んだような、その光景が日常だった気もするような不思議な魅力。吸い込まれるように触れたいと自然に考えてしまう。こんな興奮は、初めてかもしれない。この表現できない感じがまた嬉しいような気持ち悪いような……俺の体は興奮が溢れていたのか、母上が俺の腕を強く握る。痛くはないが、大人しくしろって事なので、心の中で興奮する。しかし母上の顔は、心配の色に染まっているように見える。その顔を何故か俺に向けてくるが、知らない。


「母上、十束剣ってすごいね」


俺がそう言うと複雑そうに答える。


「そうね……すごいね」


そんな答えでも何故か嬉しく感じた。もう一度十束剣を見る。鞘の模様が綺麗でかなり好みだからずっと見ていられる。炎のような彼岸花が上から下までびっしりと丁寧に描かれており、中央にだけその彼岸花はないがその代わりに十の勾玉が円形に並んでいる。鍔もとても綺麗だ。模様は、見えないが黄金の鍔……本当に綺麗だと思う。しかし言語化をしたいが6歳の子供では、とても難しい物がある。言葉にできない何かがあるこれを神聖と捉えるのか、単純に表現をする言葉がないのかわからない。ただ「凄い」って言葉しか出ない。父上が何かをみんなに話しているが聞こえない……ただ十束剣に目を奪われる。なんでこんなに目が離せない。固定されたような感じ……一瞬怖いと思ったがまた不思議に怖くないって思ってしまう。そして思い出した。夢に似ている事に鞘の模様が夢を現実に収めたような感じ……何回も似たような事を思っている気がするが何故かそう思ってしまう。徹底的に違うのは、十人の人影がないことだけだ。


八話を読んで頂きありがとうございます。今後とも邁進していきますので応援、感想やコメント、ブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ