表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神代の贈り物  作者: 火人
二章 獅子を喰らいて成長せよ至る戦場までに 秋冬巻く、政劇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/84

八十四話 盗人と言う遊び人

遊びに必要なのは、いつだって本気になる心と勝ちに行く野心だけでいい。


獣らしく獲物の喉笛を噛み切る顎があるのならそれを掻っ切ろう……爪があるなら切り裂け、我が身を槍に、我が身を矢に変えろ。


色も要らない、音も要らない、ただ身を屈めて前のめりになって心臓を貫く雷鳴になれば良い。


だから足に魔力を纏わせ、刃に魔力を纏わせろ。


言葉は、素直に技を己に……「”神刺し(かんざし)”」



神暦767年九月二十三日 神聖アウグスタ帝国宮殿・玉座の間



神話を現実に、権威と気品が詰まっていた玉座の間は、魔力と殺意が入り乱れ死の香りを醸し出す。


壁に彫り込まれていた石像も象徴の壁画さえも全てが戦闘の影響で見るも無惨な瓦礫に変化し、全てを貫く轟音を立てて神速の刺突が英雄へと放たれた。


視界に色は無し……耳に音が届く事もなく、ただ己が敵の心臓目掛けて加速する。


音を割き、空気を切り裂き、全てが線へ変貌し視界に映るもの全てが停止する。


スキピオは大きな盾を使い防御の構えをしていたが……浅い、俺の神刺し(かんざし)に貫けるものは無い。


「やっぱり浅いなぁ」


「ッえ?」


全てを置き去りにする轟音と加速を行っていた俺は、気づけば宙を乱回転しながら斜め左方向?……いや、後ろに飛ばされた?


いや、すり抜けた? 回避されたのか? いや、上方向に跳んでねぇけど加速時よりも空中にはいるし……でも加速しかできない「神刺し(アレ)」をどう防ぎやがった?


「ヤベェ」


ってよりも壁に激突する……どうする……どうすべきだぁ? 空間は上下左右を失った上に加速しすぎて止め方も知らねぇし、また失敗……?

アレ?……なんで二回目の感覚になるんだぁ?

いや悩んでる場合でもねぇし、どうするかなぁ?


「……ッ!、一か八かの”激神(ゲキシン)”」


バランスを崩しているんだから、空間や回転の力に乗って方向の力で安定化させ、壁への激突を回避するべきだと思うけど……良いや、地面に突き刺せ。


十束剣に纏われた炎の如き量の魔力は、石床に突き刺さる刃に力を持たせ、鈍い轟音と共に直線の溝を造りながらも、加速し続けた力を力技で鈍化させる。


「ッフゥー……」


止まった……よかった、二回も同じ失敗を……ぁ?……アレ? もしかして俺ってここで神刺し(かんざし)を使うの()()()


あの負傷も、あの記憶喪失も……記憶を遡って浸ってたのも全部。


「かぁぁ……嘘だろぅ」


「おぉ、今回は自爆しなくて良かったなぁ」

ニヤニヤと何かを察したようなスキピオは、右手に持つ大刀を盾に当て、煽るようにこちらへ狙いを定めさせた。


「こっちを狙わねぇと意味ねぇだろ?」


「うるさいなぁ、わかってる」


わかってる……一撃必殺よりも地道な一太刀の方が相性がいいって事も。狙いも遊びも、やれる事をやれば良い。


楽しんで行こうぜ俺。


「フゥー……」


意識は薄れて良い……呼吸を巡らせ魔力を流し、血液と共に全身へと巡らせる。


使う関節と筋肉を補強するように、強化するように。魔力の溜まりを流動的かつ静止的に、矛盾を掴め。


手のひらから擬似的な血管をイメージして十束剣に魔力を纏わせろ。


出雲の匂いを思い出せたなら過去の教えを思い出せ、面影が教えた物と盗み見た雰囲気と気配を……残された形が無かろうと己の戦歴を洗って模倣しろ。


「……」


最善の一手(あそび)を選び取れ、俺が扱える構え[正眼・下段・上段・脇・八相・逆手・霞・抜刀・肩越し]この中で最適を選ぶなら……よし、決めた。


体は柔軟に軽く、慣れた足運びと雰囲気を醸し出す。


重心を左斜めにし刀を隠すように、刃先を水平に脇に隠れる様に意識し、左手は柄頭を握り右手は臨機応変に軽く握る。


想像しろ擬似抜刀を……足運びまで全てを。


「準備できたな」


「あぁ、待たせてごめんなぁ師匠」


「ッ……初めて言われた気分になるなぁ」


「そうでもねぇと思うけどなぁ?」


「じゃあ……」


「遊びを始めますかぁ……スゥ」


掛け合いもタイミングもバラバラでありながら、それが剣術か、防御か攻撃か分からないまま、互いに駆け出す。


まるで合わせ鏡の様に、自身の一手となる刃を隠し、敵を狙い続ける最初の一太刀を。


「ふぅ……」


脇構えから繰り出す技術的な抜刀は、腰の捻りにより速く鋭く滑走する。


『キィーー』


金属と魔力が衝突し、火花と金属音が響き渡る。


神速とまで言わないが、捻りと踏み出しの加速によって速まった刃は、スキピオの大刀から繰り出される唐竹割りと衝突し、鈍い振動の痺れが手に行き渡る。


「……」


一文字に裂けない……鍔迫り合いのパワー勝負なら不利。なら――――スキピオによる唐竹割りの力を受け流すように、力を増させるように意識し刀身を滑らせ、大刀の峰に刃を当て、上からくる力を強めさせて岩床に押し付ける。


「!」


よし、抑え込めた……ここの至近距離なら盾の

殴打もしづらい死角だろ?


次の手は、その臓物を曝け出す左一文字を

――――石床を切り裂き刺さる大刀を押さえている刃先を切り替え、峰を滑走する様に刃を滑らせ、流れる様に腹に刃を入れようと一閃する……が、


「……チッ」


スキピオは、やはり上手いと称賛を送りたくなるほどに回避がうまかった。


この大刀が俺が初めて見る武器だからこそ理解できなかった部分と、その長さゆえの技術を見抜けなかった。


スキピオは、俺のカウンターを嘲笑う様に冷静で必然性のある動きを見せてきた。


この大刀の長さは掴めていないが、刀身と同時に柄が長い事に気づいていなかった。


回避は、シンプルな後ろへのバックステップによるものだが……柄を離さず流れるように、柄頭まで後ろにかわす芸当を簡単にやってのける。


しかもタイミングを合わせての……盾で無理矢理防ぐでもなければ、殴る蹴るによる殴打もない……技術の逃げ。割といい一閃だったから普通に悔しい。


「気を取られすぎ」


「へぇ?」


スキピオは、柄頭を引き飛ばす?……いや、なんだアレ? 大刀を後ろに投げる様に柄を引っ張り……手は完全に離さない様にしながら刀身を持ちやすい様に変更?……いや後ろにも体を下げているし?


「龍閻、回避ってのは次の攻撃の準備と思えよ」


スキピオが鋭く、生暖かくいったこの言葉の後にスキピオのカウンターが飛んできた……正直に言えばひでぇ程に上手かった。


まだ引き寄せているはずなのに、大刀の刃が俺の肌を切り裂くだけの鋸になって襲ってきた。

怖すぎて左方向に回避し切れたが、あの言葉がなかったら割と深い切り傷ができていた……遊ばれている。


「何それ?」


「これが本場の技量ってねぇ」


腹立つ、しかし今のどうやって……刀身は地面に刺さっていて、抜くために直線的に後ろから引っ張るのはわかるが、柄頭からの引きで、いや滑らしたのか?


薙刀の技法よろしく、滑らせて交互に手を変えるのを片手で? 似た技法があるのか?


なら刀身がこっちに向いてたのは、引くと同時に刀身を回転させて刃の向きを変えた?


――こいつ、もしかして燕返しできる?


いや、刀身の方向変換ってのは基本動作だし、ただ瞬間的にできるってのは化け物って言っていい気がするけど……しまったなぁ、出雲育ちなのに湾曲した刀タイプを相手にするのって実質初めて。両刃に慣れすぎた。


「手の中で回転を想像するのかぁ? いや、あの湾曲の形から斬撃に強いと考えるべきだし……」


真似してみるか――――重心を右側に変え、右手をこめかみに、左手は柄頭の方を握り十束剣を直線に持った。


三手目って言えるか分からないが、攻め方一新して一から攻める。


八相なら刃先の切り替えも、柄を使った遊びも多少できる……


「ふぅ――」


大地を滑ると同時に、大地を踏み蹴る……地を持って剣となせ、心に刻むは先人の知恵なりってね。


間合いを一直線に狭めながら、上段から一太刀を振り下ろす。


「ただ剣を振り下ろ……はぁ?」


スキピオの目には何が見えたのか知らねぇけど……その反応は、大好物で最高に楽しくなってきた事を実感させる。


スキピオは優秀で強い。武芸者なら誰しも相手の間合いと武器の特徴を掴まないといけない……だから俺はスキピオのカウンターで詰みかけたし、スキピオも余裕綽々だったが、俺もその手を使わせてもらう。


まだ上手く扱える代物じゃ無いってわかっている。軸もズレ、真に斬撃と呼べる代物からも遠いだろう。


しかし上段から振り下ろされる真向斬りは、いつもと違う軌道を描く……途中でたった少し、たった少し刃先が伸びる。


途中から刀の刀身が伸びたと錯覚するほどに。

盾で防ぎながらも後退を余儀なくされたスキピオの顔は、複雑で引き攣った笑顔をしており滑稽。


「テメェ、人様の技術を一回で盗みやがって……盗人がぁ」


「ッシャア!、できた!」


「……フッ」


「もっと遊ぶぞスキピオォ!」


「ガキの子守りをするのも楽じゃねぇのに……楽しくなってきた」

八十四話を読んでいただきありがとうございます。

もし面白いと思ったらブックマーク、感想やコメント、レビューをお願いします。

今後の神代の贈り物を楽しんでくだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ