表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神代の贈り物  作者: 火人
0章地獄に至るまで
8/14

七話 計略と謝罪を持って答えを示す

神暦762年 十月十八日 出雲国大和

昨日の出来事から、俺は帝に呼び出された。行動力がすごいと噂の御影という男が関係しているらしい。咲夜も一緒にと指定されたことで、それが昨日のことだとすぐにわかった。しかし、龍閻を一人家に残すわけにもいかない。どうしようかと悩んでいると、咲夜が庭で龍閻と一緒に泥人形を作っていた。

「咲夜、龍閻、何をしているんだ?」

「父上、泥遊び!母上が手伝ってって言うから」

「はい、そうですね。ゴーレムを作ろうと思いまして」

「ゴーレム?」

「魔法で作る守備兵のことですね。」

へえ、そんなものがあるのか。さすが俺の愛しい嫁だ。昨夜つけたキスマークが、なんとも色っぽい。

咲夜が俺よりも先に対策を考えているのが自慢だ。なら、俺は少しの間、村に行って産婆をしてくれた千枝婆さんに龍閻の面倒を見てもらうことにしよう。

「龍閻、泥人形はもういいよ。今から魔法を使うから離れててね。」

咲夜がそう言うと、龍閻は俺のそばまで移動した。ああ、可愛い。六歳になってもこんなに可愛い。この子にもう許嫁がいるのか……感慨深い。まだ教えていないが、帝と話してタイミングを測ろう。

そんなことを考えていると、咲夜が魔法の詠唱を始めた。

「土塊よ、動きたまえ。大地の兵として、守れよ守れ。役目を果たすまで、動き、働き、戦え。そなたの力は守る力。土魔法、大地の泥人形タ・マシ・テウト。」

魔法を唱えると、作っていた泥人形が巨大化し、ゴーレムになった。身長に換算すると多分ニメートルぐらいだろうか。もう一度言おう。俺の愛しい妻は素晴らしい。神だ。何でもできる女神様だ。俺は聖遺物なんかより、咲夜を崇めているらしい。祭壇が欲しい。そうすれば、もし咲夜が本気で怒った時も許してもらえるかもしれない。だって、俺はここまで愛しているんだと言えるからだ。

「これでよし。龍閻、これから千枝さんが来るから良い子にしてな。私と空天さんは、出かけないといけないから。」

「はーい、わかった。」

元気な返事だった。そして、俺がやろうとしていたことがとっくに終わっているのを知り、咲夜の優秀さを再確認する。一瞬「俺は無能か?」と思ってしまうが、それでもいいと思えるほど、咲夜は輝いて見える。

「空天さん、私は着替えてきますので、空天さんも束帯を付けてくださいね。あ、そうですね。」

そうして、俺の咲夜は準備を終え、転移の巻物で京の都に移動した。

京の都 宮殿

空天と咲夜は、宮殿に難なく入ることができた。まあ、理由はいくつかあるが、シンプルに俺が二日前に来たこともあるだろう。目の前には、エルフ族で関白の地位にいる芭蕉さんが案内してくれている。

「空天殿に咲夜さん、申し訳ありません。いきなり呼び出してしまい。」

「いえ、わかっているのでそう言わないでください、芭蕉さん。呼ばれた理由は予測できますので……」

「空天殿……ありがとうございます。では、着きましたのでどうぞお入りください。」

そうして俺は、執務室の襖を開ける。そこには、俺と同年代の男が、何か複雑な顔でこちらを向けていた。俺と咲夜は、とりあえず中に入り座る。

「空天、すまねえな……馬鹿が迷惑をかけて。」

意外だった。てっきり怒るなり罰を与えるなりすると思っていたが、謝罪か……

「優雅、後で色々聞くが、まずは自己紹介させてくれ。こちらは、俺の女神である妻の咲夜です。」

おっと、咲夜が照れたのか腹に肘打ちされた。あまり痛くないが可愛い。もっと褒めるべきかどうか考えるが、今日は優雅がテンション低いので、ふざけるのはやめておこう。

「殿下、お初にございます。先ほど、主人に紹介されました火之神咲夜と申します。主人がお世話になって……」

「咲夜さん、そこまで畏まる必要はない。空天とは友なのだ。それに、俺が二人を呼んだのは、あの馬鹿の謝罪と、候補選出について説明すべきだと判断したからだ。」

「優雅、説明って?」

今、説明と言ったか。ずっと気になっていたことが一つだけある。適合者候補をどうやって見つけたのか、どう判断したのか。俺は守り手として、それを知らなければならない。

「とりあえず説明を頼むよ。謝罪は要らない。お前が悪いわけじゃない。」

優雅は少し悩んだ顔をしてため息を吐き、素の姿を見せた。

「そうだな……助かるよ、空天。じゃあ説明するが、とりあえず天探家のガキがすまねえな。血縁に割と権力があると言えばいいのか、最近暴走気味で抑えが効かん。」

確かに、あの時のことを思い出すと「暴走」が的を得ていると思える。権力を与えられ、無敵だと勘違いし、力を振るうガキそのもの……イヤイヤ期の龍閻を思い出すこともあるが、あれは違うな。

「えっと……殿下にお聞きしたいのですが、天探家の御影様っておいくつなんでしょうか?」

確かに気になる。まだ十代前半なら、まあ調子に乗る年齢だろう。親が熱心に教育すれば、真っ直ぐに育てられるんじゃないか?そう思っていると、優雅は少し悩んだ顔をして答えた。

「二十七……歳です……」

「……え?」

俺と咲夜の声がハモる。というか、今なんて言った?俺の聞き間違いでなければ、割と年上だった。

「優雅……もう一度聞いても良いか?」

「二十七歳だよ、あのガキは。」

「ガキって部分は、中身のこと指してるんだな。」

「当たり前だろ。あんなのガキだろ。」

確かに……従者も含めて、割とガキの癇癪に近い理不尽があった。

「空天と咲夜さんは、あまり心配しないでくれ。こちらからも何とか言うから……今回の件は、こっちが百パーセント悪い。」

「殿下、もういいですよ。終わったことですし……」

「そうだな。俺が気になるのは別の所だ。ずっと考えていたんだ。なぜ、十束剣の適合者候補がもう見つかっているのか。そしてなぜ最初から決まっていたかのように進めているのか不思議だった……答えてくれ。」

「根本的に言えば、候補であり、確定な適合者じゃない。出雲国は武士たちの武が強い傾向にある。今は内政が安定しているが、いつ内乱なんぞ起こるかわからん。」

確かに……出雲国は平和に見えて、野蛮な国と言える。武士たちは戦闘のプロであり、領民を殺すことだってざらだ。一番おかしな理由が「腕が鈍るから人を斬らなければ」というものだ。基本の礼儀などは広まったが、未だに「舐められた=殺す」という文化体系は変わっていない。

「国を治める我が大国主神家は、シンプルな答えを導き出した。内の血縁、大国主神家を中心に聖遺物の力を家の力にするために、適合者らしき人物を手当たり次第に送り出し、何とか力を保持し続けた。」

なるほど……あの時にも思ったが、やはり家の力を保持するための戦略か。

「殿下、ならどうやって候補を選別しているんですか?」

確かにそこが一番気になる。それがあれば、選定の儀を円滑に行える。

「占いと、聖遺物の魔力の波長に近い者、って具合にな。」

意外だった。占いはどうでもいいが、魔力の波長で決めていたのか。

「優雅、その魔力の波長って?俺はここ数日、何度も十束剣を見たが、魔力なんて感じなかった。」

確かに、何度も見た。魔力など感じなかった。神聖なオーラと言えばいいのか、不思議な力は感じるが、魔力など一切感じなかった。

「昔の適合者の魔力を持った人間の記録を元に選んでいるだけだ。まあ、それを信用できんが……御影は自分だと思ってるし、天探家自体も聖遺物を欲している。最近では、兆しがあったと吹聴もしているが、嘘だということは確認した。」

なるほど……十束剣が家で管理を行うようになってから、確かに五百年以上も前だが、その当時でも出雲国は存在していた。そして、その手段で力を誇示してきたのだろう。これで少し安心できる要素があるかもしれない。

「なるほど……ありがとう、優雅。謝罪と、候補者がどう選ばれているのかを教えてくれて。まあ、その資料を貸してくれと言っても無理だとわかっている。だから、俺のやり方でやらせてもらう。」

「ありがとう……友よ。詫びの印に送らないといけないな。あと、娘に会わせるよ。お前たちの息子と娘は婚約者だからな。」

今日の優雅は、初対面の時よりも落ち着いている。意外と思えないのは、抜け目のない男だと見抜いていたからかもしれない。

「まずは金貨で心を込めて、送って~。空天、ちょっとこっちに来い。」

なんか急にテンション上げてきたな、優雅の奴。俺が近づくと、優雅は咲夜に見えないように背中を向けて隠すように話す。

「空天よぉ、前にも言ったが、確かにお前の嫁さんは美人だなぁ。これを持っていけ。強力な媚薬だ。嗅がせるだけでもやばいぜ。」

おっと、かなり嬉しいものを寄越すじゃないか。もしやこいつ、これで許してもらおうと考えていたな。俺の心を読めている。確かに、俺がブチ切れたとしても、これがあれば少しはご機嫌が治るかもしれない。だって、咲夜とあんなことやこんなことが、スムーズに、そして激しくできるからだ。

俺は優雅のように小声で返す。「ありがとうよ、友よ。これで今夜を熱くさせてもらう。」

「おっと、空天ちゃん、まだまだあるぜぇ。これは、男の男を一人前の真の男にするお薬も追加でプレゼント。持続時間が長いぜぇ。」

こいつ、本当に俺のことをわかっている。いや違うな、男は下ネタに弱いのだな。ありがたくもらっておこう。

そんな俺たちを不思議そうに見るのは俺の妻だが、男二人は楽しそうに小声で語り合った。

優雅にもらったものでホクホクのまま、優雅の娘、輝夜姫に会った。「夜」という名前が繋がるところに、咲夜との繋がりを感じてしまう。親子というものは、血も争えないと言うが、嫁の名前も似るのだろうか。帝の娘だからか、六歳にして美人になるとわかるほどの美貌を持っていた。末恐ろしい者だ。権力が集まる所の娘は美人が多いが、多分、優雅の娘は絶世の美人になるだろう。そんな子が龍閻の嫁に来るんだ。親としては嬉しいものがある。

そして、家に無事に帰った俺と咲夜は、優雅からもらったお薬で超絶熱い夜を過ごしました。


七話を読んで頂きありがとうございます。

今後とも邁進していきますのでブックマーク、感想やコメントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ