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神代の贈り物  作者: 火人
二章 獅子を喰らいて成長せよ至る戦場までに 神託の月編

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四十八話 自然の厳しさは狂人を強くすると同時に生き辛さを見せつける

幼くとも騎士として忠義を見せてきた少年は、我ら皇族にとってかけがえのない宝物である。その少年が多彩な才を見せているのだから、私もこの子に敬意を示すに値する……しかし


「可愛い」


私は、彼の頭を撫でる。馬車の椅子に座りながらも眠っている少年のために膝枕をしている。


「スー……スー……」


この子は、とても寝相が良く、寝息も静かだ。少し違和感というのか、騎士の在り方と表せば良いのかわからないが、龍閻くんの手には剣が握られている。癖なのか、邪魔にならないように持ち手を握っている。しかし龍閻くんは、成長している。体は鍛えられて逞しくなりつつあるが、子供のように可愛らしさがあるのだから、つい撫でてしまう。この高鳴りと愛情は、母性であり、別のものも含まれていることがわかる。しかし……龍閻くんは、私好みの男になりつつある。願望を抜きにしても、女性から見たら魅力的に見えて仕方がないと思うわ。


「本当に可愛い子」


そんな言葉が漏れてしまう。この空間が永遠に続けば良いと思えるほどに落ち着くし、幸せを感じる。今までの人生で感じたことがない幸福感をくれるこの子が「天使」に見えるほどに……大袈裟ね。でも本当に癒される。馬車の扉が開かれて、ジャンヌが現れた。


「お母様、そろそろ移動するそうですよ。」


「そう……教えてくれてありがとう」


ジャンヌは、椅子に座ると龍閻の寝顔を見て、少し複雑そうな顔を浮かべる。


「龍閻は、死んだように寝ていますね。」


「そうね。この子は、一度眠りについたら全然起きないですから」


「……」


「ジャンヌ……もしかして膝枕してみたいのですか?」


「へ⁉︎、いや……そんなっ!」


「慌てて、貴方も可愛いわね……でもまだ無理ね。」


「何でですか?」


「体が大人の女性になっていないからですよ。龍閻くんは、幼い年齢でも普通の子より成長が早いですから、後二、三年後ならちょうど良くなると思いますよ。」


「……わかりました。」


「そう言えば、最近、成長痛や生理は大丈夫ですか?。」


「胸の方は少し痛い時が多いですが、生理は軽い方なので平気です。」


「なら良いわ。無理に我慢しなくて良いのですよ。」


「はい」


そうやって、少し親子らしい談笑をしながら馬車が動くのを待つ。馬車にホルテンシアも入ってきたが、彼女も付き合いが長いので同じく談笑する。この空間は、やはり安らぎをくれる……これもきっと「この子」がいるおかげかもしれない。昨日は、ジャンヌに真実を打ち明けたせいで少し心配をしていたけれど、ジャンヌが元気そうで何よりです。きっとこれも……本当にこの子に巡り会えて嬉しいわ。


少し時間が経った後に、馬車が動き始めた。目的地までには、まだまだ距離がある。推測で言えば、明日の昼にはラティウム領につく。それまでには、この窮屈な馬車に居なければならない。本来なら転移で行きたいけれど、公式の場でそのような礼節を乱すような事を皇族ができないために、このような見栄が必要なのは、やはり違和感を持つ。しかしこの旅も、なかなか悪くはないと思える。


「!」


時刻が昼を指す頃に、馬車が急に止まった。周りの騎士達も混乱しているように見える。


「どうしたの?」


「今確認しますので、皇后様とジャンヌ様は中にいてください。」


ホルテンシアが馬車の扉を上げると、騎士達が混乱状態にいた。


「隊列を組め、慌てるな!」


「どうしたのですか、騎士様方?。いきなり止まるとは……え?」


ホルテンシアが騎士達に注意をしていたが、騎士達が目線を向ける所に目を向けた。それは、あまりにも嫌なものだった。想定はしていたが……実際に起こると、恐怖が本能に刻まれているのか、震えてしまう。それは、「魔獣」だ……前方の騎士達は、踏み潰されて血溜まりと肉片に変えられている。その魔獣は、大きな三本角と首を守るために発達した無数の中小の棘が生えており、頑丈な鎧のような鱗が覆うドレイク(地竜)が立っている。一人の騎士が震え声で呟く。


「何でこんな所に「トレキュラ」がいるんだよ。」


ホルテンシアは、状況を把握し、皇后とジャンヌに声をかける。未だに眠っている龍閻に多少苛立ちを覚えたが、


「皇后様、ジャンヌ様、逃げましょう。早く外に」


「えぇ、聞こえていました。早く」


相談の声を遮るようにトレキュラが吠える。


「ブォオオオー!」


トレキュラの声が終わると、騎士達の悲鳴や絶叫が鳴り始める。命の危機が近くまで迫っている時に、龍閻がゆっくりと起き上がる。静かに、しかしその顔はとても不機嫌そうに剣を握り、ホルテンシアを馬車の中に入れて外に出たのだ。


――――


あぁ……寝起きが最悪。夢の内容は覚えてないが良い夢じゃなかった気がするし……無理矢理起こされた気がする……この不快感は、何だろう。というかイライラする。俺は、そのまま馬車を出る。


「五月蝿い!、こちとらぐっすり気持ちよく寝てるんだぁ!、騒がしするなら……ナニコレ?」


俺が見ている光景は、変な化け物が騎士を殺している光景だ。何人かは、踏み潰されて殺されているし、角に突かれて胴体に穴を開けて死んでいるヤツもいる。


「金時、どういう状況?」


「若!、何しているんですか、魔獣が出たんですよ。」


「ならさっさと殺せよ。」


「今の状況を見て言っていますか?。」


「うん」


「この狂人!、早く戦闘してください」


「テメェも言えねえだろうが、傍観者決めやがって」


俺は、とりあえず金時を殴る。何故って、金時はハルバートを構えているが、馬車の近くにいるだけで攻撃しようとしていないからだ……いや、正しいのか?。眠いしイライラして脳が正常に動かん。


「ブォオオオー!」


「チッ五月蝿いなぁ……金時、特攻行ってこい」


「死にますって!」


「イケるって、大和魂を見せて来い」


「嫌っすよ」


「俺は、疲れてんの……面倒ごとは、嫌なの」


「寝起きの若、腹立つ。何でこんな状況で平然としているの」


「似た事が一回あるから耐性がついているのだろう……多分」


「何を言い出すのですか!」


騎士達が勇猛果敢に化け物に攻撃をしているが、全然ダメージを与えられていない。これは、シンプルに弱いとかじゃなくて、混乱して攻撃をしているため、本来の攻撃をできていないのだろう。つまり無駄死にをしている……バカなのか?。


「金時……お前は、右横から攻撃しろ。俺は、左側の肉が柔らかそうな所をもらう。囮は、勝手にやっている奴らに任せるわ」


「え!、あ、はい。」


とりあえず馬車のジャンヌ達を逃すのが先か?。いや、先にした方がいいな……肉壁があるうちに。


俺は、馬車の扉を開ける。


「三人ともとりあえず出て。」


「えぇ、わかったわ龍閻くん。」


「わかった。」


「大丈夫なんでしょうね、龍閻ちゃん」


三人を馬車から出した後に、草むらに誘導する。軽く急がせた上で……三人が隠れたのを見てから、多少ゆっくり化け物の横に移動する。奴は、前の騎士達に夢中なので、こちらに気づいていない。


「金時、殺れ!」


金時は、俺の声に反応し、ハルバートを持ち突進していく。


「ウオオオオ!」


間合いに入ったのか、金時はハルバートを上段にあげ、大きく振り下ろす。化け物の横腹が大きく切り裂かれ、血飛沫が舞う。


「ブォオオオー!」


相当痛かったのか、化け物は前の騎士へと行っていた攻撃を止め、金時の方に気を取られるが、体は動かせずにいた。その隙を俺は狙う。

肉体強化ブースト”を発動させて魔力を纏う。そして十束剣を抜刀し、刀身に魔力を纏わせる。


「フゥー」


息を吐き集中する……殺意と、今回は怒りを乗せる。俺は、無理矢理起こされて不機嫌だからだ……。


俺は、駆け出す。金時や他の騎士共と違い、雄叫びなんぞ出さない。ただ狙うのは、棘みたいなのがたくさんある首を狙う。最初は、突きでやろうと思ったが……殺せられる気がしなかったからやめた。コロッセオで作り出した突きを「斬撃」に変える。刀身に己が魂を乗せる。そして今の怒りをぶつける。


十束剣を上段に構え、速度と体重を全て乗せた一刀が、化け物の首に入る。


「"

      神

            “」  


轟音と共に、血が混じった土煙が立ち、その威力のあまり、衝撃波による強風が広がる。我ながら、まるで雷が落ちたような威力がある。化け物の首と胴体を綺麗に分かれさせることができた。俺には、一滴も返り血が付いていない。何故そんな事になっているかわからないが……


「眠いし……腹減ったなぁ」


「若!、凄いです。新たな技ですか?。」


「多分なぁ……わからんが」


「龍閻くん!」「龍閻!」


金時とどうでも良い会話をしていたら、エイレーネー様とジャンヌが近づいてきた。


「大丈夫?、怪我してない?」


「龍閻くん、本当に大丈夫?」


二人は、俺の体が怪我をしていないか触って確かめようとする。ホルテンシアさんは、俺を一旦放置して、怪我をしている騎士達の治療に当たっている。あの人は、凄い。今やるべきことを理解して即座に動けるのだから。しかし……今更ながら「ここ」嫌だ……段々と眠気が覚めていき、周りから感じる気配?……違和感を感じる。ここを離れた方がいい。


「ジャンヌとエイレーネー様は、馬車に乗って」


「え?、何で?」


「そうよ。今やる事は、治療や死体を」


「そんなことはどうでも良いから早く。」


「若?」


「ここから離れよう……嫌な感じがする。」


俺の目は、とある木に独特の傷を見ていた。生物がつけたような、自然にできるものじゃない傷が、複数の木につけられているのを。


怪我人の治療を程々にして移動した。今回の戦いで死亡者数15名、怪我人7名が出た。怪我人は回復魔法で完治しても、最初の50名から35名になった。


ある意味、この世界で生き抜く厳しさが明確に見えた気がするが……何で大抵、俺の人生は突然に面倒ごとが落ちてくるのだろう。まぁ、適当に考えた新しい技「激神げきしん」が生まれたので……良いか?。


四十八話を読んでいただきありがとうございます。

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今後の神代の贈り物を楽しんでください。

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