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神代の贈り物  作者: 火人
一章 空虚な子は新天地に立つ

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二十話 少女の悩みと少年の無駄な野心

銀の薔薇は、揺れる。小さな体に似合わない大きな地位と使命を乗せて、愛を貰えど埋まらない不安は、きっと永遠なものだろう。彼女は、理想を抱くことでしか不安を拭えないのだ。白馬の騎士に守られて初めて、彼女はこの運命を受け入れられる。


神聖アウグスタ帝国は、1000年も続く栄光の国家にして聖なる杯を持つ。この国の皇帝と皇后の間に生まれた子がジャンヌ・アウグスタである。彼女は、腹違いの兄弟姉妹と違い、皇后の一人娘として大きな地位と使命が生まれながらに与えられた。そして彼女自身には、気づかない運命も巻き付いている。


「ジャンヌ様、おはようございます。陛下はお元気でしょうか?もしよかったら……」


「ジャンヌ様、相変わらずお美しい姫様ですねぇ。もしよろしければ我が息子と……」


「ジャンヌ様は、皇帝の娘として上品さが足りませんねぇ……」


「ジャンヌ?……あんな妹なんてすぐにどこかに嫁がされるだろ……」


「ジャンヌ様は、人見知りしすぎる。あれじゃこの社会では、潰れる。」


多くの貴族や他国の王族などと話すことも多いけれど……私を見ているような感じは、しなかった。まるで道具のように……人間という本質ではなく、立場と成り上がるための踏み台のようなものだった。宮殿内でも私は、皇女としての教育をさせられる。皇族らしく、帝国の淑女としての教育が続く。剣術、魔術、マナーに政治学。物心が付いてから、それらの教育を受けさせられてきた。家族は優しくても、周りの期待が嫌いだった。お兄様たちが私を嫌っているし……他のお母様たちも私をどう思っているのか分からない。私が安心するのは、お母様とお父様、そしてホルテンシアだけ……。


「私ってなんだろう……」


私は、2階から庭を見る。そこにいるのは、私がどんな人間かを教えてくれそうな……男の子が楽しそうに剣を振る。楽しそうに見えても彼の目は、何かに囚われ死んでいる……彼の目が悲惨な過去を訴えている。彼と知り合ってまだ三ヶ月程度……私の奴隷……私のナイト。


「……」


あなたは、私の本当の姿を知らない……私は、まだあなたをどう思っているのか分からない。初めて会った時は、なぜか目が離せなかった。会話して、一緒に勉強して、あなたの努力を見てきた。私は、あなたが本当に白馬の騎士となる日を見たいのかな?私の勝手な願望を彼に見てしまう。舞踏会が近いせいで、変な事を考えてしまうのかもしれないが……彼は、誰のために今を生きているのだろう……


「龍閻……あなたは、私のナイト?」


神暦763年 神聖アウグスタ帝国・宮殿

俺は、庭で鍛錬をしていた。全身に魔力を纏わせ身体能力を上げる技術、肉体強化(ブースト)を使っての鍛錬だ。そして十束剣を使った剣術の鍛錬も一緒に行っている。というか、楽しんでいる。木刀と違い、体重の入り方や空気が切れる音の違い、初めての感覚に俺は、魅了されている。


「楽しい……」


本当に楽しい。ブーストのおかげで大人顔負けの力が使えるから、自分が強くなったと錯覚してしまう。


「でも……もっと技術を上げたいなぁ。」


一人で考えて動くのは、好きだ。色々と試せるから……人に見られるのは、恥ずかしいものがあるが、基本一人なので平気だ。そして、男の子なら技を考えてしまうものだ。叫びたくなる技を考えたいが、ただ斬るのに技名を叫ぶのも味気ない。なんて言うだろう……かっこいい何かが足りない。


「龍閻、鍛錬中か。お前は、真面目な奴だな」


後ろから声をかけられる。聞き覚えのある声で尊敬できる男の声。後ろを向くと金髪で癖毛のイケメンがいた。


「スキピオさん」


「なんだ、その凄そうな剣は」


「俺の刀だよ。スキピオさん、魔力操作が昨日よりかは、スムーズにできるようになったからさぁ、次のこと教えてよ。」


「いいぜぇ、なら普通に習得困難な技をお前に伝授してやる。」


「おおっ、本当に?」


「本当だ。魔法師が遠中距離を得意とすることを踏まえて開発された技だ。これには、正式な名前がないが、エンチャントと呼ばれている。物に魔法を付与するエンチャントと同義語だな。魔力を武器に纏わせるからそう呼び始めたか知らないがな。」


「そんな事どうでもいい、早くそのカッコ良さそうな技を教えて」


「……お前も男だな。技を考えていたのか、それでこそ戦士だ。」


スキピオは、持っていた木剣を構える。スキピオの全身に魔力が纏われ、ブーストの状態になる。


「コツは、ブーストと同じで魔力を流して纏わせるが、肉体から別の物体に魔力を流し込むのが難しい。だが、魔力が纏われた武器は、本来の力以上の性能を持つことが可能だ。それは、聖遺物も同じでなぁ、戦闘系の聖遺物は親和性が高いとか噂で聞く。そして、武器に魔力を纏わせた最後のステップがある。」


「長い説明は、後でいい。早く見せて」


「……なんか今日は、キャラが違うな龍閻。まぁいい、最後のステップは、纏わせた魔力をそのまま斬撃や打撃として飛ばせることだ。」


「そして俺の技を見るがいい。戦火の一閃(フルメン・ベッリ)


魔力が纏った木剣をスキピオが横に一閃すると、斬撃が飛ぶ……約10メートルほどで消えたが、力強く、そしてかっこよかった。


「か……か……かっこいい‼︎」


「そうだろう。お前は、自力で答えを出せるからな。手本は見せたぜ龍閻、頑張ってやってみろよ。」


「はい!」


飛ばせる斬撃をマスターしたら、かっこいい技作り放題じゃん、最高――。よし、頑張ろう。スキピオさんにお礼を言おうと思ったら、庭から出ようとしていた。その背中を追いかけたかったが、仕方ない。彼も忙しいんだ。あれでも兵たちを指揮する将軍らしいし。しかし、かっこいい技を見せてもらった。やっぱり技って奴は、いい……なぜって、興奮するから!英雄譚なら必ずある必殺技が最高にいい。俺も……


「よしまず魔力を十束剣に纏わせる所からだ。」


まずブーストを全身に再び纏わせる。そして腕から魔力を増量して十束剣に流そうとする……いかない……できない⁉︎。


「え、嘘……」


スキピオは、簡単そうに……魔力を流し……できない。というか、魔力を十束剣に行かせようとしてもいかない……どうしろって言うんだ―‼︎


「諦めてたまるかぁー……俺は、斬撃を飛ばしてかっこよくなるんだ。」


なんか最初の目標から離れている気がするが、結局同じことに向かっているんだ……。というか、かっこいいアレを見せられて負けてたまるか。俺も技を打って、ジャンヌやエイレーネー様に褒められたい。


「流れろ」


――1時間後――


俺は、地面に仰向けに寝そべっていた。理由は、できな過ぎて心が折れそうだからだ。無念……あんなかっこいいのが簡単にできると思っていました。


「畜生……」


難しい……そう簡単に出るものだったら、みんな使っている。そうだ、簡単に出るものじゃない……当たり前が抜けていた。俺は、ガキだ……って言い訳しても無理だ。だってやりたいんだもん。かっこいいの出したいじゃん。全国のお子さんに同じのを見せてみろ、俺のようになるだろうよ。だってかっこいいんだもん。


「前のステップの武器に魔力を纏わせるが、まずできていない……どうやれば良いんだ?」


スキピオの教育方針は、一から全てを自分で考えさせて身に付けさせるという……放置の果てみたいな教育方針だ。理由的には、俺を将として育てるためでもあると思う。考えることが大切なんだ。別に質問するなとは言っていないし、コツは、先に教えている。つまり、考えて、実際にやってみて、経験を活かし、最善手を身に付ける訓練と見ればわかるが……適当なのが見える。


「さて……どうするか……」


まずは、魔力の基礎を固める。剣術も同じで、無意識になんとなくできるまで繰り返すことが大切なんだろう。しかし、難しいものがある……こんな時にいつも知識をくれる人は……ホルテンシアさんだ。


「思ったならすぐに行動」


俺は、十束剣を鞘に収め、ホルテンシアさんがいる部屋に行く。俺の内心は、一つの野心に突き動かされている。


「絶対に斬撃を飛ばせるようになって、かっこいい技を作ってやる」

二十話を読んでいただきありがとうございます。もしよかったらブックマークや感想、コメント、レビューをお願いします。今後も邁進していきますので応援をよろしくお願いします。

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