3.実父
やっと港に着き船に乗り込む。目新し事ばかりでワクワクするがレヴィの小言も増え…
「エマ起きてちょうだい」
アメリアに起されベッドから下りると、新しい服が用意されていた。施設では巣立った年長者のお古を着る事が多く新しい服を貰った事が無い。初めての事で手が震えた。そしてアメリアに手伝ってもらい新しい服に着替えると…
「サイズもぴったり。ちゃんと商家のお嬢さんに見えるわ」
そう言い髪を結ってくれた。どうやら旅の間は商家の娘の設定のようだ。鏡に映る自分が別人に見え照れくさい。鏡の前で一人百面相をしていたら部屋に誰か来た。アメリアが応対するとレヴィで入室し孤児の私に丁寧に挨拶してくれる。そして
「昨晩はよく眠れましたか。今日は港に移動しモンスリー公国に向かいます」
「港!船!」
山育ちで海など見た事がない私のテンションは一気に上がり、声のボリュームを間違えアメリアが手で耳を塞いだ。慌てて謝るとレヴィが微笑み
「エマは商家のお嬢様の身分です。もう少しおしとやかにしましょうね」
「すみません」
微笑んでいるけど目が怒っているレヴィが少し怖くて俯いていると、イアンが入室して来て庇ってくれる。聖騎士達は礼儀正しく孤児にも優しいから子供達は懐いている。咳払いをしたレヴィがポケットから何かを取りだし、私の手を持って
「これは聖島から出た貴女を護ってくれる御守です。旅の間肌身離さず身に付けていなさい」
「湯浴みの時も?」
そう言うと頷いたレヴィはつまらない質問だと言い眉を顰めた。まだ子供なのだそれ位は大目に見て欲しいけど…無理そうだ。少し反省しているとケイデンが部屋に来て出発を促す。こうして宿を後にし港に向けて出発した。
「アメリア!海だよ」
馬車の窓から海が見えて来た。そして開けた窓から嗅いだことも無い匂いがして来た。アメリアに質問するとそれは潮の匂いだと教えてくれる。川や湖も水が沢山あるがこんな匂いはしない。
「自然って不思議…」
そう呟くとアメリアが世界にはもっと沢山の不思議があると言い、いっぱい見聞きし学ぶように言った。
どんな不思議が待っているのか分からないが楽しみ。だって教会がある島はとても小さく、大人の足で1日もあれば1周できるのだ。そんな狭い世界しか知らない私は今日生まれて初めて島を出る。
ワクワクが治らず浮足立つ私にアメリアが笑いながら
「あまりはしゃぐとレヴィ様に叱られますよ」
「はぁ…い」
こうして生まれた初めて大きな船に乗り初めてこの島を出る。レヴィに許可をもらい甲板から離れていく聖島を眺めていた。港にいる人が豆粒ほどになると一旦部屋に戻る。そしてまたレヴィから色々注意をされる。
「貴女が生まれ育った施設は太陽神フレアが宿ると言われる聖島にあり、破壊神の影響を受けません。清らかな空気に包まれている為、聖島を出ると邪気に当てられ体調を崩す者も多い。だから先程渡した御守りを必ず身に付けなさい」
「皆さんも御守りを付けているんですか?」
そう聞くと他の大陸で生まれ育った皆んなは、免疫が有るらしく平気らしい。フレアの加護が凄い事を知り、御守りを握り締め新たな地に向かうのが少し怖くなった。
すると私の様子に気付きたケイデンがすぐ慣れるから大丈夫だと言い頭撫でた。
聖騎士の大きな手はごつごつしているけど、温かく不安が解消された。
『もし父親がいたらこんな感じなのかなぁ…』
そう思いながら実の親がどんな人なの想像しながら、長いレヴィの話を聞いていた。
「やっと終わった!」
レヴィの話が終わりソファーに寝転がり伸びていると、アメリアがお茶と焼き菓子を用意してくれた。
施設ではあまりお菓子は出ないので嬉しい。早速食べていると
「船は夕方にポルテンという島に立ち寄り、翌朝には一つ目の目的地に着くわ。ポルテンに着いても部屋から出ないでね」
「何で?」
するとアメリアは微笑み部屋を出ていった。深く考えていない私は素直に聞く訳もなく、トラブルに巻き込まれる事になる。
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