1.突然の旅立ち
大きな使命を受けた子供達が、運命を切り開く旅に出る。この世界の未来は私次第?
「嫌だ!何でよ!」
「これは定めなのです。供の言う事をよく聞き、使命を果たし帰って来なさい」
「いやだー」
嫌がる私を供の聖騎士が抱き上げ無理やり馬車に乗せあっという間に馬車は走り出し、生まれ育った施設を後にした。
馬車の中でずっと泣いていたが、誰も相手にしてくれない。泣きつかれ気が付くと眠っていた。
「エマそろそろ起きて。宿に着くわ」
「う…ん」
目を覚ますと車内は薄暗く陽が落ちている事に気付く。この旅の供である神官見習いのアメリアが手を差し出し、不機嫌にアメリアの手を取ると馬車から降ろされる。馬車の前には旅の供である聖騎士のイアンとケイデン、そして神官レヴィが話をしていた。私に気付いたレヴィが歩み寄り
「お休みになり落ち着かれましたか?」
「落ち着く訳ない。だって急に旅に出されたんだよ。それも施設の中で私だけ。意味が分からない!大神官様も何の説明もしてくれないし」
不満をレヴィにぶつけると、レヴィは詳しくは宿で話すと言いアメリアに私を託し先に宿に入って行った。空を見上げると満点の星空。本当は施設で今晩誕生会が行われる予定だった。孤児の施設で暮らす私達は年に一度の豪華な食事とプレゼントを何より楽しみにしていたのに、今朝早く教会から主席神官が来て説明もなく馬車に乗せられたのだ。
不満と猜疑心で尊敬すべき神官に酷い態度をとってしまう。
すると苦笑いしたレヴィが
「エマ。まずは部屋に行きましょう。そして施設の誕生会程ではありませんが、食堂で貴女が食べたい物を注文しますから」
『小さい子じゃ無いのだ。そんな言葉で騙されない』
そう思い警戒しているとアメリアが宥めながら部屋に誘導する。
彼女は教会にある施設で孤児の世話をする神官見習いで、神官見習いの中でも一番私達に年が近く謂わば姉の様な存在。穏やかで優しいアメリアに不貞腐れつつ素直に従う。
部屋は私とアメリアで隣の部屋に聖騎士とレヴィが泊まる。外套を脱ぎ荷ほどきの後に食堂へ向かうと、テーブルに沢山の料理が並び普段口にできない白パンや果実水が用意されていてテンションが上がる。
全員が揃い食事前の祈りを捧げ食事を始めた。怒ったせいでお腹が空いていて一心不乱に食べていたら、聖騎士のイアンと目が合う。彼は教会に属する騎士団の小隊長で寡黙なのは知っていたが、接点も無くほぼ初めましてだ。確か子供さんが私と同じ年だと聞いた事がある。
子供と同じ年だからかイアンの視線は優しくてこそばゆく直ぐに目を逸らせた。そして食事が終わった頃、レヴィが手を上げると給仕の女性がケーキを運んできた。
施設でケーキが出されるのは誕生日と敬愛する太陽神フレアの復活祭の日だけ。年に2回しか口にできない。嬉し美味しくてさっきまでの怒りが何処かに行ってしまった。
お腹も膨れ満足するとレヴィが旅の目的を説明すると言い、レヴィたちの部屋に移動する。
全く説明も無く朝のお勤めが終わると馬車に乗せられ施設を後にした。急すぎて仲間とお別れも言えなかったのだ。
説明してもらわないと納得できない。
大人に言いくるめられない様に気合を入れレヴィの部屋に入る。部屋の外でケイデンが見張り、窓辺にはイアンが立ち外を警戒する。物々しい雰囲気に緊張しているとアメリアがお茶を入れてくれ隣に座った。
「エマ。あそこ(教会)に居て疑問は無かったか?」
「疑問?」
唐突にそう言われ考えてみると…
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