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「また君に逢える気がして、」  作者: 芝永 汰魅
1/1

1-惚

誰もが劇的、感動的な人生を歩め、決断できるものではない。

僕はこの夏休みという1ヶ月の短な期間の中で

そう実感した。


2017年 8月31日(金)

僕の中学生最後の夏休みは終わりを告げた。

泣きながらずっと(うつむ)いている君と共に。

「ごめん。」

僕はその言葉しか吐くことが出来なかった。




・・・

2017年 8月1日(火)

いつものように目覚まし時計が僕の耳元で騒ぐ。


あぁ、今日から夏休みか。


そう、今日8月1日は全国の学生が待ちに待った夏休みの初日。

だが、僕はいつもと何ら変わりない7時20分に目を覚まし、

支度をする。

夏休みと言えど、今年は受験があるので、夏休みの平日の殆どは友達の佐和田と図書館で勉強をする約束をしていた。


「行ってきます。」

僕がそう言うと母が

「行ってらっしゃい、連」

そう返す。

いつもと変わらない会話、いつもと変わらない日常。

魔法や神様なんて存在しない、そんな普通の日常。

僕はこの日々に幸せを感じていた、いつまでも続いて欲しいと願うほど。


いつもと変わらない道を歩き、佐和田と合流した。

「うっす、連。折角の夏休みなのに勉強なんてやめて遊びてぇよなぁ。」


「そうだな。」

僕はいつものように適当に返事を返す。

だらだらと駄べっていると、図書館に着いた。

図書館に着くや、すくに机に過去問,問題集等を並べ、勉強に励んだ。


2017年8月3日(木)


「今日もいるぜ、あの子。」 佐和田が小声でそう言った。

机に過去問,問題集等を並べ勉強に集中しようとする。

だが、僕は勉強に気が入らなかった。

「声かけてみたらいいんじゃないの。」佐和田が笑いながら僕にそう言う。


僕は2日前から

図書室の隣の席で本を読んでいる小柄な女子の事が気になってしまっていた。

色白でショートヘア、あまり陽気では無さそうな雰囲気、今風の言い方をすると陽キャラでは無さそうな彼女


多分、僕は一目惚れをしてしまった。


僕の通っている勅使河原中学校と同じ制服を着ていた。

なぜ休みの日なのに制服を着ているのか、その時は全く気にもしなかった。


僕は内気になり、話しかける勇気が無かったので、その日も結局話かけられなかった。


2017年8月3日(金)


今日もまた、いつものように目覚まし時計が僕の耳元で騒ぐ。

起きる、図書館に行く、いつもと同じ日常の繰り返しだが、

何故か夏休みに入ってから最近は違って思えた。

話したこともない、性格,名前すら知らないあの少女の事が忘れられなかった。

今日も図書館へ行く。

彼女も当然のようにそこにいた。

勉強を始めようとすると、佐和田が笑いながら僕に言った。

「そろそろ話しかけにいけよ。」


「無視とかされたら怖いし、勇気が出んわ。」

僕はそう返した。

佐和田がすぐに僕に言い返してきた。

「お前男だろ、適当に理由つけて声かけてみろよ。」

僕は

「来週になったら声かけてみるわ。」

と適当に返した。

適当に発してしまったが、佐和田は

「来週絶対声かけろよ!」

と割と真剣にとらえていた。


8月7日(火)

土,日,月曜日は家で勉強をしていた。

月曜日は図書館が休館日だったので、図書館に行くことが出来なかった。

なぜか虚しいような言葉に表せない感情になった。

何故こんな感情になったのかは、自分でも大体分かっていた。

図書館に行くのが先週よりも楽しみになっていた。

佐和田の言葉もあり、今週は彼女に話しかけてみようと考えていた。


いつものように佐和田と歩き、図書館についた。

勉強に集中しなければいけないが、ほぼ僕の頭の中は彼女の事でいっぱいだった。

「いってくる。」

僕は佐和田にそう言った。

佐和田は何故か楽しそうに

「行ってきな。」と返してきた。


僕は今の自分には彼女に話しかけられるという謎の自信があった。

「あの、本好きなんですか?」

僕は遂に彼女に話しかけてしまった。


この時話しかけなかったら、どうなっていたのだろう。

僕は未だに考えてしまう。


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