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異世界田舎生活  作者: 桜華
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006.霊草

「シズーちゃん、今日もありがとうねぇ」

「いえいえ、無理しないでくださいね」

「本当に助かってるよぉ。これで午後からも畑仕事が頑張れるさね」


 冬の間である程度の魔法に対して練度上げができた。この世界は文明もある程度進んではいるが、前世に比べるとやはり心もとない。それに、医療に対してもそれは同じことが言える。癒属性魔法が発達しているがゆえに、純粋な医療の発達が未熟なのだ。前世の俺はどうやらそれなりに医療に関心があったようで、医者ではないが医学書を読んだりして知識だけはもっていた。孫や自分の子が医療関係に勤めていたというのが大きいのだろう。

 それもあってか俺と癒属性の適性は高い。おかげさまでこうして村でちょっとしたお小遣い稼ぎができている。俺が今治せるのは裂傷の域を出ていない。しかし、裂傷とは別のちょっとした神経痛や炎症の抑制はできるようになったのだ。大怪我とされる裂傷も時間をかければ治せるし、こうしたご老体のメンテナンスなんかも可能だ。村ではこれくらいができれば重宝される。さすがに軍医なんかになろうと思ったら骨折や身体欠損を治せる必要もあるかもしれないが、そこまで極めるには圧倒的に経験と時間が足りていないのだ。

 それに小遣い稼ぎと言っても金銭ではなく、野菜を一つ貰ったり麦を少し分けてもらうくらいなので、意外と評判がいい。もちろん村人以外には教えないようにとタキ村では全員が認識してくれている。念のため小さすぎる子供には俺が魔法を使えることを伝えていない。伝えて無用なトラブルを避けるのが狙いだ。子供で知っているのはメリアベルくらいなものだろう。

 冬が明けてからというもの、至って平和な日々が続いていた。俺も変わらず森に入っては採取と狩りをしている。メリアベルも同様だ。父さんも最近は忙しくしているのかあまり帰ってこれていないが、便りは届くので無事なのは把握している。

 一つ進展があったとすれば、あの薬草のことだろうか。これは父さんが帰ってきたときに聞いたことだが、あれは俺が住んでいる村と領都を収めている領主に献上されることとなったらしい。


「あれはな、爛華(らんか)とよばれる薬草で、数年に一度しか咲かないと言われているものだ。一種の霊草で、『天薬エルミスの涙』に使われる材料のひとつらしい。天薬は『万能薬エリクサー』を超えると言われる超高級品だぞ。その超高級品の材料なんてそう簡単に見つかるものでもないし、ましてや実に15年ぶりの発見ってことで領都ではちょっとした騒ぎになったんだ」

「ああ、だから領主様に献上したんだね」

「我が子ながら察しがいな。ゆくゆくは国王陛下まで献上されることだろうよ。でもないと面倒な輩がこの村に大挙として押しかけてくる可能性があったからな」

「でもそんな凄いものをタダで献上したの?」

「そんなわけあるか。そこは冒険者ギルドのギルドマスターが折衝してくれてな。こちらが実利を得る形で話し合いはついた。……発見者であり採取者であるシズーには勝手に決めてしまって悪かった」

「いや、それはいいけど……。実利って?」

「まず前提として公的には発見・採取は俺がやったことになっている。これでも色々な依頼をこなすから各地に行っていてな。採取場所についてはぼかしてある。この村に調査隊なんか来られちゃ困るしな。それはいいとして、実利としてはまず俺の冒険者ランクが一つ上がる。金等級に上がるにはなんらかの実績が必要だったんだが、ちょうどよかったな。あとは、こいつとこいつとこいつだ」


 父さんが取り出したのは肩掛けバッグと武骨な短剣の一つ。あとはジャラジャと音のする皮袋。おそらく貨幣がたくさん入っているのだろう。子供の両掌に収まるくらいなので、あまり多くはないがそれも貨幣の種類によると思われる。ただ、俺としては武骨な短剣と肩掛けバッグが気になって仕方がない。


「これはなんなの?」

「このバッグはな、拡張バッグと呼ばれるものなんだ。マジックバッグと似ているが、これは商用利用ができないように加工されている。シズーは採取や狩りが大好きだろう? 籠では不便もあろうと思ってな。特別に用意してもらったんだ」

「拡張バッグ……容量はどれくらいあるの?」

「正確な容量は聞いていないが、大きめの籠10個分くらいらしい。しかもな、バッグ内の時間は限りなくゆっくり過ぎる優れものだぞ?」

「とっても嬉しいよ!」

「あとその武骨な短剣だがな。特殊な効果はない。あるのは、使用者に合わせて成長する、ということだけだ」

「十分特殊だと思うけど……、父さんの使ってる剣も確か一緒だよね」

「ああ。今の俺があるのはこいつのおかげさ」


 父さんが見せてくれたのは一振りの剣。この世界では成長する剣というのはわりとポピュラーな部類に入る。しかし、実用性という観点でいくとやや微妙と言わざるを得ない。なぜなら、最初は市販されている武具よりも数段劣るから。切れ味然り、汎用性然り。それでも根強い人気があるのは、黒曜等級の有名な冒険者が愛用していたり、過去の英雄の何人もが使用していたからである。父さんもそれに憧れて使い始めたのがきっかけであり、今でも成長し続けているというのだから凄い武器なのだ。


「父さんの剣みたいになれるかな?」

「それはシズー次第だな。愛情をもって使ってやれば、その短剣も応えてくれる」

「うん、頑張ってみるよ」

「ああ。なんてってその短剣の基となる骨は――――なんだったかな?」

「なんでもいいよ。貰えただけで、嬉しいからね」

「ふっ、我が息子ながら良い使い手になりそうで安心したよ」


 というやりとりがあった。ちなみに貨幣は金貨が10枚、大銀貨が10枚、銀貨が10枚、大銅貨が30枚ほど入っていた。貨幣を崩したのは使いやすくするためらしい。それにしても、数年に一度の貴重な霊草と言うからもっとたくさんお金をもらってくると思っていたけれど、意外と少ない気がした。いや、金貨10枚は1000万円くらいの価値があるからかなりの金額なのは分かるのだが――――もしかして、俺がもらった短剣に使われている魔物の骨がかなり良い素材なのか?

 成長する剣に使われる素材はある一定以上の魔物の骨が主原料となる。その魔物の等級が高ければ高いほど、武器の成長限界が大きい。父さんも親に無理を言って良いものを買ってもらったと言っていたのを聞いたことがある。それに、父さんが言いかけたままはぐらかしたのは、あえての可能性がある。あまりに凄すぎたら俺も委縮してしまうからね。

 しかし、俺もよくあんな貴重な霊草を見つけられたものだ。また見つけられたらいいなと思いながら森への感謝は忘れない。あんな貴重な霊草を見つけられたのもきっと森からのプレゼントなのだ。今後も感謝を忘れずに森へと行こうと思う。

 最近は氷魔法で生み出した猫と兎を同行させながら森へと向かっている。最近気づいたことではあるが、自律行動している猫は森で自発的に狩りをする。猫特有の敏捷性と身軽さに加え、魔法特有の氷属性を駆使して狩りをするのだ。今のところ狩れるのはビッグラビットと野鳥のは確認できた。いや、十分すぎるほどの戦闘能力を発揮しているのだが、俺が見ていないところで狩ってくるので直接狩りをしたところは 見たことがない。ただ、噛み痕がやや凍り付いているから氷属性を駆使していると推測している。

 俺は転生者であると自覚しているものの、特段のチートは持ち合わせていないと思っていた。だが、近頃はやや自分が異常なのではないかと思うようにはなっている。だって、明ららかにあの猫は強すぎる。しかも自律行動なんておかしい。自律行動というか自由意志というか。ありがたいから問題ないが、あまり人様に見せられるようなものではないのは確かだ。これを知っているのは両親とメリアベルだけ。他には知られないように気を付けないとな。


「そういえば、名前をつけてなかったか」


 召喚獣とも言えない氷でできた猫。最初はただ魔力制御を練習したくて作り上げただけだったが、今ではお馴染みと思えるくらいにはなった。与えた魔力を使い切ると勝手にいなくなる。魔力がなくならない限りは家の中だったり森の中をついてくる。警戒もできるし狩りもできる頼もしい相棒ですらある。メリアベルもそんなこの猫を見て魔法を覚えたそうにしていたが、あの家的にそれは難しいだろう。そんな頼もしい猫に名前を与えていなかったことに今気づいた。さて、前世の猫に似ていることもあり、同じ名前を与えようかとも思ったがそれでは芸がない。氷属性ってこと、さらには強くあれということ、前世のことを忘れないためにも前世の言葉を少し拝借するとしよう。


「君の真名は『スティーリア』だ。よろしくね、リア」


 ラテン語で氷柱(つらら)を意味するこの言葉。氷柱には「強さ」や「繊細さ」という意味も持ち合わせている。繊細で強い氷の猫を表すにはピッタリだろう。名は体を表すというが、この世界の言語ではないからただのゲン担ぎくらいにしかならないかもしれない。それでも心なしかリアが笑っていたように見えるので、きっと気に入ってくれたのだろう。

 リアと共に過ごし、雪も完全に溶けて春の陽気がこの国に訪れたころ、村にも一報が届いた。全く持って嬉しくない報せ。しかし、大人の村人たちは来るべき日に備えていたであろう報せでもある。そう、遂に『戦争』が始まろうとしていた。

 報せを村にいち早く届けたのは俺の父さんだった。常に領都で情報収集を欠かさず、戦争に備えてくれていた。いち早く察知できたのは市場の物価、物資の流れに気を配っていたかららしい。冬に入る前から目をつけていたらしいが、ここにきて国中から食料等の補給品、武具等の主原料の値段がグッと上がってきたらしい。それは相手の国側でも同じようなことが起こっているようで、それが意味するのはつまり戦争だということである。冬前にも戦争特需は始まっていたが、冬前ということもありただ食料の値段が上がっていただけと考えることもできなくはなかった。しかし、今回のそれは間違いなく戦争の前兆とのこと。

 ここのところは魔物の被害も落ち着いており、停戦も明けたとのこと。停戦が明けて戦争がすぐに始まるということは、この国の外交は弱い言わざるを得ないのか。それとも、神国というだけあって宗教的な思想が強い国なのかもしれない。いずれにしろ、戦争というのは不幸な人が多く出る。戦争をやりたがるのはいつの日も利権にまみれ、美味い汁を啜ろうとするようなやつらだ。大概にして身分が高く自分自身が表舞台に立たず、指示するだけ。考えるだけで反吐が出る。

 神国とこの国が接するのは遥かに南であるため、西にあるこの村に戦火が迫ることはおそらくない。しかし、その余波として難民や野盗化した敗残兵なんかが来る可能性が大いにある。この村には一応木柵のようなものはあるのだが、正直言って心もとないと言わざるを得ない。開戦してどれくらいでこの村に影響が出てくるかは不明だが、できる準備はしておいたほうがいい。父さんは冒険者であるため戦争に参加しない。お金もこの間の爛華(らんか)で得たものがたくさん残っているから無理に働く必要もない。というわけで終戦してある程度影響がなくなるまでは村にいることにしたようだ。


「父さん、終戦までどれくらいかかるかな?」

「いろんな筋に聞き込んだ情報によると、この戦争のために大量の犯罪奴隷を導入するらしい。功を立てれば恩赦により奴隷から解放すると約束してだ。ただ、実情は粗末な武器と防具だけを与えて、食い扶持を減らすことが目的らしい。犯罪者と言えど飯は食うからな。戦わせて数を減らそうってんだろ。気持ちのいい話ではないが、合理的っちゃあ合理的だわな。頭のいい奴らが考えそうなことだ・そんなだから、前回よりもはやく終戦するんじゃないかって言われているぞ」

「前回って冬まで続いたんだよね?」

「そうだ。犯罪奴隷たちは早期投入されるだろうから、早ければ夏までには終戦するかもなぁ」


 父さんの言い分ももっともだ。犯罪奴隷を使い物量に物を言わせた飽和攻撃は確かに有効だろう。魔法が発達している世界とはいえ、全員が魔法を使えるわけではない。ましてや銃のような武器ではなくあくまで近接武器や弓による攻撃が主流。となれば今回のこの国の作戦についても理解できる。一定の効果は望めるだろう。

 だが、本当にそう上手くいくのだろうか? 個人的な意見だが、前回の戦争からすでに7~8年が経過しているのだから、何かを仕込むには十分すぎるほどの時間である。そもそも、なぜ神国は王国に攻め込んでくるのかすら俺は知らない。父さんに聞いてもいまいち理解していないようだった。

 嫌な予感がする。ここの領主は無能ではないと思う。だが、国王やその近辺の貴族はどうだろうか。停戦をさせることができたのには何か理由があったのだろうか。気になることは多いが、辺境に住む子供の俺にとっては考えるだけ無駄な事案である。


「シズー、そういえば明日で6歳だな。こんな時に戦争が始まらなくったっていいのに……」

「仕方がないよ、父さん。それにもう誕生日のお祝いはすでに貰ったようなものだから」

「いろいろ落ち着いたらきちんとお祝いしような」

「うん!」


 戦争が始まるって時に暢気に誕生日を祝うほどこの世界は平和ではない。少し寂しい気もするけれど、戦争が落ちついたらゆっくりと祝ってもらうとしよう。すでに成長する短剣と拡張バッグを貰ったのだから、プレゼントも満足である。母さんにはなにも恩恵がなかったが、貨幣を大量に獲得できて嬉しそうだった。母さんは予想以上にお金が好きらしい。しっかりしている女性である。パテント料で得たお金もしっかりと管理しているみたいだし、我が家は安泰だな。


「父さん、村の防衛機能を少し上げたいんだけど、手伝ってくれない?」

「それは賛成だが、何をやりたいんだ?」


 ワクワクしている父さんには悪いが、かなりの重労働を強いることになる。もちろん父さんだけではなく村の男衆を集めての作業になるだろうが、今からやってもギリギリ間に合うかどうかの作業なのだ。やらないよりやったほうがいいに決まっている。


「村の木柵をもう少し頑丈なものにしたらどうかな? できれば堀も掘れたら最高なんだけど」

「木柵よりも頑丈なものか……。具体的には何がいいんだ?」

「魔法コンクリートが一番いいけど高いよね?」

「無理だな。領都くらい大きな都市でないと採算が合わないだろう。父さんも若い時に魔法コンクリートを使った外壁造設作業は経験したが、えらく金のかかるものだぞあれは。その分得られる防衛機能も折り紙つきではあるがな」

「じゃあ、木壁なんかどうかな?」

「それもあまりお勧めしないぞ。一昔前ならいざ知らず、火矢を射かけられれば逆に苦しい思いをするし、魔法や魔道具で燃やされたりしても同じだ。それに、防衛機能が低いわりに周囲が見えなくなるのが痛いな。櫓を組まないとかえって不利になる可能性すらある。木柵くらいならば燃やされてもあまり痛手はないし、少しの間の防衛にも使えるから費用対効果が高いんだ。だが、堀はいいかもしれないな」


 なるほど。元の世界とは考え方が違うのか。魔法や魔道具というのがあるのはなかなか作戦を練るうえでは厄介な代物だな。コンクリートはお金がかかるし、木壁だと一概に便利は言い難い部分もあると。そもそも、普通のコンクリートではなく魔法コンクリートとというのは魔法に対しても耐性のあるコンクリートのことで、魔石なんかの材料を練りこんで作るため効果になりやすいそうだ。それを村全体に使えれば文句なしなんだけどね。

 なんてったってタキ村は広大だ。村内には空いている土地はたくさんあるが、村全体として見るとそこそこになる。農地をもつ農家が200人と多いため、いかに人力での農耕といえどそれなりの広さになってしまうのだ。今は森と接している部分を除く村全体を木柵で覆っているような状況であるが、これを作るのだってそれなりに労力を割いたと父さんが言っていた。この木柵は前回の戦争を経て最低限の守りを手に入れようということで村全体の事業としてやったことらしい。それより以前はたまに魔物が侵入したりして死人も出ていたそうだ。さすがは異世界。

 では、木柵よりも防衛機能が高く費用対効果が高いものとは何かを考えた。ゆくゆくは絶対にコンクリートの外壁を作るとして、当面の間どうにかできるもの。

 ふと目の前にある木柵に視線を移す。高さは大体1.1mくらい。前世で言うところの歩道や橋梁に採用される高欄の標準的な高さと同等。あれは人が落下しない高さを道路構造令だか防護柵設置基準だかで決まっているものだったが、この世界でもこれくらいの高さが採用されている。もちろんこっちの世界での柵は侵入者の妨害が主たる理由だが。妨害か。


「父さん、村の木柵のさらに外側にもう一層木柵を作ったらどうかな? それも高さを2mくらいで」

「さらに木柵を?」

「うん。高さを上げれば侵入難易度は上がるでしょ。しかも外側に配置することで村の広さが損なわれることもないし、なにより威圧感が出るよ」

「なるほど……。さらに外側に堀を掘れば安全性も増す、か」

「そういうこと! ゆくゆくは魔法コンクリートがいいけどね」

「森の部分はどうする?」

「そこは敢えて開けておく、っていうのはどうかな?」

「経路を限定する、ってことか」

「そういうこと!」

「――――うん、悪くないんじゃないか? 俺の息子は賢すぎて俺の子じゃないみたいだ。さすがはメルティの子だよ」


 知識があるということは考える力もそれなりにあるということ。異世界もの特有の子供らしからぬ子どもって感じがして嫌な気もするが、この世界の子供は総じて早熟。家の手伝いもさることながら、早いうちから責任のある仕事を任される。なんといっても体の成長も早い。この世界の人間の成長速度と地球の成長速度はやや乖離がありそうだ。この辺は異世界って感じがするな。

 次の日から父さんが村長にかけあって村の防衛機能向上の対策が始まった。まずは木を用意するところからだが、高さが2mもある木を用意するのは意外と大変だ。森から切ってこないといけないし、切り過ぎてもよろしくない。間引くことを意識しつつ使いやすそうな木を選定していく。木というのは真っすぐ生えていると思いがちだが、自然に生えた木は結構グネグネしているものだ。植樹して生えた木は真っすぐなものが多いのだが、メルの森は100%が自然木。木を用意するだけで手間なのである。

 当分は木を選定・伐採が続いていく。その間に別の班が堀を掘っていくのだ。水は川から引っ張ってきたいところだ。村の中にも川が走っているので掘ればつなげることも可能になるだろうが、なかなか時間のかかる作業でもある。これは掘り終えた後につなげることにすればいいだろう。堀を掘って出てきた土はとっておき、いつか何かに使う予定である。

 対策は村の出入り口から重点的に行っていく。それとは別に森の中にも警戒のための鳴子を設置したいため、村の女性陣には内職が割り当てられているのだ。村総出で作業に当たっているが、誰一人として文句を言う人がいない。子供を除く全員が前回の戦争を経験しているため、みな必死なのだろう。


「戦争の影響が出る前に終わるといいけど」


 しかし、俺の嫌な予感が消えることはなかった。

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