第82話 5年前 -Ⅱ-
「あれ?しょうとまさはるどこに行ったんだろ?」
その頃、理央は一人で広場に居たらしい。一緒に遊べる友人が俺達しかいなかったために、理央は俺達がこの場に居ないことにすぐに気がついた。
「んー……二人が行きそうな場所……」
……このあと理央から話を聞いた時はビビった。まさか足跡を追ってくるとは思わなかったからだ。
「あっ!!この足跡は二人のものだ!!コ◯ン見といて良かったぁ」
理央は興味8割心配2割の感情で、俺達の足跡を追いかけた。
先生たちがいつそのことに気がついたのかはわからない。だがしかし、時間は掛かるだろう。足跡を見つけたとして、まともに整備されていない道だ。絶対にどこかで途切れているし……
あれっ?ならそれこそ何で……
「まさはる居たぁー!どこに行くの〜?」
理央は……俺達の居場所がわかったんだろう?
高校生になった今、良く考えてみればホラーだ。まさか気配探知系の特殊魔法でも会得していたのだろうか?
「理央!?危ないからついてこないでほしかったんだけど……」
「え?そうなの?そんな感じしなかったけど……」
「心配すんなよ!!俺がいるから大丈夫だ!!雑魚は黙ってついてこい!!」
クソガキ感あふれる小4の衝は、そのまま宛もなくズカズカ進んでいった。
初めてであった頃からこうだったから、本当に心の底に根付いた性格何だと思う。
というか、コイツらこのときまで、境界事変で死にかけたこと、忘れかけていたんじゃ無かろうか?
◇◇◇
「……ねえ……もう帰ったほうがいいんじゃ……」
「えー?まだ始まったばっかりだぜ?」
流石に不安を感じたのか、理央がそう衝を制止したが、衝はまだまだ先に進むつもりであった。
「そうだよ……もうそろそろあっちも集合がかかる頃だ。今戻らねぇとまずいんじゃないか?」
「……わかったよ、つまんねぇなー」
そう言って衝はUターンして、来た道を引き返し始めた。幸い、その道はそこそこわかりやすかった。
だけど、まるでタイミングを図ったかのように、嫌な気配を背中に感じたのを覚えている。
「…………あ……」
「いや……何でここで出るの……」
イノシシのような、だけどイノシシよりも遥かに大きくて、こちらを獲物としか見ていない獣の眼。
魔物だ。
◇◇◇
動けなかった。当然だ。魔物の怖さなんて、嫌と言うほど知っている。
だけど1つだけ違うのは、守ってくれる人はここに居ない、ということだった。
心の防衛作用で、深くに埋められていたトラウマが、ダイナマイトで一気に掘り起こされたような感覚だった。
(助けてくれる人なんて居ない、今から逃げても間に合わない、戦わなきゃ!でもどうやって!?わからないわからないわからないわからないわからないわからない)
ずっとそんな考えが頭の中でぐるぐるして、小学四年生の脳を焼いていた。
このときだったんだ。守りたいって俺の意志が、勝手に形として現れたのかもしれない。
「グウォアアアアーーーッ!!」
もうヤケクソだった。死にたくなかったから。
音が消えた。
――――――…………
「……はるっ!!まさはるっ!聞こえる!?」
「り……お……?」
「良かった、生きててよかったよぉ……」
俺は気絶していた。なんでかはわからない。多分膨大な魔力を小さな身体に無理矢理に通したから、その反動だろう。
そして、最初に見えたのは、理央が眼の前で泣きじゃくる顔だった。
「魔物は……」
「まさはるが吹き飛ばしてくれたから、もう倒せたと思うよ」
その言葉を聞いて、俺は不思議な気持ちに浸っていた。
自信……というのか……安心したというか……。
「見つけました!!3人です!全員無傷です」
「魔物の死体は回収出来たのか?」
「はい!奥に倒れていたのを回収いたしました」
それからすぐに、救助隊と思わしき人がやってきた。俺達はその人たちに連れられて、元の場所に戻っていった。




