第79話 独りだけで
その日の夕方、俺は寮に帰ってきてから、すぐにベッドに座り込んだ。
俺の身体には、今になって極度の疲労が襲いかかってきた。身体的な疲労というよりは精神的な疲労だが、考え事しているだけでこんなに疲れるものだろうか。
「もう疲れたしこのまま眠るか……でも、ゴールデンウィークもそんなに長くはないしなぁ……せめて星姫に会うかどうかくらいは決めておきたい……」
もう、今日はお見舞いに行かないほうが良かったか……いっそのこと命令くらいは強い口調で言って欲しかった。お願いされただけなのにとんでもないプレッシャーだ。
「この話を聞いて、躊躇わないやつなんてこの世にいないだろ……もうこのまま寝落ちしちまうかー、一晩眠ればいい案が出てくるだろ……」
俺はそのまま、ベッドに倒れ込んで、そのまま眠ってしまった。
◇◇◇
――――――…
――――――……
――――――………
これは夢だと、俺は確実に分かっていた。
『■■■■■様、ありがとうございました』
全く知らない夢の中での物語、その笑顔にどこか親近感を覚えたのだ。
『わたくしは、あなた様に、ずっと付き従って行くと誓います』
不自然なほどはっきりと、声が聞こえる。だけど思い出せない。
俺は今、どんな存在なのだ?
この風景はなんだ?
これは一体、誰の記憶なのだ?
わかるのはただくっきりと浮かび上がる、夢の輪郭。
俺は、独りだ。
◇◇◇
不意に目が覚めて、俺は自分の部屋の天井を見た。随分と熟睡していたらしい。もう外は真っ暗だった。
「……今、何見ていたんだ?」
さっきまで明確に見ていたはずなのに、靄がかかったように思い出せない。いつもは印象に残る夢を見たら、朝食食べるまでは覚えているのだ。
依然として凄い眠気が身体を襲っているため、夜ふかしする羽目にはならなさそうだ。
それはそれとして、頭の中が少しスッキリしたような感じがする。
「今は……0:30か……今電話掛けるのは駄目だな、常識的に」
俺は今、何となく星姫に会いたくなった。もしかしたら、星姫の夢を見ていたのかもしれない。彼女に興味はあんまりないが、その映像を記憶出来ていないのが悔やまれる。
「……興味はないはずなんだけどな……何か不思議な感覚だな」
――――――……
――――……
――……
朝が来る
◇◇◇
いつも通りの朝の時間、島江正治は朝食を食べて、歯を磨いて服を着替えて、自分の椅子に座ってスマホをいじっていた。
星姫に連絡しているようだった。
「あとは……連絡返ってくるの待つだけだな」
そう、これはいつも通りの日常。
何もおかしなところなんてない。
「ゆっくり待っているか。少し不安だけどな」




