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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第3章 星の魔術師編
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第73話 水面下の躍動

5月1日


「やっと本性表したね。さっさと白状しなさいよ。自分の正体も、何もかも」


「そうねぇ、じゃあ、最後に教えてあげる。私の正体と、その目的を」




◆◆◆


時は遡り、4月30日 池袋


――――――――


◇島江正治side




「ついてくるんですか……?」


「ま、まあ……観光地に行けば話題とかも見つかるでしょうし!」


やることを終えて、フリーになったはずの星姫だが、今度は俺についていくと言い出した。


何なのだ?一体俺のなににここまで興味を惹かれたのだ?


「それでどこに行くんです?」


「あ、ああ……浅草の方にでも行こうかなと……」


「そこなら私が案内できますし、迷う心配はないですよ~!」


俺は断りきれずに苦笑いして、は、はい、と、勢いに載せられて承諾してしまった。


(あそこでこいつを助けるべきでは無かったのか……?)


俺はかなり直近に過ぎ去った、マルチエンディングのゲームの、エンド分岐の選択肢みたいな出来事を思い浮かべて、心のなかで頭を抱えた。




◇護月美空side


『防犯カメラの映像と照合した結果、一人の少女にたどり着いたわ。名前は神野星姫、年齢は15歳で、学校には通っていないわね』


「それだけ分かれば十分よ。ありがとう、亜紀」


その日の昼間、私は平都中央駅で亜紀と電話で話していた。


ついに、ついに見つかったのだ。これでやっとスタートラインに立つことができた。


70人近く殺してきた殺人犯を捕まえる目処がやっと立ったのだ。


『行くのはいいんだけどさ、無茶はしないでよ。仮にも69人殺しているんだから』


「大丈夫よ。私が帰る頃には全部終わっていると思うから、あなたはゾンビ事件のことでも調べてて」


そう言って、私は電話を切った。乗車予定の東京新幹線は、あと三十分後に出発する。


私は座っていたベンチから立ち上がる。


(絶対に逃さない。東京の地で確実に捕まえてやるわ)




風を操る一人の魔術師は、ついに動き出した。




◇神野星姫side


「見つけた」


「何だぁ?誰だよてめぇは。ぶっ殺すぞ」


呪符を持った右手に魔力がこもる。呪符は焼き切れ、弓矢の形をなし、彼女はそれを思い切り引く。


一人の男に向けて。


「お、おい!?」


「『射手(いて)座・閃星』」


眩い閃光が薄暗い路地で一層強く光り、遅れて大きな音が鳴り響いた。防音魔法によって、外部に音が漏れることはない。


「……なんのつもりか知らねぇが、俺に手ぇ出すってことは、何を示すか知っているんだろうな?」


「私には関係ない。悪いけど、死んで。今ここで」


少女は2つ目の呪符を取り出し、再び魔力をこめる。




「『(さそり)座・凶星』」


その瞬間、彼女の右腕がサソリの尾のような形状に変化し、そのまま男の胸の中心を捉えて突き刺さった。


「ガッ!?防壁を!?」


『この程度でうろたえているようじゃ駄目ね。魔法構築も乱雑、それじゃあ防げるものも防げないわ』




「てめえ……誰だ……よ……?あのガキじゃええあ……お?」


『あら、もう呂律も回らない?意外と毒のめぐりが早いのね』


男の目に見えているのは、サソリの尾を突き刺した少女ではない。


それとは別の、何者か。


『初手の攻撃は防げたからいい線行くと思ったのだけど、期待外れだったかも』


「あ……あぁ……」


男は膝から崩れ落ち、命を落とした。




◇◇◇


神野星姫の固有魔法、『星の軌跡ステラトラジェクトリア』は、星座をモチーフにした能力だ。


射手座は一直線の高火力攻撃、蠍座は猛毒のおまけ付きの刺突攻撃、オリオン座は怪力と、水面を歩く能力の付与など、多様な能力を操る。


最大の効果を発揮するには、夜空の星をなぞる必要があるのだが、魔法刻印を用いて発動しても、その効果は十二分にある。


「これで69人目……残り31人……」


『なかなかいいじゃない。これなら100人もすぐだと思うけど……一つ、良い提案をしてあげようと思ってね』


「提案……?」


それを聞いて、星姫は顔に疑問を浮かべる。


『今日、東京(ここ)に来たときに出会った少年が居たでしょう?その子は特別よ。彼が一人殺せれば、他の31人は見逃してもいいわ』


「っ……何でですか?」


『別に嘘をつかないなんて契約は結んでないから黙秘するわ。別にいいのよ。このまま31人殺しても』


トロッコ問題だ。特別な少年一人を殺すのと、普通の人間31人を殺すのどっちがいいか。


……星姫は、正直なところ、あまり人を殺したくは無かった。仕方ないと自分に言い訳して、これまで何人も殺めて来たけど、一人で済むならそれに越したことはないと思った。


だから、


わかりました、と、彼女は言った。

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