第71話 光明院亜紀
「……困ったなぁー……どうやって見当をつけようか……」
とある大学のキャンパス内で、フードのポケットに片手を突っ込んで、もう片方の手でスマホをいじくっている女子大学生がいた。
護月美空と同じ、大学2年生である彼女は、重ねて美空と同じ自警団に所属している。光明院亜紀なんていう仰々しい名前とは裏腹に、やや無気力な雰囲気の人間である。
美空から、連続殺人事件の犯人捜しを依頼されている彼女は、犯人のターゲット層や、移動予測などから犯人を探っていた。
「何で私がこんなことしないといけないのかなぁ……私はどちらかと言うと戦闘が得意なのに」
亜紀の固有魔法『座標展開』は、座標と、数学の計算式に基づく様々な効果を発動させるものだ。デフォルトでは彼女自身が原点となって、それに基づいて展開されるが、ある一点に固定したり、他の対象物に定義したりすることもできる。
その座標系を用いて、精密な瞬間移動、関数を使って空中に魔力の軌道作成、2点間の距離や、1点の座標の特定まで、多様な能力を包括的に操る、概念型……のようで、実は複合型の固有魔法だ。
複合型であるので、かなり応用も幅が効くオールラウンダーな力だが、唯一の欠点としては、扱うのには卓越した空間把握能力と、瞬間的に答えを出せるレベルの数学力が必要となる。
もちろん、犯人を特定することだって容易であるし、やろうと思えばすぐにでもできる。既に下準備は済ませていて、被害者には申し訳ないが、あと1,2回くらい事件が起こってくれれば、特定できるはずだ。
「分かれば、美空ちゃんが速攻で殴り込みに行くだろうなぁ。こないだの仕事が、イレギュラーがあったとはいえ、失敗に終わっているから、この案件に躍起になっているんだもんなぁ」
あの時、総理大臣はドラゴン騒動に巻き込まれたか、そこら辺で野垂れ死んでいたのだ。政治に対して興味も期待もない亜紀は、ご愁傷さまとは思っていても悲しいとは思っていない。日本の中央政界は大混乱らしいが。
「とりあえず、犯人Xはさっさと次の事件を起こしてよ。じゃないと正体をバラせないじゃない」
◇◇◇
4月30日、翌日だった。もう一人の被害者が、関東地方東京市練馬区で見つかった。
正確には自分で見つけたのだが。
(マーキングした対象の生命反応が不自然に消えた……裏路地だから、交通事故って線はなさそうね。そもそも車を運転していそうな人物は引っかかんなかったし、遠距離からの異常な魔力反応もなし、一番近くにいた奴にマーキングして、動点Pと定義して軌跡を確かめるか)
ここまで分かればあとは簡単だ。移動した軌跡上にあった防犯カメラなどから、該当人物を割り出せばいい。
「そのくらいなら、すぐに終わるね。犯人がわかったら私が直接行ってもいいけど、仮にも69人殺しているから、美空ちゃんに行ってもらったほうがいいかな」
やっと尻尾を掴むことが出来た。あとは美空に伝えて、私の仕事はおしまいだ。
事件解決に向けた道のりが開けてきた。




