第66話 清州平阪
平阪地方清州市・清州平阪駅近辺
「やっ、やめてくれ!!俺が何をしたっていうんだ!?」
推定死亡時刻、午後6時。
連続殺人事件の68人目の被害者が確認された。
その情報を基に、私、護月美空はここに来て、歯ぎしりをしていた。
(何でこんなに被害者が出ているのに犯人の尻尾すらつかめない!?68人も殺していたら、絶対何処かでボロが出るはずなのに!?)
犯人はもう逃走したあとだろう。”犯人はヤス”とでも書かれていれば良かったのだが、
(今回の犯人、相当やり手みたいね。複数犯だと仮定しても、殺傷痕の類似から全く無関係ってわけでもなさそう……)
年々手段が巧妙化していっている。殺害手段が魔法によるもので、それも殺傷痕が同じとなると、単独犯の可能性が非常に高い。
隆太郎の可能性も考えたが、不思議なことに、あいつはあのドラゴン騒動が終わったあと、首と胴を真っ二つにされた状態で発見された。
何がなんだかわからないが、一つわかるのが、私と同等か、それ以上の強さの者が、抵抗出来ずに殺されるくらいの力を持つ者が、この国のどこかにいるということだ。
「考えたくないわね……やっぱり年々人間も魔物も強さの平均がどんどん上がってる、置いていかれないようにしないと」
◇◇◇
私は、この事件を、複数人のハンターと協力しながら捜査している。
一応警察も関わっていて、機密にガッツリ食いつかない情報なら、結構簡単に提供してくれる。
というか、そうしないと警察側としてもほとんどの事件を迷宮入りさせかねない。
「被害者の共通点は一応分かっている……過去に暴行罪や殺人罪を起こした荒くれ者ばっかりだけどさぁ……正義感が暴走した善人だって可能性を考えたいけど……悪人になら何してもいいなんて思考の奴だったらなぁ……」
私は、駅前のちょっとしたワークスペースで、ノートパソコンに映し出される捜査データを、下にスワイプしながら確認していた。
被害者の共通点がわかっているから、その中の誰かにヤマを張って、現れたところを捕縛するのが一番手っ取り早いが、そのヤマを張るのがめんどくさい。
今シャバにでている暴行犯を、事件が起こっているごく限られた範囲で探すだけでも、何十人単位でいるだろう。殺人とは違って、暴行だけなら犯したやつならごまんといるだろうし、実際、今の時代じゃ結構いる。
「はあ、考えるだけ無駄ね。私は探偵じゃないっての」
私はノートパソコンを閉じて、ワークスペースの外に出る。
清州平坂駅は、新青森から平都中央を経由し、新大阪を直通で結ぶ、中央新幹線(旧東北新幹線含む)の駅があることもあって、スーツケースを持った人々もたくさん行き交っている。
この街、昔の地図に当てはめたら一番近い街が旧福島県郡山市だ。だけど実際は、少しだけその市街地から離れている。
境界事変で地形が変わったというのは有名な話だが、それは何も海岸線だけの話では無く、内部の地形もガッツリ変えてしまった。
日本最大と言われた関東平野は、現在は僅差で1位に負けて2位だ。あと、地面がめくれ上がったせいで、富士山を超える高さの山もいくつかできている。
「私が9歳くらいの時の話だからなぁ……慣れたは慣れたんだけど……」
小学生の頃に必死で覚えた日本地図が全て無駄になったのは、少し頭に来る。
「まあいっか。とりま、犯人の目星をつけないと何も始まらないよね」
私は、平都に帰るため、バッグからスマホを取り出して駅構内に入って行った。




