第59話 平都沿岸の百鬼夜行
「まずいな……あの規模の『境界』だと甘く見積もって超級、最悪災害級もあり得るね」
「あとは、下級〜上級がいっぱいってパターンだよね」
滝尾さんと時雨は、空一面を覆うように広がるその『境界』を見て、そう言った。
色々と面倒な状況になっている今、今度はたくさんの魔物が流れ込んでくることになるらしい。もう日は沈みかけているし、百鬼夜行的なものが起こると言われても不思議じゃないかもしれない。
「……どーすんだこれ」
「そりゃぁ、まぁ、こっちに来たら倒せばいいんじゃ……?」
「簡単に言うなよ。時雨だって一人しか居ないんだ」
「何で全部私が倒す前提なの?」
さて、そろそろ避難指示が出るはずだ。そうなればみんなで揃って地下に逃げることはできるだろうが……
「いかんせん、人手が少なすぎますね。この周辺に居る自警団の人を全員合わせても100人以上はいかないでしょう……上級相手にまともに戦える人に絞れば、もっと少なくなりますし」
この規模での『境界』の同時出現は、境界事変以来、全くと言っていいほど観測されていない。それでも、これが全世界規模で観測されたあの頃よりはマシだが、ここはこの国の首都でもある。陥落したとなれば、世界経済にもとんでもない被害が生じるだろう。
つまり何を言いたいかというと、俺たちが避難して、外の状況を放っておいたら、シェルターから出る頃には日本が滅亡していてもおかしくないというわけだ。
「今度は全く関係ないのに巻き込まれるのか……」
「だから言ったじゃん、私と関わっていたらいろんなことに巻き込まれるって」
「今回に関しちゃお前もほとんど蚊帳の外だよ、時雨」
そう話していると、すぐに『境界』に動きがあった。自分たちの上空にあるものから遥か遠くに見えるものまで、たくさんの魔物が地面に降り立つ。
◇◇◇
「何こいつ、硬ぁっ!?」
『境界』から地上に降り立ったドラゴン、私はさっきからそいつに攻撃を当て続けているが、まるでびくともしていない。
こいつは火竜だったらしい。周囲に放出されている熱がものすごいことになっているせいで、迂闊に近づくこともできない。
「こちらにまで熱が充満してきている。一度風で吹き飛ばしてはくれないか」
「分かってるっちゅーの」
今は隆太郎と一時停戦中で、とりあえず目の前の魔物を、二人でなんとかしようとしている。呉越同舟ってやつですね。
熱の放出はおそらく体表面全体からだ。どこぞの穴から放出ってわけではなさそうなので、そこを塞いで防ぐことはできない。せめて風によって熱をかき消すくらいしかできない。
(魔族は魔力が無限に増大するから、特有の放出器官を使って体外に排出し続けないといけないんだったよね……それがこの熱の原因で、無限に増大するから、魔力切れ狙いの持久戦は意味無し、人間よりも面倒くさいわ)
こいつにそれだけの知能があるかはわからないが、固有魔法も警戒して置かなければならない。
そんな中、
「――――――……さーん!……美空さーん!!」
「えっ、高宮さん何でここに!?」
「俺も居るぞ」
「待って!?なんで二人共ここに居るの!?」
大体自分の右の方から声がしたので、そちらに振り向いてみると、そちらにはなぜかここにいる咲ちゃんと衝が居た。
さてはさっき陸上でドンパチやっていたのコイツラだな。一体何をしに来たのか私にはさっぱりわからない。全部終わったら聞くとしよう。
「……ま、いいや……とりあえず逃げて!こいつおそらく災害級よりの超級だわ!!」
「姉貴は俺を舐めてんのか!?この程度俺が粉砕してやるわ!」
「ストップです衝くん!この殺人的な熱の中に飛び込んでいくんですか!?」
と言っても、気性が荒い衝は、後退という選択肢を採ったことは殆どない。当然今回も……
「俺の魔法は遠隔でもイけるだろうが!まずはその硬い鱗から粉々にしてやるよぉっ!!!」




