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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第2章 魔法同好会編
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第58話 戦場の外

「高宮先輩、どうしたんですか?」


「別になんにもないですよ……多分」


 私がそう聞くと、歯切れの悪い言い方で、滝尾さんは言った。


「もしかして、こないだ言っていた美空さんの仕事の話ですか?」


「そうといえば、そうですね」


 多分その仕事の実行は今日だ。今になって話し合いということはないだろう。


(今は特に影島で異変なんて情報は入っていない……だけどなんか引っかかるね)


 わからない……何かを見落としている気がする。


 情報、情報……?




『デジタルだろうがアナログだろうが、ましてや人間の脳内情報まで取得、改竄出来る人がいるとは思ってもいなかったんでしょ?』




(一人いるじゃない!!自分の好きなように情報を取得して改竄する!そいつが魔法を使えば、指定した範囲の情報を徹底的に隠蔽することだって容易なはず……!)


 私はそう考えた。だが、それを証明するものは何もない。これだとただの妄想だ。


「おーい、時雨大丈夫か?」


「え、ああ、大丈夫!」


 私は、正治君に声をかけられて現実に戻った。


 ◇◇◇


「それはそうと……改めて自己紹介しますね。僕の名前は滝尾快征です。まあ、一回会ったので覚えているとは思っていますが」


「そりゃこないだ会いましたからね」


 一度会ったことがあるので、もちろんバッチリ覚えている。もちろん、理央も時雨も覚えているだろう。


「ね、時雨ちゃん……あれ?」


 理央が時雨の方を向くと、時雨は何かを考え込むような仕草で、心ここにあらずな雰囲気を漂わせていた。


「おーい、時雨大丈夫か?」


「え、ああ、大丈夫!」


 そう時雨は大きく返事をして、俺の方に向き直った。一体何があったのだろうか。


「おー、なんか難しそうな本がいっぱい……」


 そんな俺らの話に全く関心を向けず、周りに没頭する少女が一人、そのつぶやきを聞いた滝尾さんが、ここぞとばかりにそれについてまくし立て始めた。


「お目が高いですね!僕が中学生の頃から集めた魔法学の本に目をつけるとは!高かったんですよーっ!ほら、これとか、これも……全部売ったら何円になるか……売る気は全く無いですけど!あっ!!……ここにははるか昔の歴史の記されたものを現代語訳したものが―――――――――……











 ◇◇◇


 外でカラスが鳴いている。もう空が紫色のグラデーションを映し出す頃だ。


「理央、お前のせいだぞ」


「まさか地雷(いい意味で)だとは思わなかったんだよー」


 俺達は、今の今まで滝尾さんのすごいを超えて恐ろしいまである熱弁を、絶え間なく聞き続けていた。


 しかもなまじ丁寧なおかげで、話されたことは全部脳内に貼り付いて離れない。


「……と、少し話し過ぎてしまいましたね。ところで、高宮さんと連絡がつかないのですけど、何か知っていますか?」


「俺らに聞かれても知りませんよ」


 もう滝尾さんが話し始めてから何時間も経ったが、未だに美空さんのところに行ったと思われる高宮先輩がまだ帰ってきていない。


 そしてもう一つ不可解なニュースが入っている。


 簡単に言うと、総理が行方不明、といった感じだ。


 しかも影島に異常はなし。付近まで行った人も、わからないとしか言わないという。


「本当にわからないですね、総理はいくつもの警察車両にも守られているし、SOSも飛ばせずに一瞬でやられた上に、誰にも気づかれないとは……単純に迷っただけとも考えにくいし……」


 俺達と同様に、滝尾さんも頭を抱えてしまった。だけど、その沈黙を破るように、時雨が言った。


「…………それ、私は一人心当たりがあるよ。多分、正治君は良く知っている人」


「……はあ?美空さんは当事者で、狙おうとすれば当然気が付かれる、衝とか高宮先輩も同様にだ。他に可能性があるやつなんで……」


 俺は、自分が知っている人物を洗いざらい確かめた。確かに動機とかのことを考えれば、いることにはいる。だけど、この二人だって前述の理由から完全にバレずに総理殺害なんて芸当は出来ない。




「……アス・クロマティア。こないだ藪子で私と正治くんが戦ったあの人だよ」


「!?……ちょっと待て、何であいつなんだよ!?」


「戦った……?」


 俺を含めたいろんなところから疑問が飛ぶ。


「アス一人だけでもいいし、複数人と協力しても良い。戦っていて分かったんだけど、アスの固有魔法は、多分『情報操作』、それなら広範囲に情報統制を引くことも可能だとは思わない?」


 情報、と言っても、かなり広い範囲を指す言葉だ。


 だけど、口ぶりからして制限はほとんどなさそうだ。それに、今だとこれしか可能性が思い浮かばない。


「あいつら、また何かやらかそうとしてやがるのか」


 俺は言葉の怒気を強めてそう言った。今回のターゲットは無関係の他人だが、一度理央(親友)を殺しかけたあいつらが、付け上がるのがどうしても許せない。


 俺は別にいい子ちゃんでも無いのだ。




「……待ってください、何か妙な気配が……」


 滝尾さんがいきなりそう言ってガラスの窓から外を見た。


「っ!?嘘だろ……」


 俺達もみんなで外を覗き込んだ。


 今回は、異常だった。




「『境界』……それも多いしめちゃくちゃ大きい!?」




 東州区と同時刻、港河区沿岸にも、『境界』が現れた。

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