第56話 高宮VS油屋
「先輩、俺はこないだ、悪いやつと戦ったんですよ」
「突然ですね!?」
「そいつはなんかくねくねした蛇みたいな魔物を操っていたんですね」
「召喚魔法ですかね……」
「あ、私が殺されかけた時の話だね」
「ころっ……えっ!?」
◆◆◆
「逃げてばっかりかぁ!!?もっと楽しませろぉ!」
「私の固有魔法には下準備がいるんです!」
私はいくつもの御札を周囲にばらまく。強度面に不安があるが、応急処置なら十分だ。
(まずは鬱陶しいこの魔物からです!)
「『覚』!!」
「あ?」
一箇所に寄り集まった魔物が、一斉に光った。私の魔力でマーキングしたのだ。
「『束』!!」
「!?動きが!?」
魔法の鎖で魔物の動きを止め、ついに私の魔法を使う最終段階を完成させる!
「『封』!!」
私はそう唱えて、十数体の魔物を一点に引き寄せ、封印した。
私、高宮咲の固有魔法は『封印』。
対象は無制限で、人間、魔物、通常の動物から無機物まで、魔法刻印を施した御札から一定のプロセスを経て封印する。
この封印はまず破壊不能だ。内側から脱出されるなんてことは、よほど実力差がない限りありえない。
もちろん、外側からも然り、だ。
(奴の同時召喚数に限りがあるなら、もう十数体という数の魔物は出せないはず!制御を強制的に遮断しているから、召喚状態から戻すこともできない!)
私は特殊魔法『瞬間移動』を使い、油屋に一気に距離を詰める。
(くそ、召喚数に制限はないが、さっきのかなり全力だったんだがな……さっきので俺は最大魔力量の2割をドブに捨てたことなるな)
油屋は、再度地中から魔物を湧き上がらせる。召喚数に制限はないようだった。
(さっきの御札は焼き切れてもう使えない、もう簡単に封印を発動させてくれはしないでしょう)
魔物によって距離を取らされた私は、魔物の数を正確に見定め、数にあった御札を取り出す。
私の魔法は御札1枚につき対象一つが原則だが、無機物になるともっとややこしくなる。
(今回は油屋も含めた対象8体、いける!)
私は、油屋や魔物の目の届かない場所に、御札を飛ばす。
「させるわけね〜だろ!」
油屋は、即座に魔物の方向を転換させ、御札を1枚ずつ丁寧に処理していった。
だけど、そのおかげで油屋に隙が出来た。
「『エレメンタル・エレクトロフォール』」
腕を上から下に振り下ろし、雷のような電撃を、油屋の上に落とす。
「っち!」
油屋は、とっさに魔法防壁を展開し、私の攻撃を防いだ。
だけど、油屋はすぐに体制を立て直し、周囲に分散していた魔物を、一気に私の方に向かわせてきた。
「まずっ!」
グロテスクな口が近くに迫る。もちろん魔法装甲で防ぐが、それでも隙が出来るのは必至だろう。
しかし、私にあたる直前で、足元に違和感を感じた。
これは、地震だ。
だけどなんだか違う。地震にしては振動の振れ幅が小さくて早い。
スマホのバイブレーションの上に立っている感覚だ。
揺れが収まる。
「お前が、理央と正治に手ぇ出したって馬鹿か。クソ姉貴もきな臭けりゃ、その周りにたかる奴らもきな臭えな」
◆◆◆
「あいつは今頃お仕事か」
俺は、寮の近くのスーパーで買い物をしていて、会計を済ませて寮の方へ向かう道を直進していた。
影島付近でテロなんて情報は入っていないが、それと相反するように、総理の到着が遅れているとの情報も入っている。
「電話でもかけてみるか」
冗談半分に、姉貴に電話をかける。姉貴が電話に出るときは、いつも2コール以内のはずだ。
「……遅いな。つまりもはや恋愛関係に片足突っ込んでいるみたいな姉弟関係なのに、その電話にでられない状況にあると……」
嫌な予感がした。いくら大嫌いな姉だとしても、唯一の家族であることには変わりないし、死なれるとやっぱり精神にもくる。
「多分なにもないと思うが……念のためな、念のためだからな!!」
助けなきゃいけないと、意味わかんねえけど、虫の知らせのような感覚がしたんだ。




