第55話 3 side battle
◇護月美空side
コンクリートの橋桁で支えられた高速道路が音を立てて崩れ落ちる。
それにつながる道路もなすすべなく崩落した。
奴の放つエネルギー砲の、威力は絶大だった。特殊魔法とは違い、蛇のように曲がり、こちらを追跡してくるのだ。
(もう車は影島を出かけてる。そこさえ狙われなければ……)
だけど、そいつだって、それをみすみす見逃すようなことはしない。エネルギー手の中に収束させ、極太レーザーを車が通る橋に向かって放った。
「させるわけ……無いでしょーがっ!!」
風を利用した高速移動で、レーザー到達前に防壁で防いだ。
だけど、今回は威力が段違いだ。完全無力化はできず、流れ弾が橋に衝突し表面をボロボロにしてしまった。
「ちっ……殺すことはできなかったな。だが、道はボロボロ、これ以上先には進めない!」
隆太郎、といっただろうか。奴は諦めることなくエネルギーをチャージする。
「たっ、助けてくれぇぇーー!!!」
車のドアを開けて、総理大臣と思わしき人が慌てて出てきた。
私は驚いてそちらを振り向いた。今この状況で、丸腰の人間が外に出るのは自殺行為だ。
そして、すぐに目の前で光線が発射される音がする。私は空中で体制を整え、簡単に魔力で防護した手のひらで、それを思いっきり弾いた。
「いったっ〜!何でこの人に執着するのかなぁ」
「そいつを殺すのが俺の仕事だ。この魔物どもで溢れかえり、国民の手綱も握れない政府に何の意味があるというんだ?」
「つまり、選挙に行けって話ね。いいこと言うじゃん」
私は圧縮気を一気に解放し、奴を反対方向に押し返した。
◇アスside
隆太郎が出発したあと、私はこの騒動が外部に漏れるのを遅らせるため、魔法発動の準備をしていた。
「機材類もオッケーね。さぁて、始めるか」
私は、パソコンのキーボードに手を置いて、魔力を流し込む。
このパソコンは、情報を表示するための媒体であり、加えて、私の魔法を使うための触媒でもある。
「『広域情報操作・影島JCTを中心とした半径7㎞範囲内のあらゆる情報の流出を遮断』」
私はEnterキーを押し込む。
今、この瞬間を以て、指定した範囲内のあらゆる情報は、完全に秘匿されることになった。
そして、それを知り得るのは私だけ……
邪魔が入ることは、絶対にありえない。
◇高宮咲side
「やっぱり早とちりだったんでしょうか……」
私は、特に何も起こっていなさそうな市街地を眺めた。
魔法を使えば、このくらいの距離はちょちょぃのちょいなので、大学を出発してからここまで10分、早すぎたということもあり得る。
「まあ、なにもないならそれに越したことはな……」
私が、そう言いかけたとき、自分の上空をレーザーのようなものが掠めていった。
考えるまでもなく異常だ。私は再び地面を踏み込んで、影島を目指そうとする。
が、
「魔力反応があったから嫌な予感はしてたんだ。影島には行かせね〜よ!!」
「こいつっ、まさか正治君の言ってた……」
多数の蛇のような魔物が地中で蠢いて、アスファルトの地面を破壊して飛び出してくる。
周囲から破壊音が響き渡り、それらの主が姿を現す。
「なんだ、あいつの知り合いか。話が早くて助かる。
俺がROUNDER戦闘員、油屋暗鬼だ。今回は負けるわけにはいかねぇなぁ!!」
◇護月美空side
JCTで続く高速戦闘は、熾烈を極めていた。
コンテナを巻き上げる異常な上昇気流。
無差別に高速道路を穴だらけにしていくエネルギー砲。
ある場所で爆発が起こったと思えば、次に爆散するのは島の真反対だ。
(くそっ、私の固有魔法じゃ決め手に欠ける!なんとかして隙を作らないと!!)
(無差別にレーザーを乱射しても、なかなか当たらないな。奴の風も考慮した上で軌道を調節するか?)
ビームで総理大臣を狙い続ける隆太郎の意識をまずそらさなければならない。
私としては、あれがやられたらこちらの負けだ。
陸の方でも戦闘が始まっているらしい。遠くに粉塵が見える。
終わりが見えない消耗戦だ。先にくたばるのはどっちになるのだろうか。




