第54話 作戦開始
「隆太郎、調子は出てるかしら」
「問題ない、情報管理は怠るなよ」
とあるホテルの一室で、私と宇津隆太郎は、今日実行する作戦について話していた。
今回、私と油屋はリカバリーで、こいつが実際に実行に移す役割を持っている。
「場所は影島でいいんだな」
「そうよ。おそらく車に乗っているSPの他に、影島には要注意の護衛が一人いるわ。名前は護月美空、固有魔法は風の操作、そいつは殺さなくていい、だけど総理の方は確実に殺しなさい」
「了解した。周囲への損害は?」
「気にしなくていいわ。あたりが更地になろうとも、よ」
それだけ聞いて、隆太郎は窓から外に飛び出す。
「どうなるかしらねぇ。固有魔法『エネルギー砲』、どれくらいの働きを見せてくれるのかしら」
◇◇◇
「えっ、居ないんですか?」
「そうですね。さっき仕事がありまして」
「あ、快征さんだ」
俺達は、とある大学の一室で滝尾さんと話していた。
学校の授業が終わって、高宮先輩に連れられてここに来たが、まさかの美空さんが居ないという事態に遭遇している。
いや、まさかではない。予想はしていたが早すぎたのだ。
「確かにこないだ、仕事があるとは聞いていましたけど……」
「少し事態の進みが早くてですね……あ、すいません。高宮さんは一回こっちに」
「??……一体何だったんだ?」
「一体何があったんですか?」
「少し心配というか……私の特殊魔法『危機感知』が、さっきからずっと反応し続けているんです」
僕は、咲さんにそう話した。
『危機感知』、自分と身近な人々の、近い未来に起こり得る危機に反応する特殊魔法だ。
「……もしかして、護月先輩のことですか?」
「ええ……申し訳ないですが、今から影島口駅まで急行してもらえますか?私の固有魔法は、戦闘に使えるような代物じゃないので」
「分かりました!あの3人をよろしくおねがいします」
「はい」
僕は、扉を勢いよく開けて駆け出していく高宮さんを見送る。
「……どういうことだ……変な感じがする……危機感知は、近いような遠いような……重なり合っているのか?」
僕は立ち上がって、さっき高宮さんが出ていった扉から他の3人がいる部屋に入る。
「何が起こっても問題ないように準備しておこう……」
◇◇◇
「あー……ヒマ!」
私は影島上空で浮遊魔法を使いながら周囲を見渡す。
この小さな島だ。上から見ていれば、飛んで入ってこようが、地上を無理やり強行突破しようがすぐ気がつく。
(あの黒塗りの車が総理の乗っている車ね。結局通過地点だし、狙ってくるとは思えないけど……)
私は、そう信じたが、そんな楽観的な予測は、すぐにでも打ち砕かれることになる。
(っ!!?はるか遠方に魔力反応!標的はここか!)
浜浦半島、そのある一つのビルの上から、黒塗りの高級車を狙った光線が、障害物をことごとく無視して飛来した。
私は浮遊魔法を解除して急降下し、車にあたる寸前で魔力防壁を用いて弾いた。
「遠くから遠距離射撃、ねぇ」
私は、ボソリと呟いて、手のひらの中に空気を収束させる。
「コソコソ陰キャ戦法かましてんじゃねぇよっ!!」
右腕を振り払い、光線の射出元を狙って風の槍を飛ばした。
たくさんのビルの上を掠め、唸りを上げて飛ぶ槍は、ある一つのビルにあたって、その側面に大穴を開けたところで止まった。
「タイマンがお望みか?気性の荒いお嬢さん」
「そうしないと捕まえられないでしょ?」
目にも止まらぬ速さで、さっきの光線の射出元と思われる男性がやってきた。
あともう少しすれば、車は影島を抜けられる。そこまで持ちこたえれば良い。
「さっさと倒さないといけないし、協力してよ」




