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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第2章 魔法同好会編
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第50話 寄り道の話

「いたい……」


「テメェが急に抱きつくからだよ」


 衝の強力なげんこつを喰らい、地面にずり落ちて頭を抑えている美空さんが、絞り出すようにそう言った。


 変態とはいえ、実の姉をぶん殴れる衝の度胸には、俺も少し見習いたいところがある。


「おー……そっちは一体何があったの?」


「俺は美空さんのブラコンの片鱗を見たぜ」


「えっ、ブラコン……?」


 理央は、ドン引きというより困惑したような表情をして、地面に倒れ込んだ美空さんを眺めた。


 理央は俺が衝と話したことは知らないし、俺からも言っていないので、これは理央にとっては始めての話だ。


「わざわざ、こんなところまで寄り道したツケが回ってきましたね。さっさと立ってください」


「そういえば、あなたは一体誰なんですか?」


 俺は、美空さんの腕をグイグイ掴んで、乱暴に引き上げようとしている一人の男性に目を向けた。


「僕は護月さんの付き添いで、同じ大学の滝尾快征(たきおかいせい)です。ほらさっさと立ち上がってください。弟の前で醜態を晒したくないでしょうが」


「敬語なのに言葉遣いがすごく荒い……」


 対応を見る限り、これはいつものこととして捉えて構わないらしい。衝に会うたび抱きついて、そのたびにげんこつを食らうのがお決まりだとしたら、俺はそろそろ美空さんをただのブラコンからドMなブラコンに昇格させてみようと思う。


「はあ、もうちょっとここにいたかったのに……」


「寄り道だったのか?姉貴」


「昨日調子こいて上級(ハイクラス)を倒したのが祟ったわね」


 もしかして、大量のお金を請求されたのだろうか。あれだけめちゃくちゃやっていれば、なくはないだろう。


「機密情報らしいので、僕達の口からは言えないんですけど、今から影島方面に用事がありまして」


「へー、機密情報握っているって……一般人が?」


「影島かぁ……何かあったっけ?」


 この浜浦半島の、ちょうど先っちょに位置する、影島。文字通りそこだけが、半島から離れてちょっとした島になっており、平坂湾アクアラインの平都側の接続地点である影島JCTの他に、物流の重要拠点としても機能する場所だ。


 無論、一般人が当たり前のように入れる場所じゃない。一部の物流関係者ともっと上の方の人だけだろう。


「……匂うぜ、あいつ何を隠してやがる」


「衝、一回ストップだ。もし本当に機密情報とかだったらお縄につくのはこっちだぞ?」


「……ちっ、一通り終わったら聞かせてもらうからな」


「もー、分かったから。話せるところだけね」


 そう言って、美空さんと快征さんは、ショッピングモールの出入り口から出ていった。でも、衝の言う通り、やっぱり何かがありそうだ。機密情報なので探るようなことはしないが、また何かひと悶着ありそうな気がする。


「……正治、多分なんだけど、美空さんの仕事ってこれ関係なんじゃないかって思うんだけど」


「え?影島でか?」


「違う違う、影島のもっと先だよ」


 理央が見せたスマホの画面に映っていたのは、今度東都市で行われるG7サミットに関するニュースだ。


「そうか……そういえば、あれって東都でやるんだったな」


「それと何が関係あるんだ?」


「平阪湾アクアラインは平阪地方と東海地方をつなぐ最短ルートだよ。東都市は東海地方だし、移動のときには使わざるを得ないでしょ」


 つまり、美空さんたちは単純に考えて、その移動の重要拠点となる影島の警護か何かを任されたのだろう。


「辻褄は合うな」


「……もしかして、あの人達情報管理が下手?」


「否定はしねぇよ」


 時雨が、少し呆れたような声でそう言った。

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