第48話 道中にて
「……お前らそんなことしてたのか」
「脚色はしてないよ」
東西線のボックス席に、正治たち四人組は座っていた。
さっき住立駅を発車したばかりなので、まだ到着までは時間がある。
今話しているのは、この間の藪子での一件の話だ。そう言えば衝には話したことなかったので、少し振り返ってみたりしていた。
「私は死んだかと思ったよ」
「ああ、俺もだ。着いたときに理央が大量の血をぶちまけて倒れていたからな。あいつら生きていたら今度こそコテンパンにしてやる」
「したでしょ。私と一緒に」
時雨は、出発前にコンビニで買った麦茶を一口飲む。
俺達が話している横でも、街の景色はぐるぐる変わっていく。
しばらく同じ区間を走り続ける湾岸線の電車も見える。
「人間ってすげえよな、たかだか千年で、戦争とかで何回もリセット食らったのに、高層ビルが立ち並ぶこの街を作れるんだぜ」
「いきなりどうした」
「いや、あらためて街を見てみると、すごいなーって」
俺は、窓から街を眺めながら、そう言った。
あの当たり前のように立ち並ぶビルも、過去の誰かが、誰かに頼んで作り上げたもの、そう思うと、少し不思議な気持ちになるのだ。
一体、世界にはいくつ今なお意味を持つ物があるのだろうか。
◇◇◇
『大梁ー、大梁ー、お出口は左側です』
平都市東州区、その南側に駅はあった。
このまま東西線に乗っていくと、東都新都市駅にたどり着く。
「んー、ここからどのくらい歩くの?」
「大体十分ってところか、早く行くぞー」
この駅はかなり海沿いにあり、海風がこちら側に吹き込んでくる。どちらかというと港といった感じなので、海水浴はできないが。
「でも、海水浴とかもしてみたいよね〜」
「平坂湾でも海水浴できる場所はあるからな。東海半島の方とか」
「海水浴するならもっと南に行こうぜ。先島とかさ」
「衝、それは修学旅行に取っておくしかねぇな。金ないもん」
先島地方は、この国の最南端の地方だ。エメラルドグリーンの海とともに広がる、南国感あふれる風景は、せわしなく働く人々のオアシスだ。
修学旅行でいずれ行くことになるので、今は食事を切り詰めて金を貯めようとは思っていない。
「修学旅行って言っても、まだ一年は残っているだろうが、やっぱ早く行きてぇよ」
遠く離れた先島のオアシスに想いを馳せながら、俺達は広い道を進んでいく。
平都市であっても、都心から離れればのどかなものだ。この東州区の位置する浜浦半島は、平都市の中で最も人口密度が低い地域だ。
「でも、やっぱりこの辺は賑わってるな。ショッピングモールの影響か」
「そうだろうね~」
ショッピングモールの入り口の前に着いた俺達は、そのまま中に入る。少しお腹が空いたので、買い物をする前にどこかで食事を取ろうと思う。
「どこがいい?」
「俺は……ソフトクリームとかか?」
「それはこないだも食べたじゃん。私は流行りに乗ってタピオカで」
「時雨ちゃん、それのブームはだいぶ昔に過ぎたよ?」
今の流行りはなんだろうか、マリトッツォとかだろうか?俺も大概流行には疎いので良くわからない。
「もうシンプルにアイスクリームでいいだろうが。流行りなんてどうでも…………ん?」
そこまで言って、衝は何も言わずに固まった。
俺が衝の視線の先を探った途端、
「あっ!!しょーーー!!!こんなとこで会うなんて、私は運がいいのね!!」
「何でここにいやがる、クソ姉貴ィィィィ!!?」




