第45話 都市戦闘 -Ⅱ-
遠目からでも分かる。今、あのムカデはこちらに向かって来ている最中だ。
この辺の被害もすごいことになっているが、今はそれを気にしている余裕はない。
(もう一発飛んでくる!抑えないとっ)
勢いに任せた直線状の攻撃は、なんとか迎撃体制を取れた私を更に遠くへ吹き飛ばし、ムカデ自体は恐ろしいスピードでこちらに侵攻する。
私が飛び込んだのは、普通の学校だ。一つ備考を付け加えるとするならば、衝と、咲ちゃんの通う普通の高校だ。
大砲でもぶち当てたかのように破壊された壁を、内側から眺める。向こう側には、やっと悟町辺りに到達したムカデの姿があった。
「……良くもやったな」
やつの攻撃方法は分かった。魔力で構築された高速の衝撃波、少しのタメをしてから一気に放つ、その威力は鉄筋コンクリートの建物を粉砕できるレベル、
(なら、こっちは、その数段上の威力で相手してやる!!)
周囲の空気をかき集め、一気に圧縮させる。その圧縮した空気弾を、ムカデに向かう直線上に、魔力を載せて射出した。
音速に接近する風の槍は、唸りを上げ、衝撃波を出しながらムカデの方向に直進する。
一撃にかかる魔力の総量だけならあちらの独壇場だが、一点にかかるエネルギー密度ならば、その限りではない。
『ギアアアア"ア"ア"ア"ァァァァァ……』
風の槍は、低空をかすめてムカデの胴体を貫通した。心臓の位置を正確に狙ったので、少なくとも致命傷にはなっただろう。
とりあえず、この死体をどうするかという問題は置いておいて一段落だ。私は向こうに飛んでいってみて、上からそれを覗いてみたが、我ながらきれいにぽっかり穴が空いていた。
「……後処理は誰かがやってくれるよね!」
私は、そのまま住立駅の方向まで飛んでいこうとして、その場から離れようとしたが、そこでいきなりスマホが鳴った。次は警報じゃない、普通に電話の着信だ。
「もしもし……」
『美空さん?今どこに居るんですか?』
「今は悟町駅辺りで魔物を倒したところよ」
『悟町…あぁ、ニュースになっているアレですか、そんなのどうでもいいですからさっさと大学来てください』
「なんか冷たくない?」
『冷たいも何もありますか、何かを忘れてるんじゃないですか?』
「うそやん、なんかあったっけ……?」
『来られるって言っていたサークル活動があるじゃないですか。急な用事が入ったなら別ですけど』
「あっ……ごめんすぐ行く」
電話の相手に急かされて、私はそのまま浮遊魔法を維持したまま、大学のある方面まで向かう。
風を利用した高速飛行だ。あと五分もあれば到着するだろう。
◇◇◇
「やっと外に出られたぜ〜〜……おう……これはひどい」
避難指示が解除され、俺たちは外に出ることができた。
しかし、なんなんだこの大惨事は。学生寮は、一部がまとめて筒抜きにされて、校舎の壁は、何かがぶつかってできたであろう、大穴が空いていた。
少なくとも、もう授業の続行は不可能だ。
「しばらく寮には帰れないね」
「シェルター暮らしかぁ……嫌だなぁ」
とりあえず、俺達の部屋に被害は及んでいないようだが、見えないところにどんな損傷があるか分かったもんじゃない。多分修復工事と点検が終わるまでシェルター内で過ごすことになる。
一応シェルターは、電気、水、ガスなどのライフラインが途絶しても、3週間は暮らせる設計になっている。食料も十分なので、安定した暮らしはできそうだ。
「だけど、一体誰が倒してくれたんだろうな……?」
俺は、被害を最小限?に抑えてくれた謎の人物に敬意を表しながら、それが誰であるかを考えて首をかしげた。




