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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第2章 魔法同好会編
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第43話 珍しくもない緊急事態

「原子は陽子と中性子で構成される原子核と、その周りを回る電子で作られ……」


 昼休みのあと、始まったのは化学の授業だ。原子なぞ興味はないが、学んでおかないとあとあとテストに響くだろう。


「小さい世界を学んで何になるの」


「俺らの成績になるんだぞ、時雨」


 隣の時雨がやる気なさそうにぐでっとしながら、シャーペンを高速で動かしていた。


 分からないわけじゃなくて、そもそも、もう知っている範囲だからやる気が出ないのかもしれない。


「成績なんて私にはどうでもいいんだけど……正治君は必死なの?」


「当たり前だ。赤点とったら絶望以外の何ものでもないからな」


 この辺はまだ簡単だけど、単元が進めば、難易度も上がる。


 今のうちに成績をなんとかして稼ぐのだ。


(っても、暇だなぁ、暇つぶしはないものか……)


 俺は、大事なことだけメモをとって、時雨と同じようにぐでっとした。早く終わらないかな。


 ◇◇◇


「正治、次の授業って……」


「地理だったよな。まあ何にせよこれで終わりだ」


 化学が終わって、まだ5時間目だと気づいた。次は地理で、この国の地方について学ぶ予定だ。


「……この国っていくつ地方があったっけ?」


「……確か全部で28だったよな……」


 北島(きたじま)中北(ちゅうほく)美山(うつくしやま)平阪(ひらさか)西部(せいぶ)東部(とうぶ)城南(じょうなん)陣場(じんば)東南(とうなん)神良(かむら)宮岡(みやおか)手奈島(てなしま)……などがある。ちなみに平都市は平阪地方だ。




「はぁ、めんどくさい……うわっ!?」


 不快な警報音が、教室の四方八方から鳴り響いた。


 発信源は生徒の持つスマホ。これまで何度も聞いたが、未だに慣れない音だ。


「なっ、なんだ!?」


「緊急地震速報とか……?」


 地震速報なら、どれだけ震源から離れていようが、かなり早くに揺れに気がつくはずだ。


 近くに居た先生の声が、教室内に響いた。


「全員地下に避難だ!並ばなくていい!ただ焦らず迅速にだ!」


 スマホでこんな大胆な警報が鳴るのは、大規模な地震と、他国からの攻撃、あともう一つ、付近で上級(ハイクラス)以上の魔物が確認されたとき。


 一切揺れてはいないし、ミサイルをうっかり落とされかねないほど国際情勢は悪化していないので、必然的に一つに絞られることになる。


(近くで魔物……最近何でこんなに運が悪いんだ!?)


 珍しいことじゃないが、それを抜きにしても最近どうも頻度がおかしい。


 悟町駅前でスライムと、籔子のあたりで悪い魔法使いの一団と。後者は自業自得だが、それでもスライムが丁度一週間前だ、こんな頻度は体験したことない。


(しかも今回は文字通りレベルが違う。最低上級(ハイクラス)じゃあ時雨も倒せないだろ……)


 そう言って近くに居る時雨の方に振り返った。


「……どうしたの?」


「いや、何でもない」


 俺は、自分たちの向かう地下シェルターへの階段に向き直った。


 ◇◇◇




 この国……というか、先進国のほとんどの公立学校には、このような地下シェルターが備え付けられている。


 魔物の攻撃をやり過ごすのはもちろん、扉は、空気ですら全く通さない完全密閉の状態に出来るので、津波でシェルター外が薙ぎ払われても、この中は無事だし、有事の際の防空壕や核シェルターとしても運用可能だ。


 直に破壊されなければ、ほとんど完璧とも言えるシェルターであるが、唯一の欠点が、


「電波が通じない!外の状況が分からない!」


 放射線を遮蔽できるくらいだ。携帯の電波など一ミリも通さない仕組みになっているのだ。


「こればっかりは仕方ないな。確か通信用のアンテナに繋げられる場所があったはずだが、まぁめちゃくちゃ混んでるだろうな」


「…………今、思ったんだけど、何で私たちこんなに落ち着いているんだろ」


 その言葉を聞いて、俺はハッとした。俺らの危機感は、いよいよ麻痺ってきているらしい。




「……ま、まぁ、時間がいずれ解決してくれるさ!いつも俺達は無事だったからn


 ドゴゴゴゴガガガズガアァァァン!!


「………」


「………何を時間が解決してくれるって?正治君」




 シェルターの天井あたりから、建物が崩される轟音が響いた。


 俺達は、このシェルターで夜を明かすことに決定した。

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