第42話 自由奔放な大学生
「こちら、ナポリタンになります」
「ありがとう」
平都市港河区のとあるレストランで、私は大学の講義のあとの夕食を楽しんでいた。
私の名前は護月美空、至極平凡(自称にして嘘っぱち)な大学生だ。
「ナポリタンおいしー、暇って最高だね。最近ずっといろんなところがきな臭かったから」
私は、大学で教師になるための勉強をすると同時に、自警団に所属して街中を駆けずり回っていたりする。
衝からは遊び回っていると思われている。悲しい。
「……おっ、咲ちゃんからだ」
ピロンと、スマホに通知が届く。高校の頃の後輩に当たる高宮咲からだ。
saki:先輩、元気ですか?私の同好会に3人くらい見学者が来
てくれたんですよ!すごくないですか?
そら:そうなの?良かったじゃん。どんな子たちなの?
saki:えっと、正治君と時雨さんと理央さんです。先輩の弟
さんの友達らしいですよ。
そら:へー、聞いたことあるかも。
saki:今度会ってみたらどうですか?多分不良って訳じゃ無い
と思いますよ。
「そういえば、衝が私に友達を紹介してくれたことないわね」
私は、フォークでクルクルしたナポリタンを、口の中に運ぶ。この店のナポリタンは私のおすすめだ。
「も~、教えてくれればいいじゃない。素直じゃないんだから。まあそれもかわいいんだけど」
衝のことを考えると、どうしても頬が赤らんでしまう。かわいい弟なのだ。これくらい世間でも当たり前だろう。
当たり前、だと思う。
「……もう学校終わったかな?」
私はスマホのキーボードを叩く。
そら:衝〜!!♡元気〜?
しょー:fuck you
そら:もう、照れちゃって♡今度衝の友達紹介してみてよ!
しょー:失せろや。
何、いつものことだ。衝は本当にツンデレで、私が好きなのを素直に言えずに拒絶してしまう。
だけど、最近は衝の罵倒に安心感を感じられるようになってきた。その言葉を聞く度に、いつも通りだと思わせてくれるから。
(でも、いつか私に好きだって言ってくれるはず!私は諦めないよ)
そう、私はお姉ちゃんなのだ。衝から私への姉弟愛を伝えてもらえるように頑張るのだ。
◇◇◇
「……チッ……少しは自重しろやクソ姉貴」
俺はスマホの画面を部屋の中で覗き込んでいた。
ハートマークなんて使いやがって、あいつももうじき二十歳になるのに、いつまでもあざとく子供気分だ。正直言って気持ち悪い。
姉貴のブラコンは、結構昔からの話だ。それこそ俺が覚えている範囲なら、ずっとこの調子だ。
だけど、大学に現役で合格してから、少しタガが外れたような気がするのだ。
「いつかヤバい詐欺に引っかかって、金をむしり取られた挙句に自殺しそうだな。それこそオレオレ詐欺とか」
俺の存命中にして唯一の家族はあの姉だ。確かに愛情はあるかもだが、信頼は砂粒程にもない。
オレオレ詐欺で俺の名を語れば、ほぼ確実にあいつは金を出すだろう。
「……いや、それは無いか。あの姉貴は俺の声を完璧に聞き分けられそうだ」
……よくよく考えれば、俺♡LOVEな姉貴が、俺の声を聞き間違えるはずが無いのだ。そこは信頼できるかも。
「はぁ……だけどやっぱり好きにはなれねぇな」
俺はベッドの上で大きなため息をついた。




