第41話 護月姉弟
「俺の姉貴?何でいきなりそんな事聞くんだよ」
「気になったからだ」
衝の姉のことが少し気になったので、4月19日の昼休み、彼に直接聞いてみることにした。
「前にも話しただろうが、まさかもう忘れたのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだがな……もうちょっと詳しく教えてほしいなと」
衝は心底うんざりしたような顔で指をクイッと曲げて外を指さした。
◇◇◇
「で、具体的に何を教えてほしいんだ、ボンクラ」
「いろいろだ。お前が思う特徴とかをもうちょっと詳しくな」
「はぁ、ったく、別に特別に語る特徴はねぇよ。大体、俺は姉貴が好きじゃねぇ、お前、確かキノコ類が苦手だったよな。苦手なもののいい特徴なんて語れるか?」
まぁ、こいつがクソ姉貴というくらいだ。いい特徴がホイホイと出てくるわけじゃないのはわかっていた。
「別にいい特徴だけとは言ってないけどな」
「それならいくらでも出るなぁ、じゃあまずは俺が姉貴を好かねえ理由から教えてやる」
そう話してから、衝は再び口を開く。
「姉貴は俺にいつもベッタリだ。世間一般的な言葉で表せば、ブラコンだ」
「あぁ……それはお前嫌そうだな」
衝は本当にひねくれた奴だ。これまで10年以上は一緒に生きてきて、そのことは嫌というほど知っている。
感謝の言葉を言われても、それを素直に受け取ろうとしない、どれだけ本気の姉弟愛を向けられても、衝にとっては理解の出来ない感情なのだ。
「俺には姉も兄もいないから分かんねぇけど、姉弟ってそんなものなのか?」
「あんまり姉弟に幻想は抱くなよ。現実はいつもこんなもんだ」
衝は水筒の水を一気に飲み干し、ふぅ、と一息ついてからまた話し始めた。
「それに、いつもどこかで遊び歩いているらしい、あれを実の姉だとは思いたくねぇ」
「分からなくもないけど、もう大学生なんだろ?心配してんのか?」
「いずれ俺に流れ弾が飛びそうだからな、姉貴の悪評のせいでな」
俺は小さく頷いた。理解はしつつも、聞きたいことを聞き切るまで、俺は引き下がらない。
「他には何かないのか?」
「なんだ、しつこいなお前……ねぇよ、とっととどっか行け」
いつも通りイライラしている衝に突っぱねられた。いつものことだ。気にする必要はない。
「まあ、こうなっちまうとどうにもならないからな、また今度聞くわ」
そろそろ昼休みも終わりだ。一足先に、俺は教室に帰った。
「……あいつ、何でいきなり聞いてきたんだ?」
◇◇◇
俺の名前は護月衝だ。この名前を読んだりするとき、俺の先祖は、月でも護っていたのだろうかと、考える。
そして、俺には姉が存在する。
名前は、護月美空、自由奔放な、大学生だ。




