第39話 復帰
「で、どういうつもりだ、島江」
「何で俺だけなんですか!!?」
こないだの騒動も一件落着、また心機一転スクールライフを謳歌しようと思っていたらこれだ。
俺こと島江正治と、隣の陽山時雨は、鬼教師山崎渡の前に引き出された。理由は無論、こないだの件についてだ。
「確かに原因は時雨にあるが、まずは女子高生を尾行していた変態を先に咎めるべきだと思ってな」
「くそっ、誰がこいつにバラしやがった」
「私だよ」
さっきからだんまりだった時雨が口を開いた。登校してからかれこれ10分はたっただろうか、そろそろ教室に行かないとやばいというのに、生徒指導室から一歩も出られないでいる。
「せ、先生……もうまもなく授業が始まってしまうのですが……」
「心配はするな、出席にはしておいてやる。1時間目は俺のガチ説教だ」
「嫌だァァァァ!!!」
◇◇◇
結局、そのガチ説教が終わったのは、1時間目が終わるのとほぼ同時だった。
俺は既に憂鬱な気分になっていたが、時雨はその微動だにしない顔の筋肉のお陰で、今の感情がさっぱりわからない。
「あぁ……もう駄目だ……やる気が出ない……」
「だらしないなぁ、もう少しシャキッとしなよ」
「ウグッ!!?」
次の瞬間、時雨に思いっきり背中をぶっ叩かれた。自転車がぶつかってきたかのような勢いだった。
「ぐぅぅ……か、加減をしろ時雨〜……!」
「したよ。かなり」
「おまえの全力はどんな威力なんだよ……!?」
「ん――――、コンテナが凹むくらい?」
あれが魔法抜きの素の威力なのかよ……。
俺は、時雨のゴリラっぷりに恐れおののき、ついこの間時雨にいつか勝つという宣言をした自分を心の底から恨んだ。
無理だろうが、カス。
「そういえば正治君、今日部活見学があるって知ってた?」
「ああ、なんかそんなこと言ってたな」
「なんか『魔法同好会』ってのがあったんだけど」
「……今じゃ珍しくもないからな、実際大会とかもあるらしいし……まさかそこに入ろうと?」
「ちょっとだけ」
こう言った魔法関係の部活は、今どきはもうスタンダードなものになっている。特に境界事変を子供時代、直に体験した、いわゆる俺たち『第六世代』からの支持がかなり高い。
「危なくないか……?」
「結局また危ないことに巻き込まれるかもしれないんだし、少しでも強くなっておいたほうがいいんじゃない?」
「あ、さっき説教されてた二人だ!おっはよぉ!!」
後ろからさり気なく理央が現れた。傷もすっかり回復し、後遺症も残らない完全体だ。
「なんの話してたの?」
「時雨が魔法同好会に入りたいっていう話だ」
「あ~、そんなのあったね。じゃあ私もそれにしようかな~」
「ノリで決めんな後悔するぞ」
「でも実際、入りたい部活って、あんまりないんだよね。この高校にした理由って、学力がいちばんここに近かったからだし」
「運動も勉強もできないしな」
「お互い様でしょ」
理央は手に持っていたペットボトルの中身を口に流し込んだ。
「今日が部活動見学で、肌に合わなかったら変えればいいんだし、最悪帰宅部でも無問題だし、行くだけ行ってみればいいのよ」
「そうだな……じゃあ俺もついてくか」
「結局?」
「ああ、俺も入りたい部活ないしな」
「じゃあ、放課後一緒に行ってみよー!」
理央がそう笑っていると、2時間目のチャイムが鳴った。




