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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第1i章 魔界・転移編
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第38話(第1i章最終話)旅の出発点

「そうか、分かった。カノンにはすまないことをしたかもしれないな」


この間の話だ。僕はカノンが自警団をやめる旨を、ゼグさんに伝えた。


「でも、やりたくないならやらないと言えばいいと思うけどな……別に怒るつもりは毛頭ないが……」


「……多分ですけど、カノンは人に反対したりすることを、いいことと捉えていないと思うんです。人に従って生きていれば、幸せに生きられる、そう思い込んでいるのかも」


僕は考えたことを率直に言った。


「たしかに……カノンならありえない話じゃない」


ゼグさんはそう言って、少ししか残っていない酒瓶を傾けた。


「自分に自信が持てればいいけれどな……染み付いた癖はなかなか変えられない、きっかけでも無ければな」


◆◆◆




「セインス〜、準備出来た〜?」


「ああ、できてるよ。後はサテナの駅に行くだけだ」


私はセインスに声をかけた。昨日渡した10万ソイルもしっかり返ってきたし、特にトラブルがあるわけじゃなかった。


私達は、これから世界中いろんなところに行くために、この街を旅立つ。最終目的地は、私の故郷(もっとも、故郷というには都会すぎるが)だ。


「忙しいね、もうちょっとゆっくりすればいいのに」


「まぁ、出発する前に、街の様子はゆっくり見ればいいさ」


一般的な日用品をバッグにまとめ、セインスは背中に背負う。


「まずは王都までの100(キロメートル)以上の旅だ。鉄道に乗っているだけだから、そんなに苦しくはないね」


ちなみにこれの運賃が片道1000ソイルだ。現代人の私から言わせれば、特急でもないのに片道約1万円なんてぼったくりにも程がある。


〈ちなみに、100キロメートルは現実で大体、東京の中心部から沼津あたりまで、東海部民主国の地名であれば平都中央駅から、清州平阪(せいしゅうひらさか)駅あたりまでです。いずれ出てきます〉


交通システムがまだ安定していない分、その金額になるのは至極当然のことだが、まさかこんなところで元の世界の長所に気がつくとは思わなかった。


「じゃあ、家を出ようか。脆い木の家だからね、帰る頃には消えているかもしれないから、ある意味永遠に帰れないかもね」


「そっかぁ……まぁ愛着があるわけじゃないけど」


私達は、二人で森の中に足を踏み入れた。この場所には、しばらく戻ってくることはないだろう。




◇◇◇


「すごい惨状だったけど、駅は無事でよかった」


街を一通り歩いて来たが、あのゴーレムが侵攻してきたところ以外は、特に被害を受けている様子はなかった。


いつも通り街が、人が、活発に動く風景、まるで危機なんてなかったかのように、平凡な日常だった。


「やっぱりのんきですね……あんなことがあったあとなのに」


「みんな気まぐれなんだ。仕事はしたいときにするし、ご飯も食べたいときに食べる。ここみたいな地方都市なら、時間なんてあってないようなものさ。だから、過ぎたことには、対策はとっても、執着しない」


セインスは、結構遠くに見える時計台を指さした。


「あれが、個人所有のものを除けば、街に設置されている唯一の時計だよ。時間の基準はいつもあの時計なんだ」


堂々と佇むその時計台は、他の場所を見てもこれ以外に見当たらない。それはまさしく街のシンボルだった。


今は短い針が(9)を指し、長い針が(6)を指している。知っている時間に直せば、9時半ってところだろうか。


「鉄道の時間もルーズだけど少し急ごうか」


「うん!」


◇◇◇


駅のホーム、線路も断絶はしていないので、あとちょっとで車両が到着する。


だけどその前に、見知った二人が、こちら側に向かってきた。


「セインス〜!カノンちゃん〜!見送りに来たよ〜!」


「何で俺も……」


ユーラさんとゼグさんだ。あれが終わったあと、私の意向で私があの魔物を倒したことを、隠してくれていたのも二人のお陰だ。


「来ていたんですね」


「そりゃあ、いなくなる前に顔を見ておこうと思って。ほら!ゼグもなんか言って!!」


ユーラさんは無理矢理ゼグさんに、話をふる。ゼグさんは困ったような顔をしながら、私達の方を見た。


「まあ、俺たちはここに残るが……応援はしている」


実に淡白な言葉だった。変に涙ぐましい言葉を言われるよりかは、まだこの方が私としては嬉しいが。


「シンプルだね……ゼグ」


「他に言うこともないからな。強いて言うなら……自分の好きに楽しんできてくれってくらいか」


はたして、楽しむ要素がこれから出てくるかはいささか不明だが、ありがたく胸の中にしまっておくことにした。


「じゃあね!いつになるかは分かんないけど、また合う日まで!」


ユーラさんとゼグさんは、大きく手を振って、駅の外に出ていった。改札はないので、そのまま一直線だ。




「……行っちゃった」


「まさかここまで来るとは思ってなかったけどね……挨拶なら昨日済ませたはずだけど……」


セインスはそう言って、先程からと同じように、ホームで車両を待った。周りからも何も聞こえない、とても静かな空間だった。


「ここでなら、私も生きる意味を見つけられるのかな」


「できるんじゃないかな。僕も知らないことだらけだけどね」




私は、少し安心して、


心から、小さく微笑んだ。

第1i章、完結です。

とりあえず、正治視点と香音視点、ゲームで言えば、どちらもチュートリアルは終わった感じです。


ここから、敵も味方もぐんぐんインフレさせていきたいと思います。


次は、現代の方に戻って、新しくまた事件が起こります。


と、その前に、新しく異世界ものでも投稿しようかと思っているので、そっちも見てみてください。

(この小説を初めて投稿したのもつい一ヶ月ちょっと前ですけど)

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