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第3話 いつも通りの三人衆

 昨日は、自分の部屋の中で一晩を明かした。いつもとは違う住環境に、少し戸惑いもあったが、枕が一緒だったので、ぐっすり眠ることができた。


 これから三年間この部屋で過ごすことになると思うと、なんだか、目覚ましなしでもシャキッと起きられるような気がした。


 惣菜パンで適当に朝食を済ませた後、歯を磨き、顔を洗って、学校指定の、ワイシャツとネクタイ、ズボンとブレザーを着て準備は完了だ。


 バックの中身の確認をしているとき、いきなり、どんどん、とドアをたたくような音が聞こえた。少なくとも、普通のノックの音では無い。


「ふあぁぁ…よう、良い朝か?俺は最悪だ」


「おっはよ~、迎えに来たよ~準備できてる?」


 ドアを開ければ、騒がしい幼なじみコンビが、ドアの前で堂々と構えていた。理央はこれでも女の子なので、あの暴力的なノックは、寝ぼけてまだ目をこすっている衝の仕業だろう。


「ああ、二人か、ご丁寧にどうも。俺はもう全部準備し終わってるぜ。で、衝、ノックをするなら優しくしてくれ。普通にビビったぞ、借金もしてないのに取り立て屋が来たのかと思ったんだが?」


「あ゛ぁ?お前には俺がそんなことをするように見えてんのか?」


「おうよ、端から見たらただのヤンキーだ」


 俺と衝の間に小さな火花が散る。理央は、あきれるような顔でため息をつき、男子二人の制服を掴んで押し倒す。


 見た目に反した結構な腕力は、二人の小競り合いを止めるには十分だ。


「こんなとこで喧嘩しないでよ」


「スレンダーゴリラに言われたかねーよ、腕だけじゃ無くて胸も筋肉かよ」


 衝が挑発した結果、その後に残ったのは、ボコボコになった衝の顔だった。スレンダーゴリラもあながち間違っていなさそうだ。


 ◇◇◇


「あー…理央、気にすんな。アイツのただの挑発だ」


「それにしてはデリカシーがなさ過ぎない?」


「くっそ、ボコスカ殴りやがって、こん畜生!」


「お前もお前でどんだけ丈夫なんだよ」


 件の理央は、もうすねてしまったようで、俺が何を話しかけても、反応してくれなくなった。


 俺は、理央に何とかして機嫌を直して欲しかったが、あいにく今の状態だと、何を言っても聞いてくれそうに無い。


(ん~…どうするかなぁ~…あ、そうだ!)


 正治の頭の上に電球が浮かぶ。善は急げという事で、正治は早速行動に移す。


「なぁ理央」


「なによ~、今度は何を言うつもr


「お前ってかわいいよな」


「……い、いきなり何を~!!?」


 人は、悪いことを先に言ってから良いことを言うと、評価がそのまま上書きされることが多々あるのだ。ましてやそれがなんの脈絡もない唐突な言葉で、思春期の少女ともなれば、その効果は絶大だろう。


 とまあ、俺は経験談からこれを知っていたが、別に女たらしというわけでは無い。ちなみに、知っている理由は、実際にされたからだ。


「だ、だけど、笑顔でいた方がもっとかわいいと思うぞ!俺は!」


「ッ~~~!…わかった!分かったから!」


 理央は、そのかわいい顔をリンゴのように真っ赤に染め、校舎のほうへと走って行く。理央の機嫌を直す作戦は大成功だ。




「お前……今度は女たらしの実績も獲得しようって魂胆か?」


「元はと言えばお前のノーデリカシー発言のせいだがな?幼馴染でも自制はしろ」


衝はこっちにめちゃくちゃガンを飛ばしてくる。何か衝っていつも怒っている気がする、仲が悪いわけじゃないんだが、仲が良いとは思っていなさそうだ。


「わかったよ。出来たらそうするわ」


「やろうともしないくせに……」


「理央……なんか言ったか?」


「いえ、なにも」


理央がそっと毒づく。これ……理央も若干衝に影響されてないか?まあ、こいつらは気がついたら機嫌直ってるし、変に介入しないでもう放置しておこうか……


「大体、正治は理央に甘すぎるんだよ!何なんだお前!好きなのか?」


「ああそうだよ。悪いか?特別なんだよ、理央は」


「ど、ド直球だね……まあ、悪い気はしないかも……」


衝は眉をひそめてこっちを見ている。なんだよ、そんな目で見るなよ。


この時から下駄箱の辺りまで来るまで、衝の悪態は止まらなかった。

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