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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第1i章 魔界・転移編
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第34話 圧倒的な戦力差

 セインスは再び剣を構える。


 目の前には砂の巨人がそびえ立ち、砂岩で構築された硬い表面の更に上から、魔力装甲が何重にもかけられている。


 さっきの威力じゃ不十分だった。それに(コア)の所在も、全く分からない。


「倒し方がないわけじゃないけどね。まずはあの装甲を無力化しないと、『歪光(ブラインド)』」


 セインスは魔法を発動する。周囲の光がねじ曲がり、彼の姿が消失した。


(物が見えるのは、光が物に反射して目に入ってくるからだ…つまり、光が当たらなければ光も反射しない、だから目にも映らない!)


 極力音を出さないように、空中を飛行しながら狙いを定める。


 キラッと、虚空が光り、いくつもの光の矢が、ゴーレムに向かって飛来する。


 セインス・クラン・アルマントルの固有魔法、『光操作』は、そのまんま光を操る能力だ。収束させた光を一点に当てて発火させたり、光を曲げて、相手の視界に虚像を結ばせたりできる。


「そして、光自体も強力なエネルギーを持っている。魔力を乗せて放てば、岩の一つや二つ、簡単に砕くことができるんだ!」


「ッ!!ソコカ!!」


 ゴーレムは、自分の手を元の砂に分解し、セインスの姿が見えた場所を一気に抉り取る。


 しかし、何もない。攻撃は空を切った。


(…ナルホド、キョゾウカ。ヒカリヲマゲテ、マッタクコトナルバショニゾウヲツクッタナ)


 ゴーレムの周囲には、いくつものセインスの虚像が浮かび上がり、本物を捉えるのはかなり難しい状態になってきた。


(フム、ナラバゼンインマキコンデシマオウ。タショウムリヤリダガシカタナイ)


 ゴーレムの全身が崩れ始め、そのまま回転運動を行いながら、不定形な状態に変化する。


 次の瞬間、大量の砂が時計回りに回転し、そのスピードは、そのまま殺人的なレベルに達した。


 当然、その竜巻の中にはセインスの虚像も、セインス()()も含まれている


「っぐぅ!」


 セインスはとっさに魔法防壁を展開し、無傷に抑えることができたが、いまので位置がもろバレした。


 この好機を逃すまいと、砂のドリルがセインスに向かって、地面を掠めて飛んでくる。


 青いステンドグラスのような防壁は、一瞬で赤熱し、火花をまき散らす。


「ぐぅぅーっ!」


 砂粒一つ一つが魔力を纏って高速で動いている。一方向からの瞬間的に力がかかっているわけじゃない、ありとあらゆる方向から、断続的に力がかかり続けている。


(まずい、隙がない!…今この状態で動いたら一瞬でバラバラにされる!)


 魔力装甲だけ纏って外に出るのも手だが、強度の関係上、それだけではどうも心もとない。


「誰でもいい、助けてくれ!」


「コレデオワリダ!」


 砂はより一層力を上げ、防壁をヤスリのように削り取る。


 もうそろそろ限界だ。防壁に穴が空きかけたその時、




「『アビリティ・アポート』」


 ぱっ、と、セインスの目の前の景色があっけなく変わった。


 数秒後、自分の丁度真下から、ズドンと、地面を抉るような音が聞こえる。


「…へ?」


「呆けてないで構えてよ。『助けて〜っ』って声が聞こえたような気がするから助けたのに」


「間に合って良かったな…カノンは無事だぞ」


 セインスは、いつの間にか、ユーラに片腕を掴まれて宙づりにされていた。その傍らにはゼグもいた。


「…ああ、とりあえず降ろしてくれ、肩が外れそうだ」


 セインスはユーラに頼んで地面に降ろしてもらう。地面が砂だらけで動きづらい。


「コレデサンニン…マダマダクルノカ?」


 ゴーレムはそう問いかけた。ゼグさんは考えてから口を開く。


「言う義理はないが教えてやる。今街を防衛している魔法使いは20人以上いる。時間が経てば王国の騎士団もやってくるだろうな」


「フム、ナカナカムズカシイナ。ワガシモベモホトンドヤラレテシマッタ、イマタタカエルノハワレダケカ…」


 ゴーレムは、そう言って少し黙った。そして笑いを含んでこう言った。


「ジャマサレルコトノナイ、タノシイカリダ」


 散らばった砂が寄り集まり、再び巨人の形をなしていく。


 魔力が爆ぜる。魔物の膨大な魔力を纏った拳は、地面を掠った途端、強大な風圧と衝撃波で、あたりを更にボロボロにしていく。


「!?まだこんな力を…!」


「大方、隠していたんでしょうね!さっきまでの攻撃も本気じゃないってことだったんだ!」


 3人とも攻撃を防ぐことはできたが、同時に知りたくなかった情報も分かった。


「……無理だな。3人じゃこいつは倒せない。かと言って統率が取れているわけでもない20人で戦っても、あいつには軽くあしらわれそうだな」


 明らかになったのは、自分たちとあのゴーレムとの圧倒的な戦力差だ。


 魔力装甲を突破するには、それ相応のエネルギーを必要とする。唯一ユーラだけはそれを無視することができるが、(コア)がどこにあるかわからない以上、あのほっそい針で致命打を与えられるとは思えない。


「まずいぞ!もうサテナが目と鼻の先だ、このままじゃ数万人単位で被害が出るぞ!」


 タイムリミットが近い。もうあと少しでサテナが射程範囲内に入ってしまう。


「っ!ゼグ!『放射魔石』作れない?あの監獄とかで使われてるやつ!」


「さっきまで戦いっぱなしでそれを作るには魔力が足りねぇ。仮に作れたとして俺たちも魔法使えなくなるぞ」


「そーだったー…あれ?


 もう、手詰まりじゃん」


 ユーラは、冷や汗をかきながらそう呟いた。

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