第29話 異世界言語のお勉強 -Ⅱ-
「この文字は、こういう意味で、これはこうで…日本語に書き出せばわかりやすいね」
わからないなら、わかるようにしてしまえばいい。
どんくさい私の脳みそが、そんな考えにたどり着いたのはあれから2日程経ったときのことである。
そこらへんに放置されていた紙に、文字を読みながら日本語に書き出していく。
間違ってさえいなければ、後はこの日本語を覚えるだけでいい。
(いずれ見ただけでわかるようにしていけばいいし、今はとりあえずこれでオーケー!)
もうこのページの半分以上は翻訳し終わった。この調子なら明日までには終わるだろう。
「もう一踏ん張り、だねっ」
♢♢♢
「ただいまー、って、カノン、寝てたんだね」
「…ムニャ、セインス…?おかえり〜…」
私はいつの間にか寝てしまっていたらしい。
夕暮れ時のオレンジ色の光が窓から差し込む中、大量の紙が辺りに散乱していた。
「見たことのない言語が書かれているな。これが君の使っていた言葉かい?」
「ああ、うん…書き写すってなかなか面倒臭いなって」
「…文字が3種類あるな」
「そこに気がつくとはお目が高い…それこそ日本語が世界一の難易度を誇ると言われる所以だからね…」
私は、あたりの紙をかき集めながら、大きくあくびをする。
日本語が書かれた紙を見つけて、残りの部分の文字を書き写していく。
「熱心だね、僕は夕食の準備をしているよ」
セインスには私は熱心に勉強しているように見えるらしい。
私は何もしたくないのが本音だ。
(これが終わったら、作文もできるようにしないといけないらしいし、やらないと生きてもいけないんだろうけどさ…)
私は大きくため息をついて、鉛筆を動かす。
♢♢♢
「…で、宿題は終わったわけだけど、何をするの?テストするの?」
「今からカノンには、その1ページを見ずに音読してもらおう。それができたら、次の課題を出そう」
「暗記対策ならバッチリよ!昨日何とか覚えてきたもの」
翌日、予定よりも大幅に早く、テストは実施された。
書き起こした日本語を、完璧に覚えたと自負する私は、一抹の不安も同時に抱えていた。
(あ~、久しぶりに学校のテストの感覚を思い出したな~、いや、どっちかって言うと受験のときの面接かな?どっちにしろ不快感しか感じない…)
「じゃあ早速始めよう。ゆっくりでいいから思い出して」
「うん…えーと、最初は…」
私は、言われた通りに、日本語を思い出して読んでいく。
「…今よりはるか昔、世界には人と魔物、そして超越者とも言える、天使たちが存在していた。人は世界を支配するために科学を、魔物は世界の真実を見るために魔法を、天使の見守る世界の中で、それぞれ発展させた。その世界の『穿天の山』に、黒光りする鱗と、巨大な翼を携えた巨大な龍が居た。その龍は人にも魔物にも、大きな厄災をもたらし、その龍が暴れた場所は、百年以上もの間、生命のいない死の大地となった……これで終わりですよね…」
「ああ、概ね間違っていなかった。合格だよ」
自分の中の気が一気に抜けていくような感じがした。
これで何とか異世界語の第1段階、読解はクリアだ。
「次は文書を書くということになるかな。単語も覚えていかないとね」
「…ああ…そうだった」
私は勢いよくベッドに倒れ込み、さっき起きたばっかりだというのに、また二度寝しようとしてしまった。
「ふぁ~…」
「僕は今日も仕事に行ってくるよ。最近忙しいからね」
セインスは、そう言ってドアを開けて外に出た。
足音が遠くなっていくような音がした。
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