第23話 地方都市サテナ
「朝だぞ。起きなよ」
「んあ、もう朝なの…?」
翌日、私はまだ眠いのにセインスに叩き起こされた。
何で異世界に来てまで規則正しく起きなければならないのだろうか。
「昨日は、服が乾いていたから良かったけど、君のその服は汚れているし、何より目立ちすぎる、だから、今日街まで服と生活必需品を買いに行こう」
ああ、確かに昨日そんなこと言われたなと、私は、朝食を作りながら話すセインスの話を聞きながら考える。
確かに今着ている服は、デカデカと文字が書かれた長袖Tシャツと、ひらひらしたスカートだ。
街の様子はわからないが、創作で目にする異世界と情景がほぼ同じなら、確かにこの格好は、場違いにも程がある。
「でも、街にどんな服を着ていけばいいの?まさか素っ裸とは言わないよね、ね?」
「はは、流石にそれはないさ。いかがわしい格好で歩く人はたまにいるが、流石に素っ裸は見たことないな。一日だけなら僕の服を貸すよ」
セインスはそう言って、棚の奥からシンプルな服とズボンを取り出した。
「君は、僕より少し身長が低いからこのくらいでいいと思うぞ、性別が違うにしては体型もそんなに変わらないしな」
「遠回しに私のコンプレックスをディスられた…」
♢♢♢
朝食の献立は、ハムとチーズとレタスを挟んだ、サンドウィッチのようなものだった。
この世界は、意外にもゲテモノが少ないらしい。てっきり魔物肉が出てくると思っていたことを、セインスに話すと、別にそんな訳でもないと言われた。
市場に行けば、結構当たり前のように売っているらしい。
朝食を食べ終わったら、さっき借りた服に、袖を通す。
昨日つけていた自前の赤いカチューシャを、肩のあたりで切り揃えた薄紫色の髪につけたら、準備は完了だ。
「…これでいい?」
「ああ、それでいいぞ。費用は僕が出すから、自由に選んでもらって構わないよ」
「貴族の子供だからお金もいっぱい持っているんだろうなぁ~?」
「言うほどでもない、家出しているんだからな」
小屋のような家の扉を開け、外に出る。
昨日辿っていった道は、ここでおしまいというわけではなく、街に続く街道の近くまであるらしい。
「そこまで行けば、後は街道を進んでいくだけだ。そんなに遠くはない」
「ふーん……変な目に合わなければいいな…」
私達は、印のついた木々を辿り、森の外に出ようとする。
さっきよりも更に木がまばらになり、開けた平原が見えてきた。
私達は、小高い丘の上に立っていた。
「…あ、」
「見えたよ、あれが地方都市サテナまで続く、この王国の東西を結ぶ大街道だ」
その光景は、現実世界ではありえない程広く、遥か遠くには、異常に高い山々がのきを連ねていた。
多数の人工物に覆われた、地球とは大違いだった。
「…どうかな?」
「ここの人達は、みんなこの景色を見ているんだね、ストレスがなさそうで羨ましいよ」
「ここに住むとなれば、嫌という程見ることになるさ、さあ、早く行こう」
私達は、丘を下って、その街道に合流する。大街道とは言っていたが、人はまばらだ。単に私が平都市の多数の人が行き交うあの光景に、慣れてしまったためかもしれない。
少し歩けば、そのサテナの街は、すぐに到着した。
周りは分厚い防壁に囲まれた城塞都市の様相をしている。
「緊急時は、ここの門が閉ざされて、完全に行き来できなくなるんだ。平常なら、軽い検査で終わるよ」
その言葉通り、魔導具とも考えられるもので、全身を確認されるだけで終わった。
街道はまばらだった人々が、街の中に入ると、たくさんの人々が行き交う、建物が低いことを除けば、オフィス街とほとんど変わらない光景代わりに広がっていた。
「うわっ、人が多い…昔、遠足のときにクラスとはぐれて夕方まで誰にも気づかれなかった苦い記憶がっ!」
「そんなことがあったのか(困惑)…」
これは小学生の頃の話だ。
ある日、学校の遠足で、沿岸部の都市まで行ったことがあったのだ。そこで、学年の一団と、人混みに揉まれてはぐれてしまったのだが、夕方になって、私が警察官に相談した時、初めて私がはぐれていたことを知ったらしい。
小学生の頃から、私ははぐれたら最後、友人の記憶にも残らないほど影が薄かったということだ。
今考えても悲しくなってくるいやな記憶だ。
♢♢♢
「着いたよ、まだ回りたい所は色々あるけど、とりあえず服屋に行こう」
「レンガ造りで高級そうな…何度も言ってますけど、私お金は払えませんよ」
「ここは高級でもなんでもない平凡な服屋だよ。高級な貴族御用達のやつならもう少し中心部だ。あと、お金なら僕が持つから大丈夫だ」
人がたくさん集まって進む大通り沿いに、それはあった。
現実のイメージというのは恐ろしいもので、きれいに整えられたレンガの建物を見た瞬間、速攻で高級なものだと勘違いしてしまった。
「…ああ…自分で選んでダサいって思われたらどうしよう…」
「…心配なら、僕か店の人に相談してみればいいよ」
私は、様々な不安を抱えて、店内に入っていく。




