第21話 ネガティブ少女の異世界転移
ある夜の日のことだった。
一人の少女が、世界から、消えた。
「もし、来世があるのなら、その時は幸せに生きられるのかな」
バシャン、と大きな水音がして、薄紫色の髪の少女が立っていた橋の上には、もう誰も居なかった。
◆◆◆
私は、平凡な女子高生だ。
と言っても、tik○okでキャピキャピするような陽キャでもない。
私はどちらかというと、教室の隅っこでニ○動でも見てる系の人だ。
人はみんなに取り柄があると、小学生の頃に誰でも教え込まれただろう。
ある人は運動、ある人は勉強、ある人は音楽、ある人は美術、ならば私は?強いて言うなら同じ教室にいても気づかれないステルス性だろうか。
勉強も運動も努力はした。やれること全てやって尚、ゴミみたいな成績しかとれなかった。
その結果が、公立受験の失敗だ。
辛うじて私立には受かったが、家が貧乏だったお陰で、親からは酷く嫌われた。
その私立でも成績は下から数えた方が早い。入学早々に、先生に何度叱咤されたかわからない。
諦めたらいけないのは分かっていても、私はこの劣等感に耐えられなかった。
もう、全部諦めてしまいたかった。
私は、この世界に必要なかったんだ、って。
♢♢♢
ゴポゴポと、小さく水音が鳴り響く。
真っ暗闇の水の中で、私は下に下にと沈んでいく。
不思議な感覚だった。
沈んでいるのに浮いているような、息が出来ないはずなのに苦しくない。
ふと、目の前に青い光が現れた。
さっきの水面ではない、別の何かだ。
私は、その光に向かって泳いでいく。
光の中に入り、そして飛び出す。
「…っはぁ、あれ、ここは…」
木々が絡みついたボロボロの建物、神殿のような、神聖な雰囲気をも醸し出す場所に、私、生駒香音は、それらの建物郡に囲まれた小さな水場の中に、膝下まで浸かって立っていた。
「…天国に来たのかな…それならいいんだけど…」
歩くと、底にたっぷりと溜まった水が、じゃぶじゃぶと音を立てる。靴下も靴も服も、もうグショグショだ。
目の前にあった階段の方から、神殿のような建物の中に入り、そのまま直進する。
電灯とも、火とも違う、キラキラとした宝石のような石が、淡い光を出して、暗い通路を照らす。
ボロボロの通路が終わり、外に出ても、まだ古びた石畳の地面が残り、左右の崖を、地面から突き立つ、蔦の絡まった柱が支えるような形になっていた。
「薄暗い森だなぁ…ここって本当に天国かなぁ?」
崖の上から伸びる木々は、その更に上の空を覆い隠しており、神殿の水溜りのように、太陽光が強く差し込んでいるわけではなく、木漏れ日が細い糸のように差し込んでいた。
コツコツと、ローファーが石畳の地面にぶつかる音がする。
さながらファンタジーの世界だ。
アマゾンの奥地のように、大木が生い茂る森の中を私は曲がりながら進んでいく。
わずかだが道のあった痕跡があったため、私はそこを辿っていった。
木々の根が邪魔して進みづらかったが、道の跡は途切れることなく続いている。
♢♢♢
更に先に進むと、先程まで空を埋め尽くしていた葉っぱは徐々に減り、点々と位置するだけに変わっていった。隠されていた青空もはっきり見えるようになり、明るい光が世界を照らしていた。
足元には、短く草も生え、小さな花が咲いていた。足場も良くなり、さっきよりは早いペースで先に進めそうだ。
「神秘的…私もここらへんの動物に生まれたかった…」
なんて、自分で悲しいことをつぶやきながら、神秘的な森の中を進み続ける。
すると、さっきまで静かだった森の奥から、木を叩くような音が聞こえる。
いや、叩くというより、剣を使って切り裂くような音だ。
私は気になって、さっきよりも更に早く足を回す。
いくつかの大木を通り過ぎ、目の前に広場が見えた。
そして、そこには陽の光で輝く金髪を持った、美しい美少年が、剣を携えて、傷だらけの木の前で立っていた。
「君は誰だい?」




