第104話 現状
「それで……現状って言っても、どんな感じになっているんですか?」
「正直かなりまずい。出没範囲は平都市内全域で、他の自警団と協力して調査しているが、発生源が分かっていない」
もう正午になりそうなので、私たちは適当に食べ物を頼んでから、これからのことについて話していた。
既に被害規模で言えば数百人単位で人死にが出ていて、場所もバラバラで法則性が掴めない。
「数体のゾンビを回収して、その身元を確かめたんだが、その出身地もバラバラで、どうやって駒を調達しているのかもわからんままだ」
「えぇ……今まで何やっていたの……?」
「うるさいぞ、亜紀。お前は今回関わらないだろう」
亜紀さんは隣でいろいろとブーブー言っていた。
「ゾンビって強いの?」
「いや、攻撃しても止まらない点を除けば、単体の実力は大して強くない。知性も無いから魔法は扱ってこない。だが、集団で来られると多少は厄介だ。知性が無い故に後退という選択肢が無いからな」
「範囲攻撃は効果ありそうだね。私の得意分野」
私の『爆炎』は、とにかく爆発力に特化した炎系統の固有魔法だ。
建物を巻き込まずに扱うのはほぼ不可能だが、その分、私の技の中で最大威力を誇る『オーバーバーン』の最大出力は、特殊魔法の『フレイム・ボルト』とは比にならない熱量を、超広範囲に放出する。
具体的には半径3km圏内に爆風による被害があり、1.5km圏内ともなれば、ほぼ完全に焼き尽くされるレベル、
被害さえ度外視してくれれば、広域制圧にはうってつけの魔法だ。
「え、じゃあ私要らないですよね……?」
「人数は多いに越したことはあれへん。暇なら付き合ってほしいなぁ」
「うぅ……わかりました……」
高宮先輩がさすがに可哀想になってきた。素直だから断りづらいんだろうなぁ。
「さっきも言ったけど、私は連続殺人の件で忙しいから遠慮しとく。心配しなくても、この案件は私たちで解決するわ」
亜紀さんはいつの間にか運ばれてきていたフライドポテトをもぐもぐ食べながら興味なさそうにそう言った。
「……そう言えば、お前はそんなに面倒くさそうなのに、何でいきなり俺たちに助けなんてだしたんだ?」
「それは時雨ちゃんが、暇だから仕事を斡旋してくれって言うから、今日の朝これのことを思い出したのよ」
「暇……」
「やからか……うちの夏鈴と気が合いそうやなぁ……」
◇◇◇
平都市内は他の地方の人々からみれば、発達した都会の街並みが、隙間なく広がっていると思われがちだが、実際は主要都市に大体の高層ビルや住宅地が集中し、その他はぶっちゃけそんなに発達していない田舎だ。
海岸沿いばっかりを移動したりしていたから知らなかっただけなのだ。
都市部とそれらの郊外、及び、区や市の境界線は、申し訳程度の壁で区切られ、緊急時には地下の通路を除いて、完全に通行禁止とされる。
破壊されては元も子もないが、無いよりはあったほうがマシというぐらいの感覚だと思う。
「っで、この先にあるのがその壁って訳ね」
「知らなかったんですか?」
「壁があることは知ってたよ。なんのためにあるのかさっぱりだったけど」
亜紀さんはどこかに歩いて行ってしまって、私たちはさっきの2人と一緒に駅まで歩いていた。
(壁の高さは7メートルくらいらしいけど、その程度、魔法を使えば容易に越えられるけど、何か仕掛けがあるのかな?)
本当に申し訳程度だ。この魔法社会では明らかに不十分な設備だ。
「あと数分後に電車が出るな。早く行くぞ」
「修司カッコつけてへん?痛々しいわ〜」
「うるさい冬木!」
この二人の仲は中々良好らしい。人間関係が良いのはいいことだと思う。
「こいつは気分がまだ中学生なんや。堪忍したってや」
「うん、わかった」
「納得するな。冬木、お前は後でしばき回してやるよ」
会話についていけない高宮先輩は、乾いた笑みを浮かべてそれを眺めていた。




