第103話 クレイジーガール -Ⅱ-
ゾンビはこの日本での自然発生数が非常に少ない。
ゾンビは正確に言えば魔族ではなく、天然、人工関わらず人間の死体を媒介として発生する半魔族というのが正しい。
人工的に生み出すには、当然『死霊術』を扱う必要があり、魔界でも禁術に指定されていることが資料から分かっている。
そして、自然発生数が日本で少ない理由だが、
日本では、人間が亡くなったあと、だいたい火葬をした上で墓に埋められることとなるのだ。残った骨も、骨壺に入る分しか残されないし、他はどうなるのか知ったこっちゃない。
海外のような、遺体をそのまま土に埋める土葬とは訳が違う。肉どころか、骨すら少ししか残らないのだ。
境界事変直後ならまだしも、今では発生数なんてほとんどない。
つまりどういうことかと言うと、今回の同時多発的なゾンビ出現は黒幕がいる可能性があるのだ。
その調査を現時点で任されているのが、修司や圭介の仲間である、都崎夏鈴だ。
紫の髪が、毛先に向うに連れて緑色に変わっている。そんな髪の毛を2つお団子に纏めた、なんともユニークな格好をしている。
彼女の本業はインフルエンサーであり、動画サイトやブログサイトに様々な発信をして、人気を集めまくっている高校2年生である。
ちょうど生駒香音と対極にいる陽の者である。
「お、昨日投稿したやつめっちゃ伸びてるじゃん♪ふふふ……誰かに認められるって気持ちいいわねー」
ちなみに、自身のことをハンター系の配信者として名前を売っており、高校の友人にも認知されている。
「……あ、魔物いた。あれは中級かな。さっさと済ませてしまいましょ〜」
平都市内には、巨大な都市がたくさんあるが、住宅地は大概その周囲に集まり、その他の場所は小集落と田園地帯が広がっている場合が多い。
そんな田園地帯のど真ん中、熱を帯びた肌を持ち、人のように直立歩行をする魔物、ファイアマンが現れた。
おそらくその中でも高度な個体だ。
「キサマ……ハンターダナ……」
「そうそう!せっかくだから写真を撮らせてー!すごくかっこいいからバズり散らかすんじゃない?」
彼女は何枚か写真を撮って、ウキウキしながらその写真を確認する。
「すごいすごい!貴重だよ!こんなの見つけたの私だけだよー!キャー!」
「…………ナンダ……コイツ……」
不気味な雰囲気に怖気づいたのか、ファイアマンは後ろにゆっくりと後退する。
「うーん……一枚もったいないけど仕方ないかぁ……」
夏鈴はポーチの中から一枚紙を取り出し、スマートフォンの画面にかざした。
紙には先程撮った写真が転写された。
「これはただのあなたの写真よ。だけど、私が魔法を使うと、この写真も意味を持つことになるの」
夏鈴は、電撃の特殊魔法を使用した。
「グァっ……!?」
「まだまだ。防がないと死んじゃうよ」
その場で写真をビリビリに破き、それをぐしゃぐしゃと丸めた。
「アガっ……グアアアアッ!!!??」
おびただしい量の血を流し、写真と連動するようにバラバラになっていく魔物を、夏鈴は勿体なさそうに見つめていた。
都崎夏鈴の固有魔法『被写体干渉』は、主に3つの能力で構成される。
1つ目は『撮影』スマートフォンなどの機器を媒介にも出来るが、手で四角を作って、その中に被写体を収めることでも撮影可能である。
2つ目は『現像』とった写真を別のものに転写し、現像することができる。必ずしも紙である必要はなく、布やコンクリートなどにも転写できる。
3つ目が『連動』能力で現像した写真、もしくは既にある写真に魔力を籠めることで、現実の被写体の状態と、写真の中の状態を連動させることができる。
写真に写った被写体の腕をはさみでチョキチョキしてやれば、現実でも腕が切断される、というわけだ。
実際は魔力防御があるため、そう簡単には切れないが、傷をつけることは十分可能だ。
被写体として認識できるのは魔力を帯びたもののみであり、それ以外の物を切ったり焼いたりすることは出来ない。
「さーって、残った写真はサイトにでも投稿しようかなー!脳汁止まらな〜い!」
いろいろとクレイジーな少女は、その魔物の死体を放置して、どこかに向かってしまった。




