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裏8話 プライベートタイム

私は寮の部屋のドアを開けた。


中は必要なもの以外何も置いていない、殺風景な部屋だ。


「……はぁ、いい迷惑だね、ホント」


今日、街に出たら大して強くはない魔物とエンカウントした。


そこまでなら別にいい。固有魔法一発撃てば相手は瀕死、苦戦するような相手じゃない。


実際今回もそうだった。私が危惧するのは、その2次被害だ。


「あれだけ派手に動いて、バレていないはずがない。あそこで私が倒さないと、もっと被害者が出ていたから仕方ないのだけど」


これまで何度も私を狙ってきた刺客、単純にお金目当てだったりするものが大半だが、今回のように、一度情報が漏れてしまえば、後は芋づる式に私を殺そうとたかってくる。


“陽山時雨”も、長くは持たなかったらしい。


(いつもなら身元偽装して逃走するけど……今回は私の事情的に、そう言う訳にもいかない……)


私は、本棚に置いてあった本を手に取る。


分厚いわけではないが、薄っぺらいわけでもない、論文のようなものだ。


「……もしかしたら、ここで私の願いが叶うかもしれない。この『転生仮説』が正しいなら……」


◇◇◇


45年前、魔界解放から5年が経った頃に、一つの説が、ある一人の科学者から提唱された。


それこそが、『転生仮説』だ。


読んで字の如く、生命は常に輪廻転生を続けているのではないかという仮説だ。


一見、科学としては無茶苦茶な仮説だが、裏付ける証拠がいくつも上がっている以上、否定も出来ない厄介な仮説だ。


魂の重さとも言われる、死ぬと減る21グラム、魔界から流れ着いた、転生が本当のことでないと辻褄の合わない石碑の文字や、大量の書物、前世の記憶を持つ者が、世界にチラホラ点在していること。


私は、この仮説を信じている。そっちのほうが、人生に希望が持てるのだから。


今回私が身元を隠して逃げていないのも、私の人生の希望となり得る可能性が、ここにあるかもしれないからだ。希望と言っても、『転生仮説』が成り立たなければならないが。


「リターンを得るにはリスクが必要、この世界はよく出来てるね、誰が調節しているのかな」


私は冗談めかしてそう呟いた。私は着替えもせずにベッドに飛び込んだ。


「もしかしたら、なんてね。私の勘は、簡単には外れないよ」

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