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7話 ヒミツ

「黙っててほしい? 何を?」


 と言いつつも心の中では俺が誰に話せるんだよと突っ込みを入れる。


「……あの時、私がゲームを買ってたこと」


 高花さんは俺の横に腰掛けると恥ずかしそうに顔を俯かせながらそう言う。


「へえ、やっぱり買ってたのか」


「……うん」


 黙っててほしい、つまり自分がゲームをやっているとは思われたくないってことなのか?


「まあ、別に黙っとけって言われても言われてなくてもどのみち俺には話す相手がいないから関係ないけどな」


 俺は自虐気味にそう言うと、高花さんからもらったジュースをあおる。


「ありがと」


 高花さんは俺の言葉にホッとした顔をする。


「ちなみになんてゲームを買ったんだ?」


「教えない」


「モンスター……」


 俺がそう呟くと、肩をびくりとはねさせる。あたりだな。キーホルダーをしていたこととあの日にゲームショップにいたことから何となくわかっていたが。


「モンサー2か。俺も買ったんだよ」


「えっ!? 天野君もモンサー買ったの!?……あ」


 つい口走ってしまったらしく、口を手で押さえる。


「なんでもない」


「いや、無理あるだろ」


 ここまで弱っている高花さんにならなぜか普通に話せる自分に驚く。前はこうはいかなかったんだがな。相手が俺と同じゲーム好きというだということが分かったのも関係あるのかもな。


「そうだよね。無理あったね。私も買ったんだ、モンサー」


 その言葉を聞いて俺は少し嬉しくなる。今まで周りにモンサー好きがいなかったからだ。


「天野君はどこまで進んだの?」


「俺はちょうど二つ目の島くらいだな。結構探索しつくすから攻略は遅いんだよ」


 島の隅々まで探して宝箱を全てとりつくす精神の俺は普通の人よりは攻略が遅い方だと思う。当然、高花さんよりも遅いだろうな、そう思っていると高花さんの様子が少しおかしい。


「えっ、もう一つ目の島をクリアしたの?」


「へ? 一応」


 思っていた反応とは違い、俺は困惑する。一つ目の島はどちらかというとチュートリアルみたいなもんだから誰でも1日でクリアできるものなんだが。


「凄いな。私なんてまだ一つ目の島のボスを倒せてないんだよ」


 まあ、昨日はまだ発売日だし宿題もふつうに出ていたためそこまでやっていないんだろうな。


「昨日はあんまりやってなかったのか?」


「結構やってたと思うんだけどなー。軽く3時間くらいは」


「3時間!?」


 またしても予想が裏切られる。


 3時間やってあそこのボスを倒せないとなると……


「私って昔からそうなんだ。ゲームは好きなんだけど、下手で。だから友達にもゲームが好きって言うのが恥ずかしくて」


「ゲームは楽しむためのもんだからな。別にそこを恥ずかしがる必要は無いと思うが」


「天野君からしたらそうなのかもしれないけど、私は恥ずかしいんだよ」


「何だよ、俺がプライドないみたいな言い方をしやがって」


「えっ、あるの?」


「ないけど」


「ほら」


 ほらじゃねえよ、ほらじゃ。プライドなんてそもそも友達0人の俺からしたら自分以外誰も居ない世界で護身銃を肌身離さず持ってるくらい意味が無いんだよ。


「あっ、そうだ!」


 高花さんはなにかを思いついたらしく、勢いよく立ち上がる。


「ねえ、私達二人でゲーム同好会を作らない?」


「ゲーム同好会? さっきまで友達にバレるのが恥ずかしいみたいなこと言ってなかったか?」


「だからバレないように活動すればいいんだよ」


「バレないようにって?」


「それは後で説明するよ。天野君って今日暇だって言ってたよね? 今からモンサーを取りに行ってまた集合しよ。あっ、そうだ。フレンドになろ」


 その勢いに押されるまま、俺は差し出された連絡アプリのQRコードを読み取り申請を送る。


「じゃあ、後で集合場所教えるから。そこ集合ね」


 そう言うと、高花さんは早歩きでその場を去ってしまう。


「まだ同好会について了承してないんだが」


 残された俺は急に何を言い出すんだと困惑しながらも、初めてできたゲーム友達との約束に心を躍らせ、帰宅するのであった。



 ♢



「ただいまー」


「おかえりー、お兄ちゃん」


 家に帰るとリビングのソファで花音がくつろいでいる。


「妹よ。お兄ちゃんは今から用事が出来てしまった。寂しい思いをさせてしまうのは本当にすまないと思っている」


「何歳だと思ってんのよ。別に一人で留守番くらいできるっての。行った行った」


 薄情な奴だ。せっかく熱い別れの言葉を告げたというのに。


 俺はいそいそと2階の自分の部屋へと行ってモンサーのソフトが入った携帯ゲーム機を鞄に入れると、そのまま着替えることなく玄関に向かう。


「じゃ、いってきまーす」


「そこは普通なのね。はいはい、いってらっしゃい」


 バタンと玄関の扉を閉めたところでちょうどトークが来る。差出人は高花さん。


 内容は集合場所のとある広場の名前が記されている。確か、高級マンションのすぐ近くにあるところだったな。スーパーに行くとき、いつも羨ましいなと見上げているからよく覚えている。


「じゃあ行くか」


 高花さんがなにをするつもりなのか知らないが。

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