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4話 意外な遭遇

「起立! 礼!」


 帰りの会が高花さんの透き通るような声で終わりを告げる。今日は俺が楽しみに待っていた「モンスターズサーチ2」の発売日だ。


「あっ、天野。少し待て。話がある」


 カバンを背負い、一目散に出口へと向かう俺の背中に柊先生の無情な一言が刺さる。


「忙しいです」


 俺は一瞬躊躇するが、歩みを止めないことを決断する。こんなところで時間を食って売れ切れてしまったら元も子もない。


「いや止まれよ」


 ふん、俺には歩みを止めてくれる友が居ない。残念だったな、柊先生。


「おい、天野。いい加減にしろよ」


 ガシッとカバンが掴まれる。何ッ、俺にもかけがえのない友達がいたというのか!?


 そして振り向いた先に居るのは見たことのない顔。


 誰?


「何だその顔は。まるで俺のことを知らない人でも見ているかのような顔をしやがって」


 まじで思い出せねえ。誰だっけ。


「ナイスだ天城」


 その隙に柊先生が歩いてきてそのまま俺のカバンを引っ張り始める。


 思い出した。あの特徴的なイケメンは天城奏多。


 覚えとけよー!とブーメランの様な言葉を心の中でしか叫べない自分の陰キャ体質を初めて呪いながら俺は柊先生に引きずられていった。



 ♢



 柊先生に引きずられて連れてこられた場所は職員室にある先生の机の横であった。そこで椅子に座られるように促されたことから長話であることを予想し、途中で抜け出す計画を練り始める。


「数学の桜井先生から聞いたぞ? また授業中に寝てたんだってな」


「数学だけですよ」


「だけとかそういう問題じゃない。どうして授業中に寝るんだ」


「やっていることが知っていることばかりだから、ですかね」


 俺でも制御できない程の睡魔に襲われるのだ。最初の頃は違う問題を持ってきて楽しんではいたものの、それを注意されてからというものの常に寝てきた。


 俺の返答を聞いて柊先生は深くため息を吐く。美人はため息を吐くというちょっとした仕草でも魅力的に感じるんだなと感心する。


「お前の数学の成績が良いのは知っている。まあ、2年生ではまだ試験を行っていないから1年生の頃の成績を見た感想だがな」


「それほどでもないですよ」


「そうだ。1年生の内の数学はそれほどでもない。授業を聞かなくても点数はとれるだろう。しかし、高校2年生からは数段レベルアップするのがこの高校の特徴だ。先生はお前が心配なんだよ」


 才華高校は都内でも有数の進学校だ。高校2年生から勉強は確かに高校1年生の頃とは難易度も変わっている。それは他の科目で実感している。


「……申し訳ありません。以後気を付けます」


「よろしい。なら今日のところは帰って良いぞ」


「えっ?」


 あまりにすんなりといってしまい、素っ頓狂な声が出てしまう。


「だからもう帰っていいと言ったんだ。用事があるんだろう?」


「はい! ありがとうございます!」


 俺は先程までの死んだ魚の様な目から一転して生き生きとした表情に戻る。


「……気をつけてな」


「はい!」


 俺は元気よくそう返事すると、颯爽と職員室を出ていく。


「まさかこんなに早く解放されるとは思わなかった。よし、これで完売前には間に合うぞ」


「モンスターズサーチ2」がいかに人気作品とはいえ、流石にその日中に完売は無いだろう。意気揚々と校門を抜けて走ってゲームショップへと向かう。


 因みに下校中に寄り道をするのは校則違反なため、これが見つかればまた説教が待っているのだが、関係ない。俺は今すぐにでもゲームソフトが欲しいのだ。


 いつもの通学路から逸れて、別の道に入る。


「やった、買えたぞ」


「よし、今からお前の家でどっちが早くクリアできるか勝負すっぞ!」


 前方からゲームショップの袋を持って楽しそうに言い合う男子生徒が見える。あの校章は多分他の高校の生徒だろう。


 俺には一緒にやる友達などいないので少し羨ましく感じる。


 ええい! どうだっていい!


 俺も早く買って安心したい。


 しかし決して走ることはない。ゲームショップに駆け込む姿を見られるのは何となく気恥ずかしいからだ。


 できるだけ早歩きでゲームショップに向かう。


 そして、店の前に着いたとき、ちょうどシャーッと自動扉が開く。


「ありがとうございましたー」


 うちの制服と同じだなとぼんやりと考えていると、その人物の顔に見覚えがあった俺は驚く。


「あっ、高花さ……」


 俺が言いかけたところで走り出してしまう。


「あれ? 俺嫌われてんのかな?」


 話しかけていいのは学校だけで他の時間は話しかけるなってことか? あんまりだぜ。


「まあ、いいか。気まずいのはいつものことだ」


 俺は気にすることなく店の中に入る。そして一番前に置いてあるのはお目当ての商品。実に後1個のギリギリのタイミングであった。


「ありがとうございましたー」


 俺はその残り1個をゲットしてホクホク顔で帰路に就く。


 待ちに待った夢のモンサー生活の始まりだ!

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