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18話 修羅場

「二人で来てたのか?」


 そう言って天城がこちらへと近づいてくる。俺は一刻も早くこの場を去りたかったところではあるが、一応、高花が天城と仲が良いためひとまず我慢する。


「あれ? 奏多じゃん。奇遇だね」


「少し近くの本屋で買い物をな。と、そんなことはどうでもいい。二人で来てたのか?」


「あっ、いや、たまたま……」


 出くわした、そう言おうとしていたら満面の笑みで高花が答える。


「うん。そうだよ!」


 うわ~、みるみる内に天城の顔が歪んでいくよ。そりゃそうだよな。つい最近、あんまり高花にちょっかいかけんなよとか言ってきてたもんな。


「天野、ちょっとこっち来い」


「え? 俺だけ?」


 嫌とは言わせないぞ? 暗に含んだその口調で言われた俺が断れるはずもなく。


「何で二人で話すのよ」


「琴音は待っててくれ。事情があるんだ」


 そう言って俺を連れ、高花から離れていく。


「ここで良いか」


 高花が聞こえない距離に来たことを確認すると、グイッと俺の方に顔を近づけてくる。うわ、イケメンだから別に全然嫌な気分しないや。でもその分、怖いけど。


「俺の琴音にちょっかいかけるなって言ったよな?」


「そ、そうだな」


 俺の、とまでは言われていないような気もするが、頷いておく。この場は無難に乗り切るのが鉄則だ。


「ならどうしてこんな状況になってる」


「うん? まあ高花に誘われたから?」


「嘘つけ。琴音がお前を誘うわけがないだろ。そもそも、琴音がお前と親しくしてるとこなんて見たことないしな。どうせしつこくお前に言い寄られたから仕方なくオーケーしたに違いない。どうだ? 図星だろ?」 


 なになに、このイケメンの脳内で一体何が行われているのか分からないんだけど。流石のいわれように少しムッとして言い返す。


「図星じゃないし第一お前にそこまで言われる筋合いはない」


「いやある。琴音は俺の幼馴染だ。幼馴染だからこそお前みたいに見た目だけで琴音に近づいてくる奴から琴音を守る義務がある」


 うわ~、何か引くわ~。前までキラキラしたザ・陽キャみたいなイメージだったのに一気にランクダウンした。クラスで騒いでる女子たちもこれを見たらさぞ失望するんだろうな。いやそれは無いか。人望的に俺が負けそう。


「それだけ言うんだったら少しは高花の思いを尊重したらどうだ? さっきから俺の琴音だの琴音に近付く奴から守るだの所詮、自分本位だろ? そこに高花の意志が介在しているとは思えない」


「琴音の思いは尊重してる。だけど琴音だけじゃ分からないことがあるだろ? それを俺が補完してやってるんだ。大して琴音とかかわりのなかった奴が分かったような口を利くな」


 あー言えばこー言う。最初から話し合いの「は」の字も見当たらない。一方的に要求を述べられているだけだ。


「すまないがお前みたいなやつと話していても疲れるだけだ。これで決裂ってことで、じゃ」


 そう言って切り上げようとすると、ガシッと肩を掴まれる。


「待てよ。まだ話し合いは終わってない」


「終わらないから終わらせたんだよ。お前みたく自分に陶酔してる奴には何を言っても響かない」


 それに肩掴む力強いよアンタ。こちとら運動部じゃないんだから手加減してくれ。


「なっ!? 言わせておけば!」


「ちょっと遅いよ」


 天城が今にも殴り掛からんとしてきたその時、痺れを切らした高花がこちらへとやってくる。ナイスタイミングだ、高花。正直、言い返しながら内心ビクビクしてたから助かったぜ。


「まだ終わってな……」


「ああ。終わった」


 天城の声に被せるようにして俺が言う。残念だったな。俺は先にトンズラさせてもらうぜ。


「じゃあ帰ろ」


「いや待ってくれ琴音。せっかくだし俺と二人で服選びに行かないか? お金は俺が出すよ」


「ええ~。お腹空いたし私はパスで。天野君行ってきたら?」


「行くわけない」


 何が楽しくて天城と二人でショッピングデートなんかしなくちゃいけないんだよ。


「あっ、でも代金出してもらえるんだったらありだな」


「出すわけがないだろ」


 かなり強めの口調でバッサリと切り捨てられる。


「じゃあ私達はもう用事終わったし帰るね」


「え? 二人で帰るのか?」


「うん。天野君が送ってくれるって言うからさ。それに奏多も用事あるんでしょ?」


 ここにきて更なる爆弾発言。言うまでもなく天城の顔は引きつり、ジロリと俺の方を睨みつける。それに高花ももうちょっと言い方を考えろよ。まるで俺から一緒に帰ろうと誘ったみたいじゃないか。まあそうなんだけどそういう感じじゃないじゃん?


 そうしてまたもや地獄の空気が漂うのであった。

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