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13話 寄り道

「それでは気を付けて帰るように」


 柊先生のその言葉で教室内が一気に騒がしくなる。


「俺の家来いよ。新しいゲーム見せてやるぜ?」


「また買ったのかよ。羨ましいやつめ。どれどれ見てやるとするか」


 ああ、ゲームについての会話はしてるけどこれ俺じゃないよ。だって俺今誰とも目も合わさずに帰ろうとしてるんだから。


 帰る際にスッと高花の机の後ろを通る。いつも通り天城、桜川さん、高沢のメンツと一緒に駄弁っているのを横目に見ながら俺は教室から出ていく。


 今日も同好会ってあるのか? それとも昨日のは気の迷いだったのだろうか。それはちょっと心に来ちゃうかもしんない。


 そんな事を考えながら鞄の中を探る。あっ、そうだ。高花にイヤホン取られたままだった。かといってあの中に割って入ってイヤホンを返してもらう勇気なんてものはない。


 仕方ない、今日は音楽を聞かずに帰るか。


 俺は手に取っていたスマホをポケットへとしまい、下駄箱へと歩いていく。


 校門を出て帰路をたどっていると、大きな商業施設がふと目に入る。


 確かあそこって本屋あったよな。今日集まるとしても遅くなりそうだったからちょっと寄ろうかな。


 そう思った俺はいつもならそのまま素通りしているそのショッピングモールへ足を踏み入れる。


 店内は広々としており、何種類もの店舗がズラッと並んでいる。俺は迷うことなくどんどん奥へと歩いていき、目的の本屋の前に到着する。


 特にこれといってほしい本があるわけではない。たまにふらっと寄って気に入った漫画とかがあれば買うだけだ。


 平日の日中だからかモール内の人は少ない。ちらほらと他の学校の制服を着た人たちもいるが、基本的には中高年の人が多そうだ。


 そんなことを考えながら店内へ入ろうとしたとき、店の前に置かれている看板にふと興味を惹かれる。なぜならその内容がモンサーについてだったからだ。


 なになに、モンサー2発売を記念して今週の土曜日にこのショッピングモールでイベントを行うだって!? しかもモンサーの制作陣のサイン会もやってるだと!?


 なんだこのビッグニュース……モンサー好きの俺が全然知らなかったんだけど。


 イベントに伴って即席の店舗が出来て、グッズも買えるのか。これは絶対に行かないといけないな。ちょうど同好会が無い日だし。


 ……高花も行きたいかな。教えてあげた方が良いか?


 いや待て待て、天城に注意されたばかりじゃないか。何をうぬぼれてんだ。


 心の中で自分に叱責しながら店内へと入ろうとするタイミングでピロンッとスマホの通知音が聞こえる。


 高花からか?


『今日は5時半くらいから同好会しよー』


「わかった、と」


 トークを送ったあと、スマホの右上に表示される時計を見る。今は4時45分くらいか。高花の家までそう遠くはない。よし、このまま本屋によってから行くことにしよう。



 ♢



 時計を見ると5時15分くらいだ。集合時間よりも15分も早い。


「ちょっと早いか?」


 なんか早く行きすぎたら楽しみにしてたんだとか思われて嫌だしなと思い、マンションの番号を押すのをためらっていると、後ろからあっと声が聞こえる。


「才司、もう来てたんだ。早いね」


「い、いや、別に楽しみにしてたわけじゃ……」


「ん? 何言ってるの? 早く部屋入ろ」


「あ、ああ」


 危ない危ない、ついキョドリすぎて関係のないことまで口走ってしまった。高花が突っ込んで聞いてこなくてよかった。


 人知れず胸を撫でおろしながら改めてマンションの内装を見まわす。こんなところで一人暮らしさせるなんて普通に考えたらおかしいよな。どっかの大金持ちだったとしたら家政婦とか雇いそうなものなのにな。


「ちょっと待ってて。部屋片づけるから」


 部屋に着くと高花にそう言われ、俺は無言で頷く。部屋の中からバタバタと少しだけ慌ただしい音が聞こえた後にガチャリと扉が開く。


「お待たせ~、どうぞ、入って」


 そうして俺は高花の家へと入るのであった。

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